第58話 VS魔界大公ロキ
遅れてすいません。今回かなり長いです。
「先ずは小手調べです」
先制攻撃をしたのはロキのほうだった。ロキは両手を胸の前に合わせる。ただし両手の間には数センチの空間がある。そしてそこに魔力が集まっていく。
「マギスフィア!」
両手の間に集まった魔力をロキは俺たちに向かって放つ。
「任せろ!」
俺はみんなの前に出て如意棒でマギスフィアを弾こうとする。しかし俺の如意棒がマギスフィアに当たる瞬間マギスフィアがいくつかに分裂する。分裂することによって如意棒を避けたマギスフィアはジュラたちに襲い掛かる。
「ニャ!」
「甘い!」
しかしジュラは鋼糸でイルはクローそしてリレスは鞭でそれぞれマギスフィアを弾く。応用性が高そうな厄介な技だな。
『ジュラは俺の援護、リレスはデカイのを放つ準備、イルはその護衛だ。その間は俺がロキを引き付ける』
『了解』
『分かったニャ』
『ん』
ロキに作戦がばれないように《悪夢霊》を使っての会話だ。練習しといてよかった。
「今度は俺から行くぜ!!」
注意を引くため大声を出して突っ込む。今ロキは何も持っていない。対する俺は如意棒を持っている。どこかに武器を隠しているようには見えないが一体どうやって対応するのか。
「近接戦はあまり得意ではないのですが・・・」
ロキはそう言うと空に手をかざす。なにをするのかと思っていると、
「我が呼び声に応えよ、魔剣レーヴァテイン!」
すると何もなかったはずの空中から一目で業物だと分かる細剣が出てくる。
「さあどこからでもどうぞ」
細剣を構えたロキには近接戦が苦手などという話が信じられないような貫禄があった。おそらく近接戦といっても剣は魔法の補助だろう。しかし剣術自体もかなりのレベルと見ておいたほうがよさそうだ。
「じゃあ遠慮なく!!」
スキルも何も使わない生身での速度でロキに迫る。まずは下からの振り上げ。そして次に横薙ぎ。しかし両方ともロキには簡単にいなされる。だけどこれは想定内。もう一度下からの振り上げを行う。ただし今度は如意棒を少し短くしてだ。さっきの攻撃と同じように防ごうとしたロキだが如意棒の長さが変わったせいで俺の攻撃はロキに届かず空振りとなる。くると思った衝撃がなかったせいかロキが驚いた顔をする。そしてロキは如意棒の攻撃に気を取られていたためこの攻撃は避けにくいはず!
「地獄零度!」
俺が使える氷魔法のなかで二番目に強い技だ。一番目を使わないのにはちゃんとわけがある。俺の手を起点にどんどんロキに向かって空気が凍っていく。この攻撃は危険だと思ったのかロキはその場から離れようとする。
「させません!」
しかしいつの間にかロキの後ろに回っていたジュラがそれを許さない。鋼糸を使ってロキが逃げるのを邪魔する。
「マギウォール!」
避けるのは無理だと判断したのか俺の地獄零度に魔力で作った壁を使って防ごうとしてくる。しかし魔力壁程度では俺の地獄零度を防ぐことは出来ない。そう思ったのだが
「凍らないだと!?」
何故かロキが作った魔力壁を凍らせることが出来ない。正確には凍りつかせきれない。考えられるとすればそれだけこの魔力壁の密度が高いということだ。
「お返しです。マギスター!」
ロキがマギスフィアと同じように両手を向かい合わせにするとまたしてもそこに魔力が集まっていく。そしてそれを今度は両手で潰す。その直後俺の後方リレスとイルの所にマギスフィアが出現したのを空間把握で感じる。
「なに!?」
俺は驚いて後ろを振り返る。しかしそこには危惧していたような状況ではなくイルがクローでマギスターを切り裂いていた。
「こんなん余裕ニャ!」
ふう驚いて損した。だけど驚いていたのは俺だけではなかった。何を隠そう攻撃を仕掛けたロキその人である。
「ふむ・・・イル様の武器、いえ装備にはどうやら魔封石が使われているようですね」
あの攻撃だけでわかるのか、凄いな。魔封石とはその名の通り魔力を封印する石だ。強力な魔法使いを捕まえておくための手錠に使われたりイルのように武器や防具に使われることもある。しかし効果が強力な分非常に希少なものとなっている。イルの装備に使われている魔封石はほんの少量だがそれでもかなりの値段がするし効果は見ての通りだ。
「少々ワタクシとイル様は相性が悪いようですね」
ロキはまだ分析をしているようだがその余裕が命取りだ。俺とロキが戦ってから約5秒。一流の魔術師なら大抵の魔法を発動できるだけの時間だ。
『離れて』
頭の中に一言声が響く。どうやら準備が出来たようだ。俺たちは急いでその場を離れる。そして俺たちが離れた瞬間、
「スターダストメテオ」
頭上からロキに向かって隕石が降り注ぐ。スターダストとは星屑という意味だがどれも屑などと呼べないような大きさをしている。
「グッ!」
俺たちが後ろに下がるのを見て何かを察したのか直撃する寸前に頭上を見て隕石に気付くロキ。しかし回避するには遅すぎた。流石にあれをまともに喰らえばひとたまりもないだろう。これで終わるかそれとも・・・
「シン・ォニ・・」
ロキが何かを呟いたその瞬間隕石群がロキのいた場所を直撃する。凄まじい音と衝撃と共に上がる土煙のせいで視界がゼロになる。しかしそんな状況でも空間把握は生きている。誰かが立ってその場にいるのがわかる。この場合誰かが誰なのかは名探偵じゃなくてもわかるだろう。
「危なかったです。あと一瞬シンフォニーを使うのが遅れていたら死んでいました」
煙りが晴れた時ロキの周りには全部で七本の剣が浮かんでいた。そしてその七本全てがなんと魔剣レーヴァテインに酷似したデザインをしている。いやあれは酷似しているというよりも、
「お察しのとおりこれらの剣は魔剣レーヴァテインそのものです。複製品やコピーなどではなくね」
やっぱりそうか。同じ魔剣がそう何本もあるとは思えないから(あってたまるか)なんらかの方法で文字通り増やしたのだろう。そしてその増やした魔剣で降り注ぐ隕石を切り裂いたのだろう。その証拠にロキの周りには明らかに鋭い刃物で切り裂いた隕石が転がっている。どうやって七本同時に使ったのかは謎だが。
「不思議そうな顔ですね。特別に教えて差し上げましょう。答えは簡単です。魔力で掴んだんです」
魔力で掴んだ?つまり魔力を手の形にしてそれに魔剣を握らせそしてそれを操ったって言うのか?だとしたら信じられないレベルの魔力コントールだ。
「さて休憩は終わりです。少し本気を出しますよ」
ロキがそう言って今まで同じように両手を向かい合わせにして・・・集まった魔力をまた潰した。マギスターかと身構えるがロキが使った技はもっと別の、ずっと性質が悪い技だ。
「マギフレア!」
ロキがそう叫んだ瞬間俺の直ぐ後ろに魔力の塊が出現する。嫌な予感がして直ぐにジャンプで避けようとするが一瞬はやく魔力の塊が八つに分かれる。あまりの速さに避けることが出来ずに体を直撃する。しかし何故かダメージはない。その代わりに体が動かせなくなる。先ほどよりも嫌な予感がする。俺はなんとかしてその場から移動しようとするが体はまるで動かない。その直後先ほど俺の体を通過した魔力がまた戻ってきた。今度もダメージはなかったが最初に魔力の塊が出現した場所に引き寄せられる。見ると八つに分かれた魔力が一つに集まっている。そして俺が魔力の塊に近づいた瞬間魔力の塊が爆発した。
「《守炎》」
ギリギリで体が動かせるようになったのでなんとか《守炎》で防ぐ。しかし《守炎》を貫通してダメージが僅かに届く。これは《守炎》がなかったらやばかったな。
「まだ終わりませんよ。マギメテオ!」
今度は上空に魔力の塊が現れる。そしてその魔力の塊からマギスフィアが正確に俺たちに向かって落ちてくる。一つ一つの威力自体はそう高くないがなんせ数と正確さが図抜けている。ク○ャみたいな戦い方しやがって!
俺たちがマギメテオの対応に追われている間ロキはドンドン頭上に魔力を溜めていく。そしてマギメテオが終わると同時に新たな攻撃を仕掛けてきた。
「これで終わりです。マギシンフォニー!!」
ロキがそう言って放ってきたのは非常に大きな魔力の塊。魔力塊と言うのがふさわしいような代物だ。大きさだけでなく密度もこれまでと比較にならないレベルだ。これはヤバイと本能的に察した俺は急いで全員を呼び寄せる。
「ジュラ技陣だ!霞壁を使え!イル少しでもいいからあの魔力塊の魔力を下げろ!リレスアブソーブの準備!出来るようになったら言え!」
「「「了解!!」」」
イルがエアクローで魔力塊の魔力を下げようとする。ちょっとずつは下がっているだろうが元が大きすぎて大して減っているように見えない。しかし少しでも威力は落としておきたい。それが俺たちの命運を分けるのだから。
ジュラが技陣を編んでいく。編んでいるのは霞壁という防御陣だ。霞壁は何本もの鋼糸を編み物のように重ねていくものだ。それをさらに何層も重ねる。一つ一つはすぐに破れるが破れた層は一番後ろにまわる。これを繰り返すことで出来る絶対防御陣。ラインなハルトがヤンなウェンリーにやった作戦と同じだ。あれは破れてしまっがこっちは大丈夫...のはず。
しかしこれだけでは不安なのでこれに俺の《守炎》を合わせる。これにより鋼糸一本一本の頑丈さが一気に増す。そして発動するのが、
「「炎糸守陣!!」」
俺たちが使える最硬の防御技だ。こで防げなかったら俺たちは終わりである。
魔力塊と炎糸守陣がぶつかり合う。俺は《守炎》を強化して、ジュラは細心の注意を払いつつ鋼糸を最速で動かしていく。
魔力塊と炎糸守陣が数秒間拮抗する。しかしそのうち炎糸守陣が押され始める。そしてとうとう炎糸守陣が突破される。そしてそのまま俺達の後ろにいたリレスに飛んでいく。
(足りてくれ!)
思わず心のなかで叫ぶ。そして...
「大丈夫」
魔力塊を見たリレスは頷きなが言った。そして両手を開いて魔力塊に抱きつく。すると不思議なことにどんどん魔力塊が小さくなっていく。空間把握で見るとよく分かるが魔力塊からリレスへと魔力が流れていってる。これがリレスの奥の手、吸収だ。効果は魔力吸収。ただし自分の最大魔力以上の魔力は吸収できないし吸収中は完全に無防備となる。まさに奥の手である。しかし決まればこれ程強い技もあまりないだろう。なんせ吸収した魔力をそのまま自分が使えるのだ。大きな魔法でも直ぐに使える。そして今回リレスが使う魔法は、
「その一撃は神の一撃。あらゆるものを滅する神の怒り。その一撃は不可避の一撃。何人にも避けることは叶わぬ不可視の一撃。その一撃は慈悲の一撃。苦しむことなくこの世を去れる慈愛の一撃」
リレスの朗々とした詠唱が響く。その詠唱が終わりに近づくにつれて魔力が高まっていく。
「その一撃の名は」
一際魔力が高まると同時に詠唱の最後の一節が詠みあげられた。
「雷威流」
リレスが詠唱を終えた瞬間空から雷が落ちてくる。当然自然現象などではなくリレスの魔法の効果だ。俺の《雷獣》のスキルを元に考え出されたリレスのオリジナル魔法。前から考えていたのだが《雷獣》をヒントに完成させたらしい。
「グハァ!!」
流石のロキも雷を避けることは出来ずに直撃する。このまま押しきれるか?
しかしここで俺はロキの回りを覆っている魔力に気づく。どうやら魔力を身に纏うことで雷威流に対する抵抗力を上げているらしい。このままだと雷威流が終わればまた攻撃してくるだろう。次さっきと同じ攻撃をされたら防ぐ自信はない。
「ジュラ陣を起動させろ!まだ来るぞ!」
「了解しました!」
俺の合図にすぐさまジュラが陣を起動させる。今度は魔方陣だ。それもジュラのオリジナル。しかし発動させようとしている陣は非常に強力な反面発動に時間がかかる。今のジュラの実力でおよそ三秒。達人同士の戦いではかなり長い時間だ。だが今回に限り時間は大丈夫だ。何故ならロキはさっきの雷威流のせいで体が痺れてまともに動かせないからだ。
「魔喰らい解除!」
そして発動するジュラの切り札。効果は簡単魔力を奪い取る。しかし奪い取る速度が尋常でなくまた一度引っ掛かるとどれだけ離れても奪われ続ける。おまけに魔力の痕跡を辿るので引っ掛かったのが幻術だとしても本体にまで魔喰らいは届くという酷い仕様だ。
「グッ!これはワタクシから魔力を奪っていく!?これはマズイですね」
ロキは痺れから回復すると直ぐに状況を理解したのか急いで陣の上から移動する。しかしその程度で魔喰らいは破れない。正直言ってこの技は一度発動すると最強だと思う。
陣から移動しても魔喰らいが解けないことに気づいたロキは陣を破壊する。当然その程度では魔喰らいは解除されない。今度は全身に魔力を身に纏う。すると身に纏った魔力ごと魔喰らいに取られる。ならばと発動者であるジュラを攻撃しようとするが、
「...見事です。どうやらワタクシの負けのようだ」
ジュラを守るように位置している俺たちを見てそれも諦める。おそらく俺たちを排除してジュラを倒すまでの時間と魔力が減っていく時間を天秤に掛けて負けを悟ったのだろう。
「安心しろ死ぬ直前に魔喰らいの出力を落としてやる」
こいつには聞きたいことが大量にある。俺たちを襲った理由などだ。まあ聞き出したら殺すつもりだがそれをわざわざ教える必要はないだろう。
「フフフその必要はございません」
「なに?」
この期におよんでまだ打つ手があるのか?いやこいつなら有り得るか。最後の一瞬まで気を付けねば。
「では皆さんさようなら。また会う日まで」
ロキはそう言うと来たときと同じように慇懃に頭を下げる。そして下げた頭を元に戻すと、
「消えた、だと?」
忽然とこの場から姿を消した。あり得ない!いやたとえ消えたとしても魔喰らいはどこまでも追い続ける筈だ。まだ終わってない。俺はそう思い急いでジュラにロキの居場所を尋ねる。しかし返事は驚くべきものだった。
「それが魔喰らいが切れました」
「なに!?」
魔喰らいが切れた?俺が知る限りあれを切る方法は殆どない。掛けられた奴が死ぬかこれは恐らくだが術者が死ぬそして最後に、
「非常に強力な魔封じを行ったのでしょう」
「あいつが魔封じを行っているようには見えなかった。ということはだロキは分身を使っていたってことだよな。それで俺達の目の前で消えたんだから俺たちは分身と戦っていたのか?」
ついさっき俺たちが死闘を演じていたのは実は分身だった。もしこれが事実なら本体に勝てるとは到底思えない。少なくとも魔力量には大きな差があるだろう。
「決めるには早い。シンフォニーという技も気になる」
リレスの言葉で思い出す。確かに奴が使っていたシンフォニーとかいう技。本物を増やしたとか言っていたな。その増えた剣も魔喰らいでなくなってしまったが。
「みんなそんなことよりこっちを手伝って欲しいのニャ!!」
一人で神前を木から剥がそうと悪戦苦闘していたイルに言われてやっと思い出す。
「悪い悪い今助けるよ」
こうして俺たちはなんとか危機を脱することに成功した。
場所は変わってどこかの城の牢獄の中。牢獄の中には裸の女性が倒れていた。出るとこは出て引っ込むところは引っ込む非常に目に毒な体型をしている。顔も非常に整っている。しかし奇妙なことにその牢獄には鍵が掛かっていなかった。少しすると静かな牢獄に女の声が響く。
「ふう。死ぬかと思いました。この牢獄に入らなかったら魔力枯渇で死んでいましたね。もっとも判断が遅かったせいで服はなくなってしまいましたが」
あの服は自らの魔力を糸にして織ったものだ。非常に丈夫で体型なども誤魔化せるのだが今回はそれが仇になったようだ。
この牢獄には魔封石がふんだんに使われている。よって内部からも外部からも魔力での干渉は不可能だ。その効果によって魔喰らいから逃れることが出来たが正直あのままいったら不味かった。
そこに一つの足音が迫る。少しすると足音は部屋の前で止まる。扉越しに声を掛けてきた。
「ロキ様、ただいまよろしいでしょうか?」
「なんの用ですか?」
「ハッ!魔王様から言伝てを預かっております」
その言葉を聞いた瞬間今までの冷静沈着な策士という雰囲気が消える。
「それなら早く部屋に入ってきて伝えてください。魔王様は一体なんと!?」
その姿を見たものはきっとこう思うだろう。上気した頬もキラキラ光る目もまるで恋する乙女ではないか、と。
「失礼します」
そう言って入ってきた魔族はロキが裸のを見て顔を真っ赤にする。
「こ、これは失礼致しました!」
回れ右して部屋から出ていこうとする魔族にロキは、
「そのままでいいですから早く魔王様の言伝てを言ってください」
その台詞に部屋から出ようとしていた魔族は動きを止める。
「ハッ!魔王様は一言よくやった、そう伝えるように言われました」
「そうですか。ご苦労下がっていいですよ」
「ハッ!失礼しました!」
魔族の男がいなくなりまた牢獄にはロキ一人になる。少しするとロキは震え始めた。
「ああ魔王様よくやった等ワタクシには過ぎたお言葉です。やはり魔王様は慈悲深いお方だ!」
その後は延々と魔王への賛辞が続いた。彼女の名前はロキ・アルデミア。現魔界大公にして前魔王。瞳に魔王への崇拝とも言える色を写している彼女は現魔王を心の底から敬愛しており歴代魔王の中で初めて実力では勝っているにも関わらず魔王の座を譲ったことで有名だ。早い話魔族最強は今現在彼女である。
ロキが元魔王なのは特に本編とは関係ないのであっさり明かしました。女なのも同じく。アブソーブが最初はカタカナだけなの仕様ですラインなハルトは誤字ではありません。感想待ってます。




