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悲痛の叫び

「なんか、殺風景だな」



マレーナ島内部への上陸に成功すると冬木が開口一番にさっきのセリフを発した。



それもそうだ。ここには長い間、人一人近づいていないんだからな。だが、何も無さすぎて逆に警戒してしまう。



内部は長い長い一本の通路となっていた。いたる所に血が飛びちり白かった壁も赤く染まり上がっている。ピチャッっという血の滴る音が恐怖を浮き立たせる。



「先を急ごう」



目的は鈴香の捕獲だ。装備を確認し、通路を進んでいく。たまに赤い肉の塊などが落っこちていたりしていた。




大分進んだが今のところ何も起こらない。ちょっとあっさり過ぎな気もする。



「おい、何だあれ…!?」



突然、愛梨が声をあげた。愛梨の指さす方を見ると地面から沸き上がってくる黒い何かが無数に混在していた。



「おい、あれ人の形になってくぞ」



その黒い塊は見る見る人型へと変貌を遂げる。……いや、あれは人ではない。ゾンビだ。



なにか・・・黒い芋虫みたいなものが集まり人の形に変貌していく。嫌なグロい音が通路の中に響く。



「こっちは急いでるっつーのに!」



俺はm92fを構えて、戦闘態勢に入ろうとすると、



「ここに僕らに任せて!」



「りょーはさっさと鈴香をとっ捕まえて、ぶん殴ってくんだろ!?てか、りょーにしかできないし、そっちは任せたぜ」





冬木と愛梨がゾンビの前に立ち、戦闘態勢に入った。



いや、とっ捕まえるとか、ぶん殴るとか、そんな物騒なことにはならないと思うが…。



目的は捕獲だし……ってあんま変わんないか。それでももうちょい言い方を考えて欲しいものだな。



「お前ら……」


「さぁ、早く行け!」



2人の行為はかなり有り難い。だが、相手は何をしてくるか分からない今まで見たこともない生物だった。




「相手は恐らくただのゾンビじゃない、いわば未知だぞ!」



「大丈夫、心配いらないよ。僕らを信じて」



冬木がこちらを振り向き微笑みを浮かべる。キモい・・・・。



いつもならムカつくその微笑みも今は信頼の証に思える。今更だけどこういう仲間に出会えてよかった。



「そうだな。この借りは絶対返すからな!」



冬木と愛梨の行為にあまえ、先を急ぐ。あいつらなら大丈夫だと思うが……。



「左の通路から回るんだ!良介!!」

「・・・・すまねぇ!!」



灯も咲神も死んで誰かを失うのがちょっと怖くなってるのかもしれないな。



鈴香もあぁなってしまったがきっと何か理由があるはずだ。鈴香だってきっと助けてやる!




殺風景な廊下を暫く進むと大きな扉が見えた。この扉・・・大きすぎないか?



途中、ゾンビが何処からともなく出現していたが全てなぎ倒してきた。黒いやつじゃなかったからなんとかハンドガンだけで進むことができた。



「ここに鈴香がいるのか」



俺は心の準備を整え、扉に手を触れるとひとりでにゆっくりと開いた。中はかなり広くできていた。ただ単にドームの中は何もない空間だった。



「こんなとこまで来たんだ、もう会うことはないとおもってたのにな」



その広い一室の中央に鈴香が立っていた。



鈴香の姿は変わっていた。至るところから血が吹き出し滴り落ちている。



鈴香は俺の方をじっと見つめていた。



「りょうちゃん・・・」

「鈴香!おとなしく捕まってくれ!!鈴香を殺したくない!」




俺は今まで10年以上連れ添ってきた幼なじみを殺したくはなかった。たとえもはや人間からかけ離れていても。




「それはいつでもワタシを殺せるってこと?」

「違う!!俺は「りょうちゃん」



言葉を遮る鈴香。



「ワタシはりょうちゃんを殺したくない」

「なら!!」



「だけど、私の体はもう限界に来てるの。もう70を超えたおばあちゃんなのよ?だから・・」



「アナタノカラダヲイタダクワ」



鈴香は直後大きく後ろへ跳躍すると両腕を俺の方へ向ける。




俺も直後にハンドガンを構え戦闘体制に入る。もはや、戦うしかないのか?




「鈴香!!俺はお前を殺さない!!ぜってぇ連れて帰ってやる!!」



俺の言葉に鈴香はフフっと笑みをこぼす。もはや体はボロボロでも表情だけは、いつも連れ添ってきた鈴香の可愛い笑顔だった。




「嬉しい・・・。ワタシはそんな真っ直ぐで心の折れないりょうちゃんが大好きだった」

「もう・・・過去形なのか?」



「・・・・っ」



鈴香は笑っていた穏やかな表情を消しつらそうな顔をする。




「ワタシだって!!好きでこんなことをしたんじゃない!!!好きで・・・こんな姿になったんじゃない!!!好きで人間を殺してたんじゃない!!」




鈴香は今まで溜まりに溜まった苦痛を吐き出す。鈴香の目からは透き通った涙が零れだす。




「これは復讐なのよ!!りょうちゃん!ワタシをこんな身体にした人間どもへのね!!」




直後、なにかとんでもない威圧感を感じた。



「やべぇ!!」



足に力を入れ思い切り地面を前に蹴って後ろに飛ぶ。激しい轟音のあとに俺が立っていた鉄の地面はえぐられ大きな穴ができていた。




「助けて・・・りょう・・ちゃん」



鈴香は泣きながら俺にせがんでくる。本人も何も好きでこんなことをしているわけじゃない。もう・・ここで負の連鎖は終わらせる!!



「いいぜ!!俺がなんでも受け止めてやる!!全力でこい!!鈴香!」



「うああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!」

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