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第46話 別れの日

弱冠長いです。

俺は大急ぎで走った。中天に上ろうとする太陽よりも速く走った。


何故走るのか。遅れそうだからだ約束の時間に。



銀狼(フェンリル)》まで使って急いだ甲斐あって約束の時間までに無事目的地に着くことができた。


俺の目的地、それは王都の関所。要するに王都を出るための門がある場所である。


「ギリギリですよ」


先に来ていたジュラに注意される。


「悪いな。ちょっと野暮用で。」


「あなた以外はみんな来てますよ」


見てみるとジュラの言う通りだった。因みにみんなというのはジュラ、イル、リレス、そして俺が見たことがない女性が二人。


「どうもこんにちは。遅れてすみません。俺がエドです。それでお二人が先生ですか?」


「はい、そうです。」


「そうだ。」


二人は今後強くなるために多くのことを教えてくれる予定の先生だ。・・・イルとリレスの。



王様と謁見した時ジュラが王様に要求したことは大きく分けて二つ。


一つはイルとリレスに最高の師匠をそれぞれつけて修行をすること。その間学校は休学。要するに思春期が始まるときに修行一色だ。


これを聞いた時は相当驚いた。ジュラは基本他人にはお節介を焼かないのだ。なんでも正確な観察をするためとかなんとか。そのくせ俺には色々チョッカイをかけてくるのだが。


そのジュラがわざわざそんな事を言ったのだ。他の奴らよりは仲がいいとはいえやっぱり珍しい、というより初めて見た。本人になんであんな頼みごとにしたのか聞いてもいつものニコニコ笑いで誤魔化されてしまった。こういうところでは俺は一生ジュラに勝てないだろうと思う。


そしてもう一つ。それは学園でのパーティーでジュラを俺のパーティーに加えるということだった。これには王様も驚いていた。まあ確かにお金や地位じゃなくてそんな席替えの優先権みたいなもんを要求されるとは思わないだろう。理由を聞いたら『エドさんをもっと長時間観察したいからです。』と言われた。自分の欲望に忠実な奴だ。こういうところも一生勝てないと思う。


まあようするに今日が誰との別れの日かと言うとイルとリレスである。勿論別れの会的なものは昨日やった。


「ギリギリにゃ!エド!!」


「・・・」


イルが声を上げてリレスが目線で不満を訴えてくる。このままでは俺の株がただ下がりなので秘密兵器を使う。


「実はこれを用意して遅れたんだ。」


そう言って懐から出したのは竜の鱗。形は逆三角形で大きさは普通のキーホルダーと同じくらいだ。


「なんニャ?それ」


「これはな、俺が作ったアクセサリーだ。」


竜鱗の色ははイルとリレスのそれぞれの髪の色とお揃いだ。勿論俺が作ったというのは本当だ。二人が修行で王都をしばらく離れると聞いてから王都の工房で教えてもらいながら作ったのだ。


「エドが?」


「ああ」


残念ながら俺には細工師の才能はなかったようで少し不恰好だが仕方ない。


「四人のお揃いだぞ。」


そう言ってあと二つ取り出す。一つは銀色もう一つは黒色だ。


「ほらよ」


ジュラにも渡す。


「ありがとうございます。少し不恰好ですが・・・」


「仕方ないだろうがプロじゃないんだから。」


「ん。嬉しい。」


「ありがとうなのニャ。」


ジュラは一言余計なことを言ったが他の二人は素直に喜んでくれた。


「それ本物の竜の鱗だからネックレスとして付けとけば奇跡が起きれば敵の攻撃を防いでくれる可能性がないこともないぞ。」


「どっちなんですか。」


「そのネックレスに攻撃が当たれば防いでくれる・・・はず。」


「はず!?」


一応試しはしたがそれでも不安だ。


「まあ要するにあんまり期待はするな。」


そう言って俺は自分の首にネックレスと着けようとする。しかしこれが案外難しく中々つけられない。俺が首の後ろでネックレスのフックと格闘をしているとジュラが、


「つけてあげますから貸してください。」


と言ってきた。


「悪いな」


言いながら背中を向ける。


すると正面にイルとリレスの顔が来るのだが・・・


あ、ありのまま今起こっていることを話すぜ。いつものように無表情なリレスが天啓を得たような顔をしている。な、なにを言っているのかわからねーかもしれなーが俺も自分で言っていてわからない。見間違いとか言い間違いとかそんなチャチなもんじゃ断じてねえ。


俺が驚いている内にジュラはネックレスをつけ終わる。


「ありがとうな。」


「いえいえ。」


俺とジュラが短い会話を終えた直後リレスが話しかけてきた。


「エド私もつけて」


説明がなさ過ぎるがネックレスのことだとは直ぐにわかる。


「いいぞ。背中向けろ。」


なるべく平静を装っているが少しドキドキしている。まさか自分の人生で女子にネックレスをつけてあげる日がこようとは。こんなことならもっと練習しとくんだっだ。


俺がポーかフェイスの下で激しく後悔しているとイルが、


「り、リレスのをつけたら私のもつけてほしいのニャ!!」


とやたらデカイ声で言ってきた。


「いい・・・」


「私がやる。」


俺が了承しようとしたらそれよりも先にリレスが名乗りでた。そしてイルの手から一瞬で竜鱗のネックレスを奪い取るとイルに向かって手招きする。


「わ、私はエドに・・」


「エドは今私に忙しい。よってこれが合理的。早く来る。」


「でもでも」


イルは何故か中々ネックレスをつけようとしない。それを見た俺はある可能性を考えた。


「もしかしてイルこのネックレス気に入らなかったか?」


「ニャ!?」


「悪いな。お前の趣味とあわなくて。」


俺がそう言うとイルは非常に慌てた様子で、


「そ、そんなことないニャ!!」


「なら早くつける。」


リレスのそのセリフにイルは今度は頷いてネックレスをつけてもらっている。


自分の首から下がっているネックレスを見たイルは嬉しそうなだけど少し残念そうな顔をしていた。因みに俺はもうリレスにネックレスをつけ終わっていたので、


「別に俺がつけてもよかったんだけどな。」


と言ったら何故か非常に残念そうな顔をしていた。





「あーそろそろ自己紹介をしてもいいでしょうか?」


「待ちくたびれた」


そう聞いてきたのは二人の先生だ。


「忘れてました。じゃあ名前からどうぞ。」


「私の名前はレイン。リレスの先生です。」


「我の名前はサニー。イルの教師だ。」


どうやらマンツーマンでやるようだ。一応言っておくと二人とも女性である。


「二人ともその筋では非常に優秀な方なんですよ。それに強いですし。」


ジュラの説明が入る。俺が知らないということは冒険者ではないと思う。ということは宮廷魔術師的な人か。宮廷魔術師は簡単に言うと国お抱えの魔法使いのことで当然強い。


「イルとリレスをお願いします。」


「任せてください。」


「大船に乗ったつもりでいるがよい。」


「それでどれくらいの期間修行をするんですか?」


「そうですね。」


「最低でも一年だな。」


一年!!まあ今二人はそこまで強いとは言えないから仕方がないかもしれないが。それでも凄い長く感じるな。


「ではそろそろ時間ですので」


話し込んでいて忘れていたが俺がここに到着してから結構な時間が経っている。


「二人ともなるべく早く帰ってこいよ。」


「分かってるニャ。」


「ん。」


「お二人ともこれで大丈夫だと自信を持って言える様になるまで帰って来てはいけませんよ。」


「頑張るニャ!」


「勿論」


何が大丈夫だと言えるまでなのだろうか?俺がそのことを聞こうとすると、


「では行きますか。」


「うむ。そうだな」


師匠二人がイルとリレスを連れて行ってしまった。聞きそこなったと思ったがもう一つ聞きたいことがあったのだ。こちらはジュラにだが。


「なあお前は王様と会うときにはもうイルとリレスには修行の件言ってあったのか?」


「んー。実はですね修行の件を言ってきたのはお二人からでして。」


「そうなのか?」


「はい。きっとこないだの事件であなたと一緒に戦えなかったことが悔しかったんでしょう。私に強くなる方法を聞いてきましたので今回のことを提案したんです。」


「そうだったのか。それでなんでお前はわざわざ提案したんだ?」


「秘密です。」


実はジュラが言った説明には少々足りない部分がある。それはジュラがイルとリレスに言った言葉だ。ジュラはイルとリレスにこうも言っていたのだ。


「もしお二人がこれからもエドさんの傍にいたいなら強くなって下さい。そう簡単に死なないくらい強くなってください。あなた方が傷ついたりするとエドさんは自分を責めますから。あの人のせいじゃないのに馬鹿みたい後悔しますから。だから強くなってください。ちょっとやそっとじゃ傷つかなくてそして死ななくなってください。」









一気に時は進む予定。

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