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第35話 エドの怒り

久しぶりの投稿です。

明日は武大ということで俺たちはその日の昼一緒に食事をとることにした。まあ大事な勝負の前にカツ丼を食うようなものである。ちなみに俺たちというのは俺とリレスとイルのことである。


大事な大会の前ということで普段入ってるところよりも高めな店に入った俺たち。料理を注文したあと俺はトイレに行った。非常にどうでもいいことだがこの世界のトイレは水洗である。日本人としてはかなりありがたい。


そんなことはどうでもいい。問題はトイレから戻ってきたときである。


「おいおい!!なんで畜生と人間もどきなんかがこんなところにいるんだよ」



「ほんとですね!」


わざわざ店内に響くような大声で喋っているのはダスタだった。どうやらダスタは昼をこの店で取ろうと思ったらしく取り巻きも一緒である。運が悪い。


そしてそんなダスタと不愉快な取り巻きたちがたったいま悪口を言った相手はなんとリレスとイルである。


「おい畜生と人間もどき!!この店は今から俺が使うんだからお前らは出て行けよな!!」


「そうだよ!!お前らはそこらへんの残飯でも漁ってろ!!」


店の人や他の客はダスタの侯爵家という地位のせいか注意を出来ないでいる。まあ店の人たちが注意したとしてもやめないだろうが。


「それともあれか?お前らは奴隷でこの店ではそういうサービスもやってんのか?」


ダスタが下卑た笑顔を浮かべながらそんなことを言った。それに釣られて取り巻きたちも笑いだす。イルとリレスは顔を俯かせていてその表情はわからない。


「ダスタさんじゃないですか。一体どうしたんですか?」



俺はなるべくにこやかな笑顔を浮かべながら話かける。


「うん?エドじゃないか。いやなに人間の店なのに何故か畜生と人間もどきがいたものでな。性奴隷かと話していたところだ」


ダスタはリレスとイルが俺のパーティーメンバーだと知らないのか普通に教えてくる。


「それはそれは。珍しいサービスですね。ですがダスタさん。この店には人間の皮を被った豚までいますよ」


「なに?豚の獣人か?そんなものいたのか。一体どこにだ?」


ダスタが豚の獣人を探すかのようにあたりを見回す。


「もちろん貴方のことですよダスタさん。」


「な!?貴様俺が侯爵家だと知って言っているのか!?」


「うるさい。豚が人間の言葉を喋るなよ。俺の前に言葉に対して失礼だ。まあお前を豚に例えたら豚にたいしても失礼かな」


「貴様!!今ここで切ってやってもいいんだぞ!!」


こいつは俺の実力を知らないのだろうか?まあ貴族のパーティーには大抵兄さんが行ったしダスタ自体も行ってないのだろう。


「ダスタさん。今ここで騒ぎを起こすのはまずいですよ」


だんだん人目が集まってきたのを気にしてか取り巻きの一人が言った。


「くそっ!!」


ダスタは悪態を一つつくと店を出て行った。俺は注目を集めつつもなるべく悠然と席にもどる。


「大丈夫だったか?」


「大丈夫ニャ」


「平気」


「リレスはともかく・・・なんでイルは言い返さなかったんだ?」


イルの性格なら言い返していてもなんら不思議はないような気がするのだが。


「人間は・・・怖いのニャ」


何?人間は怖い?人間が、ではなく?


「どういうことだ?」


「昔人間たちが私たち獣人とリレスたち亜人を迫害したのは知ってるよニャ?」


「ああ。もしかしなくてもそれが理由か?」


確かに迫害されれば人間のことを怖れるようにはなるだろう。たとえずっと前のことだとしても。


「確かに怖れるようになったきっかけはそうだけどたぶん理由はエドが想像しているのとは違うのニャ」


「じゃあなんで人間が怖いんだ?」


「・・・迫害される前は獣人も亜人も人間たちと同じように暮らしていたのニャ。パン屋に行けば挨拶をして笑顔でパンを売ってもらえる。子供たちは種族の隔てなく遊んでいたのニャ」


獣人のイルはやっぱりそのへん詳しいのだろう。


「だけど・・・昔のこの国の王様が戦争の責任を亜人たちに押し付けた後・・・みんなの態度が一瞬で変わったのニャ。パン屋に行けばお前らに売るパンはないと言われたのニャ。子供たちはもっと残酷ニャ。昨日まで一緒に遊んでいた子が石を笑いながら投げつけてくるのニャ。」


・・・一日で酷い変わりようだな。


「そして私たち獣人と亜人は怖れたのニャ。」


「何をだ?」


「・・・人間たちの残酷さをだニャ。昨日まで仲のいい隣人だった人間たちがたったの一晩でまるで人が変わったかのようになる。亜人と獣人たちからしたらこれは理解ができないことだったニャ」


亜人と獣人たちは同族意識が高いと聞いていたが。迫害のせいだと思っていたがどうやら前からそうだったらしい。


「まあそんなわけでわたしたちは今でも覚えているのニャ。人間たちの亜人と獣人にはない残酷さを。」


・・・思ったより重い話になってしまった。


「さ、そんなことよりさっさとご飯を食べてしまうのニャ」」


テーブルを見ると確かにいつの間に食事が運ばれていた。



「そうだな。それと二人とも」


「ニャ?」


「ん?」


「信じてくれないかもしれないが・・・俺は絶対に二人を裏切らないからな」


そう言って急いで食事を始める。何故って恥ずかしくて二人の顔を見れないからだよ。


「わかってるのニャ」


「言うまでもない」


二人がなにか言っているがよく聞こえなかった。





時間は進み夕食時。俺は一人で寮の食堂で夕食を食べていた。実は夕食を一緒にすることはあまりない。基本イルとリレスは自炊だからだ。


俺が食事を取っていると俺の後ろの席からダスタとその取り巻きの声がした。運悪く近くに座ってしまったらしい。


「今日は災難でしたね」


「たっく本当だぜ。エドのせいで」


「学大のときも邪魔されましたもんね」


「ああ。あそこであいつがでしゃばらなきゃあのエルフの女を切れたんが」


そのセリフでエルフの女でなく俺が切れた。


「おい。ダスタ」


「あ?」


相手は最初から俺に気づいていたのか特に驚くことなく答えた。


「お前さっきの話は本当か?リレスを切ろうとしったってのは」


「さあ?何の話だ。だけど・・・エルフなんて切られても文句は言えないんじゃないか?」


こいつは!!


「お前・・・今の言葉を明日後悔させてやる。」


「なに?」


「明日は俺とお前の試合があるだろうが。そこでお前には今のセリフを償ってもらう。」


「いいぜ。まあお前が俺に勝てるのならな」


「精々強がってろ」



俺はそう言って食堂を出た。

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