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第54話 VS雷獣

遅くなってすみません

「二人とも作戦は理解してるな」


 雷獣攻略会議からしばらく。その後も何回か攻略会議を重ねようやく実戦である。今いる場所は雷獣の目撃証言があった山の麓。まさに今から一戦交える直前でだ。当然ジュラと神前も一緒にいる。


「勿論です」


「当たり前だよ」


 はっきりと言い切る二人に安心する。しかし念のため作戦をもう一度説明を行う。なら聞くなって話だが様式美というやつだ。


「基本的に攻撃役は俺と神前だ。攻撃方法は俺は魔法、それで神前がその刀で攻撃する」


 神前が腰に差している刀を見る。光がまるで反射しない刀は見るからに業物で実際かなりの名刀なのだが。


「本当に大丈夫だったんだよな」


「エドもしつこいね。大丈夫僕の魔法で覆えば感電はしないから。ちゃんと実験もしたからね」


 この発言から分かるとおり神前は感電するかどうか実験をしている。事前に雷獣に挑んだわけではなく自力で雷を発生させたのだ。まったく無茶をする。人のことは言えないが。


「ジュラには作戦の一番大事な部分を担ってもらうからな」


 雷獣にはジュラお得意の鋼糸は効かない。寧ろ鋼糸を伝って電気が通るのでジュラが危ない。まあだからと言ってジュラに攻撃手段がないわけじゃないが。


「はい。雷獣の捕獲でしたね」


「ああ。方法は言ったとおりだ。陣を使え」


 陣というのはジュラの攻撃手段の一つだ。この陣にも二種類あるのだが今回使うのは一種類だけだ。


「雷攻撃は俺が防ぐ。水魔法を使えば雷獣の攻撃は通らないからな」


 雷獣が雷で攻撃するときには必ず魔力が動く。それを俺が空間把握で察知して相手の攻撃よりも早く防ぐという手はずだ。


「だけど俺も全部の攻撃を防ぐ自信はないからな。可能な限り回避してくれ。神前は固有魔法で、ジュラは《認識不可(レコンゼロ)》で見つからないようにしてな」


 二人が頷いたのを見て俺は立ち上がった。


「じゃあ作戦の復習も終わったし行くか」


「はい」


「うん」





(見つけたぞ。作戦通りやる)


(了解)


(合点承知乃助)


 俺は声を出したらばれるので《悪夢霊(ナイトメアゴースト)》のスキルを使って会話をしている。テレパシーみたいなものだ。


 雷獣は俺たちが見つけた時は日光浴のようなことをしていた。もしかしたら空気中に満ちている魔力を吸収しているのかもしれない。本体は魔力の塊だしな。


(行くぞ!)


 合図と共に俺と神前が雷獣に襲い掛かる。最初に俺が氷魔法で作った槍が雷獣を襲う。その攻撃を雷獣は斜めにジャンプしてかわした。しかしそれは予想の内だ。まさに雷獣が逃げた場所には神前が待ち構えており手に持っている刀で雷獣に斬りかかる。空中にいて回避のしようがない雷獣はその攻撃を受けるしかなく、見事に神前の一太刀は雷獣の前足を斬り落とした。斬り落とされた前足は空気に溶けるかのように消えた。しかしすぐに前足が生えくる。


「物理攻撃は効かないのか?」


「いや違う」


 俺の空間把握で見たところ雷獣の魔力量が僅かだが減っている。雷獣にとって魔力=生命力なので確実にダメージは与えている。それでもダメージは薄いようだが。


 以上のことを説明すると神前は舌打ちをして、


「それなら俺が陽動をやる」


「わかった」


 今はどうでもいいことなのだが神前は戦闘になると雰囲気が変わる。それだけメリハリがついているということだろう。


 仕切りなおしての攻撃。今度は最初に神前が攻撃を仕掛けた。刀を振り下ろしての攻撃に対して雷獣は爪での攻撃で応対する。さっき斬られたときとは違い魔力で爪を硬化している。おまけに爪自体が雷でできているので神前は刀以外では触れることができない。神前に非常に不利な状況だ。援護すべきかもしれない。だが俺は神前の言葉を信じることにする。『俺は陽動だ』あいつがそう言ったのなら俺は神前の言葉を信じて雷獣に攻撃を当てることに集中する。


 次の瞬間神前の刀と雷獣の爪がぶつかった。双方の力は拮抗している。しかしその場で力比べになれば空中から魔力の補給ができる雷獣が有利だ。それは神前は百も承知だろう。鍔迫り合いになってから数瞬後神前が全身を脱力させて刀を滑らせる。その結果雷獣の前のめりの態勢になる。全身を脱力させた神前はそのまま膝カックンをされたときのように体を倒す。雷獣を前にあまりにも無防備な瞬間。それは神前は当然わかっているだろう。しかしあいつは俺を信用してあの態勢をとった。俺が雷獣を狙いやすいように。そして信頼しているのだ。俺なら雷獣を怯ませて神前に態勢を整えさせるだけの時間を稼ぐことができると。それなら俺は神前の信頼に応えるしかないだろう。


 氷炎槍(ヒョウエンソウ)


 氷炎槍(ヒョウエンソウ)は俺が対雷獣に考えた魔法だ。簡単に説明すると雷獣の核に当てるため周りを炎で覆った氷の槍だ。中の氷はどんどん解けていくので近距離でしか使えない技だ。ただし代えがたい利点もある。


 氷炎槍(ヒョウエンソウ)は大きな隙を見せている雷獣に向かって飛んでいきまず顔に当たる。炎は電気を通すのでそのまま体の中に入っていく。そして核の近くで爆発音と共に加速。最終的にはかなりの速度で核に当たる。


 途中で急に加速したのは氷の槍の周りを覆っていた炎の後ろが爆発したからだ。その勢いにより加速。原理はロケットと同じ作用反作用だ。ロケットは最初は作用反作用だけで飛んでいるのを理解すればどれくらい加速したのかは分かるだろう。


 俺の渾身の一撃は雷獣の魔力量を大分減らすことに成功する。さらに爆発の副作用で雷獣は後ろに大きく吹き飛んだ。


「今の一撃で雷獣の魔力は大分減った」


「流石だな」


「まだ油断するなよ」


「わかってる」


 その後は似たような展開が続く。神前が隙を作る。それを俺が突く。最初の連携で雷獣はかなり警戒を強めたのか大きな隙は見せてくれない。攻撃もうまくなっていく。雷攻撃も多用してきたが全て防ぐか避けるかする。おまけに俺と神前の連携がどんどんうまくなっていく。《悪夢霊(ナイトメアゴースト)》の力ではないのに相手の考えがわかるようだ。


 かなり調子がいい俺たちは徐々に雷獣を追い詰めていく。そろそろ行けるかと思っていると雷獣が思わぬ行動に出る。急に吠え出して帯電していったのだ。予想外の行動に一瞬体が動かなくなる。しかし空間把握はしっかりと働いておりどんどん核に魔力が集まっていくのがわかる。この展開が非常に不味いのが直感で理解できた。しかしもう止める時間があるようには見えない。驚いた一瞬が不味かった。俺がなんとか雷獣の攻撃の前に水魔法で壁を作ろうとした。


 しかし雷獣の攻撃が完成する瞬間ありえないことが起きた。雷獣の核に向かって純粋な魔力の固まりが飛んで行ったのだ。そして雷獣がそれに一瞬怯む。一体誰がという疑問はあったが俺はその隙を逃さずに魔法発動と同時に叫んだ。


「ジュラ、陣!!」


 俺が発動したのはエアハンマーと呼ばれている魔法だ。空気の塊を相手にぶつけて距離をとったりするための魔法である。リレスも使っていたあれだ。しかし今回は自分ではなく雷獣に対して発動した。


「わかってます!解除(リリース)!!」


 エアハンマーの効果で空中に飛ばされた雷獣に向かってジュラが何かを五個投げた。そしてそれが丁度ピラミッドのように雷獣を囲んだ瞬間ジュラは解除(リリース)と叫ぶ。それによってジュラの陣が発動する。


 発動したのはピラミッド型の水の牢屋だ。ピラミッドの中央には雷獣が閉じ込められている。それぞれの面の中央には何かが浮かんでいる。そしてその何かが魔法を発動・維持していた。


 これがジュラの陣の効果。陣、とは魔方陣の略称。しかし一般に使われている紙などに書く魔法陣とは異なりジュラの陣はジュラ愛用の鋼糸で作られている。あらかじめ魔法を込めた陣を用意しておき必要な時に使う。通常の魔法と比べて優れている点は速効性だろう。一言解除(リリース)と唱えるだけで発動する。欠点は応用性のなさだろうか。魔方陣は一度作ってしまうと変更が少々面倒なのだ。また魔方陣のどこかが傷ついたりすると魔法が暴走したり発動しなくなる。そのため実戦ではあまり使われない。しかしジュラの鋼糸で作った魔方陣は違う。滅多なことでは歪んだりはしない。おまけに小さいので懐にいくつでも入れておける。ジュラは普段この陣をありとあらゆる状況を想定して作っている。もっとも今回のは俺が頼んで作ったのだが。効果は三角形の水の壁を生み出すことと三角形の頂点をほかの三角形の頂点や辺とくっつけること。この二つだ。まあ一つだけ四角形だが。


「捕まえのはいいですけどこのあとどうやって倒すんですか?」


 ジュラが出した水は理論純水なので電気は通さない。そのため完璧な牢屋となっている。


「俺が知っている強い人の言葉にこんなのがある。『己を信じるならば、迷いなくただ一歩を踏み、ただ一撃を加えるべし』というわけでそれに習うとするか」


 俺はそう言うと氷魔法で小さな氷を作る。


「それをどうするんですか?」


「これで雷獣の核を打ち抜く。魔力で覆ったりするし一番弱い部分を狙うからたぶんいけると思う」


 言いながら氷の周りを魔力で覆っていく。そして水の牢屋の中の雷獣の核に性格に狙いを着けると・・・それを放った。




「それで倒れた雷獣から作ったのが向こうで二人が大飲み?競争をしているサイダーサンダーだ」


「おいしい」


「そりゃよかった」


 どうやらサイダーサンダーはみんなに好評のようだ。わざわざ保存しておいてよかった。


「じゃあそろそろお開きにしますか」


「そうですね」


 俺が声を掛けるとみんな席を立ち始める。そして店を出て行く。俺もみんなに続いて店を出たときふと思い出す。


(あの時魔力の塊を撃ったのが結局誰だったのかわからず仕舞いだな)



この小説に出てくる科学的なことは必ずしも現実世界でも正しいわけではありません。


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