閑話 苦労するメイド
メイドさんの話です。次の話から新しい章になります。
私の名前はマリー。エリオ家に仕えている戦闘メイドです。
こないだエリオ家に家族が増えました。エド様です。エリオ家では赤ん坊が産まれるとその子に仕える戦闘メイドを一人選ぶのですがエド様のメイドは私が選ばれました。他のメイド仲間からはとても羨ましがられました。何故なら赤ん坊の側付きメイドに選ばれると赤ん坊の世話以外の何も仕事をしなくて良くなるからです。これは私たちが普段やっている仕事と比べるととても簡単な仕事です。実際私も自分の幸運に感謝していました。エド様が一歳になるまでは。
今日エド様の一歳の誕生日でした。エド様は今日までとても大人しく素直でしたのでとてもお世話が簡単でした。
ですが一歳になった次の日私がいつも通りエド様を起こした後に朝食を食べさせに食堂に連れて行きました。昨日の朝と同じように朝食を食べ終わった後私は食事を下げるために少しの間エド様から目を離しました。そして私が戻ってくるとエド様はいなくなっていたのです。
とても焦りました。幸いその時は直ぐに見つかったのですが、昨日までならエド様は自室にもどりオモチャで遊ぶのですが今日はどうしたことか御当主様の書斎に行ってしまわれたのです。偶然その場を通りかかった御当主様に入室の許可を貰ったあと私はエド様と一緒に書斎に入りました。
最初エド様は書斎の本棚に並ぶ様々な本を見ていました。そして少しすると本棚に近より一冊の本を出して開き始めたのです。勿論開いているだけで読めてはいない と思うのですが昨日まではしなかった行動に私は心の中で首を傾げました。そしてようやく分かったのです。
(エド様は御当主様やお兄様の真似をしたいのですわ。)
昨日はエド様の初めての誕生日。それに子供は得てして大人の真似をしたがるものですもの。私はそう思うと微笑ましい思いでエド様を見てました。
暫くするとエド様は本を閉じしっかりと元の場所に戻すと書斎を出て自室に行き寝始めました。私は明日も誰かの真似をするのかだろうかとエド様の寝顔を見ながら思いました。
次の日
今日もエド様を食堂に連れて行き朝食を食べさせました。そして食事を私がおろしている短い間にまた消えてしまいました。幸い今回もすぐにエド様は見つかりました。
(まったく。これも誰かの真似なのかしら)
そう思いました。
その後エド様はまた書斎に行きました。今日はあらかじめ御当主様から許可を取ってあります。なんせ私は出来る戦闘メイドですから。
今日もエド様は本を読むどなたかの真似をなされました。そしてその本を捲り終わると自室に行き寝ました。
翌日
はあぁ。今日もエド様は食事の後に消えてしまわれました。おまけに段々隠れかたというか逃げかたが上手くなっている気がします。
エド様はその後最近の日課になっておられる読書の真似をしにいかれました。
次の日もその次の日も毎日食事の後は私から逃げて捕まると書斎に本を読みにいかれるという行動を続けていました。
それが2歳になっても3歳になっても変わりません。そのころになるとエド様はそれは上手く私から逃げるようになっていきました。まるで私の進行方向が分かるかのように捕まりません。逆に道を急に変えたり後戻りすると捕まえることができます。その時決まってエド様は私をまるでトランプでずるをされた時のような顔で見てきます。要するに不満顔です。
そして何時もどおり書斎へ。流石に私ももうエド様が本をちゃんと読んでいるということは分かります。
しかしエド様にはまだ誰も読み書きを教えていません。教えるのは5歳の誕生日からです。それでもエド様が本を読めるのは本を読む真似をしているうちに読めるようになったとしか思えません。もしそれが本当だとしたらエド様は天才です。この私のエド様は天才という考えは実はあっていました。方向は違いましたが。
そしてエド様が5歳になられました。明日から私が読み書きを教えなくてはいけないのですがそれが大変だとは私は思いませんでした。だってエド様は天才ですから。喋る内容もまるで5歳児だとは思えないくらい知的です。私の中ではこの日までエド様は学術方面で天才だと思っていました。流石に武術がそれよりも凄いなどとは予想出来ません。
しかしなんとエド様武術方面でもいえ武術方面の方が天才だったのです。
剣術のみとはいえ御当主様を倒してしまいました。まさか5歳で当主様を倒すなんて。一体あの小さな体にはどれ程の才能が入っているのでしょう。私のその思考は御当主様の声で遮られます。
「では伝統に則りお前のメイドはなくすことにしよう。」
それを聞いて思い出しました。この家で戦闘メイドつける本当の意味での理由はつける御方が弱いから。もし強いなら必要ないのです。ですが5歳で戦闘メイドがいらない強さなど聞いたことがありません。私もすっかり忘れていました。
「勿論お前がつけたままでいいというなら外さんが」
私は御当主様の発言を聞き必死で祈りました。
(エド様どうか外さなくていいと言って下さい)
しかしエド様は
「いいえ外して下さい」
無情にもそう言いました。これで私は今日からまた普通のメイドです。また炊事掃除洗濯をやらなければいけないのです。溜め息をついて思いました。
(エド様貴方は一歳の頃から最後の最後まで私を苦労させてくれましたね。)
と。
メイドは正しくはメードらしいですよ。まあどうでもいい話ですが。
感想待ってます。