人類奪還作戦前夜祭
作戦開始まであと1日。鈴森高校では出撃する人たちを祝う祭りが行われた。校舎の至るところではクラスごとに出し物を決めて楽しく行っていた。だが当然俺たちはそんなこと出来るわけない。
理事長室に呼ばれた俺たちは別行動ということで作戦の説明を受けていた。
理事長室の明かりを消して、俺、愛梨、冬木の目の前に大きなスクリーンが登場。ブウウゥンという音とともに表示されたのはある島だった。
「君たちは日本の西海岸に位置するマレーナ島に行くんだ」
「マレーナ島?」
「そこに、如月鈴香がいる」
「!」
マレーナ島。かつて大規模な薬剤企業が使っていた研究施設だった。だがある日ウィルスの流出により荒廃が進み、今では立ち入るどころか、近づくこともなくなった施設だった。
「そこに、鈴香はいるんですか!!?」
「ああ。衛星が如月鈴香が入っていく瞬間を捉えた。必ずそこにいる」
「ならすぐ「だめだ」
忍田さんに当然のごとく制止されてしまう。
「鈴香は今、普通の人間では手に終えないが、捕獲するなら別だ」
「捕獲・・・、どうやって?」
忍田は机の引き出しに手をかけ何かの番号を入力している。そしてピっという音の後にした引き出しが自動で開いた。
「これを」
出したのは拳銃型の注射器だった。その容器がスライド部分に向きだしになっていた。容器の中は紫色の液体が入っていた。
「これの注射器の名前はpg68/bwという名前だ。これは万が一に世界の鍵通称"リトル"が盗まれた場合にのみ使用が許される抗ウィルスだ」
「これを鈴香に撃ち込むんだ。これを撃ち込まれた宿主は活動を停止しリトルは一時停止状態になる」
通称リトルか。この学校の上層部はこんなややっこしいものを造っていた訳だ。だがこんなに大切なものなら厳重に保管されていたはずだが、鈴香はどうやって盗みだしたんだろう。
「あ、そうそう移動手段は水中から行くことになる」
「水中、ですか?」
「ああ。水中から島の中に侵入し鈴香を捕獲し回収部隊と戻る。30分後にはミサイルを飛ばし島ごと吹き飛ばす」
ミサイル、どうやらこういうときのミサイルは核ミサイルのようだった。そんなものを島に撃ち込めば島はおろか周辺海域もただではすまないぞ。
「島ごとですか!?」
「あたりまえだ。全ての元凶はマレーナ島といっても過言ではないんだ」
マレーナ島が全ての始まり・・・か。かつてまだ研究施設として機能していた頃はどんな非人道てきな研究がされてきたのか想像もつかない。だが全ての始まりの研究施設が行って来たことは想像もしたくもなかった。
「だが水中では絶対に岩肌に手をつきながら泳ぐことだ」
「え、なんで?」
「水中には人肉を極端に好む巨大なサメがいる」
「サメですか!?」
愛梨はその言葉を聞いてすごく驚いた様子だった。その直後スクリーンに巨大な真っ赤に体が染まった10mのサメが映し出される。
「こいつは目が悪くてな。岩肌にそって進めば同化して見えて見つかることはまずないと思うが」
「まあ、食われそうになったらその時はその時だ」
「「「おい!」」」
「説明は以上だ。今日はこれで解散としよう。祭りを楽しみたまえ」
「おっしゃー!いこうぜ!冬木!りょー!!」
「はいはい。元気だね」
「金ない・・・・」
頭をガクッと下げている良介を気にも止めずに愛梨ははしゃぎながら廊下に出ていってしまった。それを見ていた冬木ははあっとため息をつき良介を見る。
「いこうぜ。良介」
「・・・・おう」
ガクッとしている良介を励ましながら冬木は廊下を出ていく。それに続いて良介も出ていった。
シンと静まり帰った理事長室。忍田はなにかを考えている様子だった。
普段何を考えているのかわからない男はずっと腕を組ながら目をつむっていた。
「彼らに成功しうるかどうか」
「彼らならうまくやるさ」
「・・・っ」
突然後ろから声が聞こえた。
この低い独特の声の持ち主は・・・クルチだった。最近はほとんど出番はないがこれでも鈴森高校の校長を務めている男だった。
この男は気配を消すのがうまい。良介たちが作戦を聞いていた時からずっと壁際にいたのに気づかれたなかったのだ。
(単に存在感が無いのかもしれない)
「相変わらず気配を消すのが上手いなクルチ」
「なに、これでもまだまださ」
クルチは長方形の眼鏡を中指で直し、歩き出す。
「彼らで大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。彼らなら必ずやり遂げる」
忍田の真っ直ぐな目にクルチはフっと笑う。そして忍田に背を向け部屋を出ようとドアに向かって歩き出す。
「これが成功すれば再び人類は外に出られるようになる。彼らは強い。私は信じているよ」
「はっ。お前は人を信用することは滅多にないからな」
「・・・また」
「なに?」
「また、昔みたいに飲みにいこう。たらふくな。この戦いが終わったら」
昔はこの男とたくさん酒をのみあったものだった。
忍田はこちらに振り向くこともないクルチに発する。クルチは顔をこちらに向けることはなかった。
「ああ。必ずな」
忍田の返答も待たずにそう吐き捨てたクルチはドアノブを強く握りしめそのまま部屋を出ていった。
クルチは忍田を後にしたあと自分の車のある駐車場へと足を進めていた。クルチはさっきこぼした明るい笑みとは遠く離れた表情をしている。
「もう、お前と酒を酌み交わすこともないだろうな」
友に向かっていい放つ言葉には遠すぎる言葉だった。かつて、若い頃、クルチは忍田と出会った。一緒にこれまでの出来事、つらいことを乗り越えてきた仲間だった。
「残念だよ。忍田。お前を」
「殺さねばならんとはな」
久しぶりに書いたためおかしくなりすぎています!勘弁を




