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異変







「後ろだ!!愛梨!」

「おらぁ!」



冬木と愛梨は黒い未知の感染者と戦っていた。その数10はいるだろうか。お互いに背を預けあって冬木はハンドガン。



愛梨は得意の対術+コンバットナイフで敵を切り刻んで行く。



「冬木!こいつら何匹いやがんだ!」

「わからない!でもかなりいる!油断しないでね!」



冬木は人間の形をした黒い感染者の首に向かって数発撃ち込む。弾丸は首に直撃するが怯んでいない。



どうやら首が弱点という訳ではないようだ。



「愛梨!こいつら首が弱点じゃない!!」

「アタシもきづいた!!こいつら何回首切っても死にやがらねぇ!」



冬木は愛梨の方へと目をやると黒い感染者の首が見事にスパッと切られて無くなっていた。これからは愛梨にたてつくのはやめた方がいいな.....



「ぐっ!!」

「愛梨!!」



しばらく戦っていると愛梨は突然ガクッと膝から崩れ落ちる。



「愛梨!大丈夫!?」



うめく愛梨の足元を見てみると黒い針状の物体が愛梨のふくらはぎに刺さっていた。



「こいつら分離した部分の形状も変化できるのか!?」

「くそっ。冬木!お前だけでも逃げろ!!」



「出来るわけない!!」



冬木はハンドガンを未知の感染に向かって連発する。とこが弱点かもわからないから当然未知の感染者には効くはずもなかった。



「こ、こいつら・・・!!」



未知の感染者はもう飽きたと言わんばかりに全身が針状の山に変化し近づいてくる。



冬木はとっさにハンドガンの引き金を引くが引き金が引けなくなって初めて弾切れであることに気づく。



冬木は愛梨と違い対術は得意ではなかったから自分で使えるような武器はなかった。冬木はその場に座り込む。



「なあ、冬木」

「ん?」



愛梨は歩けなくなった足を引きずりながら冬木のふとももへと頭を乗っける。愛梨はその時、笑っていた。最後は僕も笑わない訳にはいかないね。



「りょーは大丈夫かな?」

「あいつなら大丈夫。そんな簡単に死ぬやつじゃない」



「ははっ・・・よかったぁ」




万事休す・・・。



大量の黒い針の山が二人に襲いかかる。二人は目をつむりその時を待つ。



だが、その瞬間よくある気圧で耳が塞がれたような電車で起こる感覚に見舞われる。



「何が起こった・・・?」

「わ、わかんない」



前方を見ると数百を越える針の山がある一定の所で止まっていた。それも全て。



『キミタチダイジョウブカイ?』



「うおっ」



頭の中に声が響き渡る。これは、まさか。



「メ、メイラン?」



瞬間、衝撃波が通路にどでかい山となり走り抜ける。止まっていた針の山も一瞬で吹き飛び突き当たりの壁までぶっ飛びグチャ!っという音とともに液体が飛び散った。




「た、助かった」

「愛梨!立てる?」



冬木は愛梨の左手をつかみ肩へと回す。愛梨もその反動で何とか立つことができた。




気がつくとメイランは10体以上に数が増えていた。黒い人間の形をしているから未知の観戦者にどこか似ている。








ドガン!!という轟音がドームの中をこだまする。透明な何かはドームの壁や床をあちこちえぐっていた。



「うぉ!はぇぇ!」



俺は迫り来る何かを必死に避けながら鈴香へと近づく。これは当たったら俺は死ぬ。当たらないようにしないとな。



「ヨケナイでよりょうちゃん。死ぬ訳じゃないんだから」

「いや死ぬわ!!」



さりげなくボケッぽいものをかましてくる鈴香。本人は全く動いていていないのに俺だけすごい息切れしている。なぜだ!!たまには動け!鈴香!



「くそぉ!」



俺は鈴香に向かってハンドガンを向ける。だが、



「ワタシを殺すの?」



あ、よし、いいことを思い付いた。ここでちょっと心理戦ぽいことをするか!



「やーめたやーめた!!」



俺はハンドガンを後ろへ投げ捨てる。



「っ?」



鈴香は驚きの表情を隠せないようだな。それもそのはず敵がいきなり武器を捨てたら驚くはずだ!



「ヤットカラダヲクレルキにナッタノネ」



あ、やべ。まったく驚いてねぇや。仕方ねぇ。一か八か!



「ああ。やるよ。この身体」

「!?本気?」



もちろん本気な訳がない。あくまでこれは賭けであって失敗したらまじで死ぬからな。だが鈴香には通じる気がする。うん。するだけ。



「ジャアモラウワネ」



うん。本気でヤバいかもしれない。



透き通ったモヤのようなものが俺にも向かって突進してくる。こおつは本気でもらう気だな。



「くそ!」



ものすごい速さだった。もちろん避けられるはずもなかった。このままだと!くそ!どうすれば!?



「きゃ!」



透き通ったモヤのようなものが俺に当たる瞬間、電流のようなバチ!!っという音が発し鈴香は吹き飛ばされてしまう。



キミニコノチカラヲヤロウ。



「こ、これは?」



体が軽くなっていく。それだけじゃなく色んなものの気配まで感じることが出来るようになっていく。この声はまさか・・・



「なぜ!!なぜ邪魔をするの!?メイラン!!」



鈴香は叫ぶ。この力を貸してくれたものたちに向かって。






「鈴香!!」



幼なじみの名前を叫ぶと50mの距離を1秒足らずで積める。やヴぁい!はやい!さいこー!!



「ぐぅ!」



俺はそのまま冬木や愛梨に言われたとおりグーパンを腹にかます。たがちょっと威力高すぎたかな?凄くめり込んでたけど。



鈴香はそのまま勢いよく鉄の壁まで吹き飛ばされて壁がえぐれめり込んだ。



「なんで・・・メイランまでワタシの・・邪魔を」



『カレニカケタクナッタカラサ』



気配を察知し思わず後ろを向く。そこにはさっきまで冬木や愛梨達の方にいたはずのメイランだった。



『モウスグココハロウキュウカデクズレル。ソレニクワエテミサイルもトンデクル。とてもアンゼントハエイナイナ』


「あ!ミサイルとんでくるんだった!!」



直後、ガタン!!という大きな地震に見舞われる。やばいとうとう崩れ始めたか!はやく鈴香を連れて逃げないと!!




「鈴香!早く逃げよう!」



仰向けに倒れてる鈴香の腕を掴んで肩に回そうとするが鈴香はその手を弾く。



「な、なにを!?」

「りょうちゃん。私の身体はもう限界なの。あなたがメイランからもらった力であそこまで吹き飛ばされちゃさすがにね」


「ふざけんな!はやくいくぞ!!」



鈴香の力がみるみる抜けていく。お、おい・・・。ふざけんなよ!灯と咲神までうしなって鈴香も・・・



「幼なじみだけは!!ぜってぇ死なせねぇ!!」

『カノジョハモウタスカラナイ』



突如メイランが脳を通して話しかけてくる。聞きたくないのに直接脳に響いてくる。



『コノセカイノカギはホンライワレワレがアタエルコトシカニンゲンニハテキゴウシナイ。ソレヲカラダガウィルスにオセンサレテイルトハイエニンゲンニガムリヤリウバウトナルトフクサヨウハオオキイ』

「じゃ、じゃあ鈴香は・・・」

「助からないってことよ・・・りょうちゃん」



鈴香はほんとに助からないのか?なにか手があるはずだ!ほかに手は・・・手はないのか!!



「りょうちゃん・・・あたしが死ぬ前に・・この事件の発端の人間を教えてあげる」

「鈴香が犯人じゃないのか?」

「ばかね。ワタシをこんなにした本当の人物よ」



鈴香は俺のそばまで歩けなくなった足で這ってくると耳もとささやく。



いい?りょうちゃん。そいつの名前は・・・・





お、おいおい。まさか・・・あの人が、なんで・・・



その時、通信機器からザザっとノイズが走る。



【りょー!あたしと冬木は今海岸だ!!たった今ミサイルが発射されたマレーナ島ごと吹き飛ぶぞ!】


どうやら先に脱出した愛梨と冬木だった。今は安全なようだ。良かった。



ドゴンという轟音とともに更に崩れ落ちる地震が大きくなる。やばいここも崩れ落ちる!!



「はやく逃げてりょうちゃん!!今にげないとあなたも死ぬわよ!!」

「ふざけんなよ!ぜってぇ逃げねぇ!!」

「メイラン!!りょうちゃんを!」

『ワ、ワカッタ』



くそぉ!頭痛が!!頭がいてぇ!また・・・意識が・・・・









『ホントニコレデヨカッタノカ?』

「え、えぇ・・・あなたたちもはやくいって」

『キミハ?』

「私は・・・彼と運命を共にするわ」



メイランが後ろを振り向くと前の日に忍田さんと戦ったあのフードの男が立っていた。



「こっちに来て、咲神」

「・・・ああ」



男はフードを外す。真っ黒いフードの中から現れたのは咲神迅だった。



「ごめんなさいね。あなたまでここに残してしまって」

「大丈夫だ。俺も鈴香みたいな美人さんと死ぬなら安心できるよ」




ふふっと笑う鈴香。どうやら二人はここを死に場所と選んだみたいだった。



鈴香は復讐をいつも夢見ていた。まるで子供がカッコいいヒーローを夢見るように。



私をこんな化け物にした奴ら。



忘れてたまるものか・・・。奴らに忘れさせてたまるものか。私は普通の生活を送りたかっただけなのに。



良介という一人の幼なじみ、一人の人間に夢を砕かれてしまった。人類をゾンビで染め上げた時からワタシの心はどこかへ消え去ってしまった。



鈴香は咲神を見る。



私の人生を崩壊させてそのくせ他の科学者の奴らは金を貰い暖かい日差しの中を歩っている。



それが私には我慢ならなかった。



だけど人類をゾンビで染め上げて姿の変わらないまま、10年、20、30年と流れ、鈴香は一つ心残りがあった。




本当にこれでよかったの?



「また、りょうちゃんにあえるかなぁ?」

「会えるよ。きっと。またどこかで」



鈴香と咲神は静かに目を閉じた。








マレーナ島をヘリで脱出してからもう30分が経過していた。つい先ほど島を吹き飛ばすほどの威力を持ったミサイルが通過した。良介はまだ目を覚まさない。愛梨と冬木は心配そうに良介を見る。




ううっ・・・頭が、痛い。俺は今まで何を・・・。思い出せない。



「鈴香!!!」

「うぁ!起きた!」

「りょー・・・」



痛ててて。くそ。頭痛がまだしやがる。


頭を痛そうにさする良介を二人は心配そうに見ている。



「れ、鈴香は!?鈴香はどうなった!!教えろ!二人とも!」



二人とも俺の問いにはっきりとした返事はしてくれなかった。ただ静かに首を横にふるだけだった。



「く、・・・・くそ」


「り、りょー。目が真っ赤だぞ?普通の充血じゃねぇような」



目が真っ赤だと?俺は花粉症じゃないし、目の病気でも・・・ん?



「もしかして・・・」

「どした?良介」

「なんでもない」



【本部!!こちらバジャー戦車隊!!現在味方部隊と交戦中!どういうことか説明してくれ!】



「良介!これは!?」

「見方と戦うって、裏切ったのか!?」




戦車隊から本部へと通信が入る。通信先から銃声や砲撃音が聞こえてくる。凄まじい爆音とともに通信が途絶える。



「り、りょー。これって」

「行くしかない」

「いくってどこへ!?」

「決まってる!」






「忍田正臣のところだ!!」

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