武器を手に
※マナを通す鉱石の名前を決めていなかったのですが、精霊石という名前にしました。
なので、話は変わっておりませんが一部編集しております。
「選べ」
目の前にはたくさんの武器。ランカスター家の武器庫はかなり充実しているようだ。魔獣狩りをしているのだから、当然なのだが。
昨日から一日たち、今日は異世界に来て二日目。朝ごはんを食べた後、ユートに連れてこられた。
これから練習する武器を選ぶためだ。
「いっぱいあるんだね。うわっ! 剣って意外に重い……」
「それ、軽い方だぞ」
「うそ! これで?!」
確かに細身の剣だが、想像していたのより重い。これを使えば明日には筋肉痛が待っていそうだ。
「他にはなにかないかな? ……あ! こんなのもあったんだ! わたしこれにする!」
「弓?」
百合菜が選んだのは弓矢だった。
「実は弓道部に憧れてたんだよねー。かっこいいし! でもこの弓は少しだけ小さいのね。弓道部が使ってたやつはもっと大きかった気が……」
「きゅうどうぶ? なんだそら。まあいい。それにするのか?」
「うん!」
ユートの問いに、百合菜は笑顔で頷いた。
「じゃあその弓の説明だ。これはどの武器にもいえるんだが、基本俺たちが使う武器には、精霊石と言って、マナの力に反応しやすい鉱石がついている。そいつにも持ち手と両端の先端についてるだろ?」
ユートに言われて弓を見ると、確かに三ヶ所にキラキラとした石がついていた。
「マナを流さずそのまま使うこともできる。だが精霊石にマナを流すことで、威力を高めることができる。まあ他にも応用で様々なことができるが、最初は威力増幅くらいでいいだろう」
「へー! でもマナを流すってどういうこと?」
「まあやってみるのが早いな。見てろ」
ユートはそう言うと、剣を抜きマナを流す。すると先程までただの剣だったのが、炎を纏った剣に変わった。
「凄い……」
「流すマナの量で威力も変わる。炎を纏えばかすったとしても、相手を燃やすこともできるし、火傷を負わしたりも出来る。お前の場合、なんでも使えるみたいだし、使いようはいろいろあるな」
「なるほど。武器にマナを流すことによって、いろいろな属性の効果が得られるってわけね」
「気をつけるのは、自分の限界以上のマナを使わないことだ。マナを使うには精神エネルギーが必要になってくる。休みもせず使いすぎると死ぬぞ」
――死ぬ? マナを使うのはリスクがあるのか……。
百合菜が固まっていると、ユートが吹き出した。
「ふっ……心配しなくても普通その前にバテる。お前はマナの量も多いみたいだし、心配することないだろ」
ユートの言葉に少し安心する。そこでふと疑問が浮かんだ。
「ねえ、マナは武器に流さないと使えないの?」
「いや、単体でも使える。こいつを身につけていればな。精霊石の指輪だ」
ユートは指につけていた指輪を見せた。これはそのためのものだったのか。
「ただそれだけで使うとなると、必然的に範囲が広くなる。武器を経由するより消費が激しい。もちろん使えたほうがいいが、多用はしないな」
相手にもよるが、と言いながらユートは剣をしまった。
「んじゃ練習、始めるか」
「うん!」
頑張ろう。出発の予定は一週間後だ。早く上達しないと。
弓を握りしめ、百合菜は意気込んだ。