第52話 VSベアーズ(悪夢霊)
ベアーズ編完結!!
「おい二人とも話し込むのはいいが周りを見てみろ」
一番最初に気づいたのは神前だった。言われたとおり周りを見ると、
「これは・・・」
「流石に驚きました」
俺たちの周りを九体のデスベアーが囲んでいた。そしてデスベアーの中心、丁度俺たちの目の前にいる目が青色なのは、
「あれキングベアじゃねぇ?」
神前が言ったとおりあれはキングベアだ。Bには届かないが十分強いモンスターである。決してこんな森にいていい奴ではない。余談だがキングの上にはロード、カイザーといてそれぞれの目の色は銀、金となっている。
「どうしますか?」
「どうするって倒すしかないだろ。それも全滅だな」
こいつらにはそこら辺の冒険者じゃ歯が立たないだろうし逃がすのは危険だ。
俺と神前が戦闘態勢をとると、
「じゃあやっちゃいますね」
ジュラがそう言って腕を動かした。次の瞬間俺たちを囲んでいたデスベアーとキングベアーの頭が胴体から落っこちた。
「お前いつのまに」
「最初からです」
ベアーズの首を飛ばしたのはもちろんジュラの鋼糸だ。おそらくベアーズが俺たちを囲んでいた時にはすでに辺りに張り巡らしていたのだろう。
「それなら最初から言ってくれ」
「戦闘モードになると疲れるんだよね」
俺と神前に文句を言われたジュラはキングベアーの死体を指差して、
「そんなこと言ってる間になんか出てますよ」
と言った。ジュラが言ったとおりキングベアーの体からは何か黒いものが出ているところだった。それは煙のようだが向こう側が少し透けて見えている。
「なにあれ?」
俺はその黒い物体に心当たりが有ったので、
「神前あの黒いの捕まえられか?」
「え?できるけど」
「ならやってくれ」
俺が頼むと神前が例の影の魔法を使って黒い物体を囲む。そうするとそいつはそこから動けなくなった。
「お前の魔法なんでもできるな」
「そういう魔法だからね」
神前への御礼もそこそこにそいつを観察する。
「やっぱりこいつ悪夢霊だ」
「悪夢霊?」
神前が聞いてくる。
「悪夢霊っていうのは他のモンスターとかに取り憑いて行動するモンスターだ。取り憑いたモンスターを通して栄養とかを摂取するんだ。それで取り憑いたモンスターが死ぬと抜け出して又他のモンスター取り憑く。これを繰り返すんだ」
「じゃあこんなにデスベアーとかキングベアーがいるのは?」
「どういう理由があるかは知らないけどたぶん悪夢霊が連れ来たんだと思う」
傍迷惑な話だ。
「理由としては私の予想ですが」
ジュラが前置きしてから続ける、
「取り憑いたキングベアー一体で狩りをするよりもデスベアーを手下にして狩りをした方がより多く餌が取れるのが群れている理由かと。そして強い魔物が生息しておらず餌となる動物たちが沢山いるこの森に来たのでは?」
おそらくジュラのその予想は正解だろう。ゴメスさんたちがいい例だ。この森には人を襲うような存在はいないと思っていたから護衛も付けずに奥までいってしまい手下のデスベアーに見つかった。
「たぶんキングベアーが憑かれたのは休眠していたからだろう」
この世界の熊系魔物や動物は地球の熊と同じように冬になるとしばらくの間眠り続ける。寝ている間に他の魔物に見つからないように隠れるものだが運悪くこのキングベアーは悪夢霊に見つかってしまったのだろう。結果こうなったのだと思う。
「話し合うのはいいんだけど先にこいつをなんとかしない?」
神前がそう言って悪夢霊を掲げてくる。
「悪いな。今殺すから待ってくれ」
確か手に入れたいフォームの魔物に止めを刺す時に念じるんだよな。
《変身魔法》モデル《銀狼》
「アイスピアー」
氷の魔法で悪夢霊に止めを刺す。悪夢霊単体は非常に弱く魔法なら簡単に倒せる。そのかわり物理ダメージは全て無効だが。
「お!」
頭の中に《悪夢霊》の能力が入ってくる。初めての感覚だ。ステータスを開いて《悪夢霊》の説明を読む。
《悪夢霊》
他の生物に自分の思念を飛ばすことが出来る。使い方を工夫すればテレパシーや洗脳を行うこともできる。ただし正確に思念を送るためにはチューニングが必要。
チューニーングねぇ。ラジオで放送局を探すようなもんかな?まあ想像していたのと大体あってる能力でよかった。
「さてそろそろ帰るか」
二人を振り返って言う。ちなみにさっきの現象は一秒足らずで起こったことである。
「帰るのは賛成だけど・・・こいつらどうすんの?」
神前が俺たちを中心に倒れているベアーズを指して言った。このまま放置したらまたなんか厄介ごとが起こりそうだしな。ベアーズがゾンビベアーズになったりして。
「ベアー系の肉はうまいから持って帰るか」
「これを!?全部!?」
「そうだよ。神前は自慢の魔法で、ジュラは鋼糸を使ってだ」
俺はフォーム《竜》になって運ぶか。
「その後俺たちは苦労して町までベアーズを運んで食べれる肉にしてもらってそれで今その肉は神前とイルが大食い勝負に使っている」
「そう。悪夢霊なんてモンスター初めて聞いた」
「珍しいモンスターだしな」
「それでモンスター図鑑は?」
「しっかりともらってきたよ」
懐から図鑑を出す。するとリレスの目が図鑑に釘付けになった。図鑑を右に動かすと目線の右に、左に動かすと左に移動した。
「読みたいの?」
「うん」
即答だった。
「うーんどうしようかな?」
別に貸してもいいのだが少しイジワルをしたくなる。
「おねがい」
リレスが上目づかいで頼んでくる。くそ上目づかいなんてリレスが使ったら一撃必殺じゃないか!もともと断るつもりはなかったのもあって俺はあっさりとOKしてしまった。もうすこし焦らしプレイをやろうと思っていたのに。
俺がリレスに図鑑を貸す約束をするのと二人の勝負が終わるのが丁度同時だった。審判を務めていたジュラが俺とリレスのところにくる。
「どっちが勝ったんだ?」
「神前さんです」
「イルに勝ったのか」
よくあの食欲魔人に勝てたな。
「悪夢霊の話をしていたんですか?」
「ああ。そうだよ」
「ならついでに雷獣のほうも話したらどうですか?」
ジュラの提案に、
「聞きたい」
とリレスは乗り気なようだ。
「この話も長くなるぞ」
そう前置きしてから話を開始する。
その後ろで神前とイルは今度はジュースの早飲み競争をしていた。
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