エピローグ
冬。静かな夜に男とその妻そして娘と息子は遠い場所に引っ越し静かに暮らしていた。
冬の雪山。
晴れているにも関わらず雪は静かに降り注いでいた。月明かりが積もった雪を照らし反射させる。小さなログハウスに住んでいた。
「これが、今までに起きた真相だ」
男は子供たちに昔の話を聞かせていた。娘と息子は目を輝かせながら話を聞いている。
「ふふっ。この人ったら、ホントにムチャばかりするのよ?ほんと大変だったわ」
薪ストーブ型の暖炉に火をつけて揺れる椅子で編み物をする男の妻。 長い黒髪を揺らしながら男を見ていた。
「じゃあ!父ちゃんはせかいをすくったんだね!」
「すごーい!」
キャッキャと子供たちは騒ぐ。そして男は娘と息子を抱き寄せると
「お前たちは強くなるんだぞ?それが父ちゃんの願いだ」
「うん!俺!父ちゃんみたいに強くなる!」
「あ、ずるーい!私も!」
「ふふっ。二人とも野蛮なことは勘弁よ?」
その時、カランという音が家の中に鳴り響く。どうやら罠が作動し危険を知らせたのだ。静まり帰る家族。うるさかった子供たちもすぐに言葉を話さなくなった。
男はすぐに戸棚の引きだしからm92fを取り出す。
「いいか、お前たちは母さんについていって地下に行くんだ」
「やだ!僕も父ちゃんを手伝う!」
子供は泣きそうになりながらも男に訴えかける。
「いいか?お前は母さんをまもるんだ。お前ならできるよな?」
「う、うん・・・」
「お前は息子をしっかり見てあげるんだぞ?」
「わかった!」
「ね、ねえ!あなた!」
男の妻は心配そうに呼び止める。男は背を向け顔を見せることはなかった。
「死なないで・・・良介」
「ああ!」
男、椎名良介は扉を開けて外に出る。母、椎名結城は子供たちを連れて地下に移動する。
良介の前には50はいるだろうか。かなりの感染者で溢れかえっていた。だが良介は焦りをまったく見せない。
M92fを感染者に向ける。
「俺は死なねぇ。絶対にな」
雪山に一発の銃声が鳴り響く




