イリスのもてなし
美味しそうな匂いと見た目に、空腹を誘う。
イリスが百合菜のためにと、豪華な食事をつくってくれたのだ。食事の支度を手伝いながら、次々と並ぶ料理に目を輝かせずにはいられない。
「さあ、出来た! 百合菜ちゃん、ユート! いただきますしましょ!」
イリスの合図で、いただきますをする。
「イリスさん、凄いです! とっても美味しい!」
チキンのグリルを食べながら百合菜は言う。
「あら、良かったわ。やっぱり美味しいって言ってくれる人がいるといいわね。ユートはね、いつも言ってくれないのよ」
まったくもう、と軽く頬を膨らませながら言うイリスに、ユートが不満げに答える。
「わざわざ言うほどのことでもないだろ……」
「あら、女の子はいつだって褒められると嬉しいのよ。ユートも少しは乙女心をわかるといいんだけどねー」
「女の子とか乙女って歳でもないだろ?」
「まー! 失礼しちゃうわっ!」
二人の言い合いに自然と頬が緩んだ。
「なんだよ」
気づいたユートが不思議そうに百合菜に問いかける。
「んー、こんな賑やかな食事って初めてだから、楽しくって。わたしね、両親を知らないの。血の繋がらないおばあちゃんに育ててもらってたんだけど、いつも二人だから賑やかというよりは穏やかで……」
光代のことを思い出した。今はどうしているだろうか。いきなりいなくなって、心配しているだろう。早く帰らなければ。
そんな想いがめぐる。
「百合菜ちゃん……」
「あ、ごめんなさい! しんみりしちゃって!」
百合菜は慌てて我にかえった。
「いいのよそんな。早く帰らないとね。おばあさんも心配してるだろうし……。それにしてもどうして別の世界の子がこっちの世界に来ちゃったのかしら? そもそも別の世界がある事すら知らなかったし、帰る方法と言っても、残念ながらわたしには検討もつかないわね」
イリスはとても申し訳なさそうに言った。
「お前、こっちに来る前に何がしなかったのか?」
ユートに言われて思い返してみる。
「確か……変な本を見つけて、その本には家にある社のこと、それと『アーリエント』って言葉が書いてあったの。あ、そうだ! 社に触れてその言葉を呟いたらいきなり変な感じになって! あれがきっかけかも!」
「アーリエント? 聞いたことねえな」
「わたし、どこかで聞いたことあるわ。この世界を表す言葉じゃなかったかしら? 精霊について書かれた本で見た気がする」
イリスの話を聞いて、はっとする。あの本には『セイレイ』とも書いてあった。
「あの、精霊ってこの世界にはいるんですか?」
「え? 百合菜ちゃんの世界にはいないの? この世界の人達は、みんな精霊から授かった力を使って生活しているのよ。『マナ』って言うんだけど……。使える力の大きさは人それぞれだけどね」
驚いた。そんな力が使えるのか。百合菜は開いた口が塞がらなかった。
「そうだ! 食べ終わったらこの後、百合菜ちゃんのマナを調べてあげるわ!」
――え? わたしのマナ……?
百合菜の開いていた口は、さらに大きく開いた。