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第23話 心の芯

休日だけど更新しました。

続く第四試合、第五試合と特に見所がない試合が続く。まあ学生レベルで俺が見て面白い試合は中々ないだろう。そのまま試合が進んでいく。第十試合を最後に午前の部は終了。二時間後から試合は再開である。


リレスと一緒に昼食を食べる約束をしているので迎えに行く。何故かジュラも一緒だ。


リレスは選手控え室のドアの前で待っていた。俺を見つけると嬉しそうに近づいてきて、


「勝てたよ」


と言ってきた。言葉だけ聞くとただの事実報告に聞こえるがもうリレスとの付き合いも長いのでその平坦な言葉の中に嬉しげな感情があるのがわかる。


「ああ見てたよ。よかったな。」


そのまま頭を撫でたくなるがそれをするとリレスの属性に妹が追加されそうだったのでやめておく。代わりにではないがあらかじめ予約、というより席をとっといてもらった食堂にいく。


「んじゃまあリレスの一回戦突破を祝って乾杯」


「乾杯」 


「乾杯ですね」


二人が続く。


「特に危なげがなくてよかったよ。」


「ううん。すごい緊張した。」


「そうか?そうは全然見えなかったけど。」


「なんにせよ勝ててよかったですね。」


「エドのおかげ」


「だからあれはお前に才能があったからだよ。」


「でもその才能を見つけてくれたのはエド。」


リレスもなんか頑固なところがある。


「そういえばイルさんはどこにいるんですか?」


ここでジュラが助け舟をだしてくれた。流石ジュラだ。


「あいつならまだ修行中」


「修行ですか?」


「まあ修行というより武器の材料の調達かな。あいつの戦闘スタイルにあう武器がなかったから作ることになってな。自分の試合の番がくるまで粘るらしい。」


「イルさんの試合は?」


「確か三日目だったはずだ。」


なんせアライアンスの全学年がやる学大だ。その試合数も一学年だけで相当ある。まず午前に十試合午後に十試合であわせて一日二十試合。それを三日間やって六十試合。これでやっと全部の一試合目が終わるのだ。一学年の試合が全部終わるのに八日間。試合は一年生からやっていくので六年生までやると四十八日間。しかしこれも仕方がないだろう。生徒数が生徒数だからな。それに学大のあとは武道大会がある。武道大会に出る人の中には驚くほど遠くからくる人もいる。そのための学大の長さだ。


「リレスの次の試合は五日後だよな?」


「うん」


「だけどまあ試合は見ておいたほうがいいだろう。次の対戦相手の戦法や注意すべき相手がわかる。」


「わかった。エドは?」


「俺もずっと一緒に見ててやるよ。・・・と言いたいところなんだがイルの様子も見ておかなきゃいけないからな。途中で何回か抜けると思う。悪いな」


「ううん。エドには沢山お世話になってるから全然平気。」


「・・・全然?」


「うん。」


「まったく?」


「うん。」


「俺がイルの様子を見に行くって聞いて変な気分になったりは?」


「しない。」


「・・・そうですか。」


仕方ない認めよう。どうやらリレスはまだ俺に男女間での好意を抱いていないらしい。かなりがっかりである。


昼食を食べ終わったら観客席に行って次の試合を見る。ただしリレスとジュラだけだ。俺はさっき言ったとおりイルの様子を見にいかなければならない。別れ際ジュラにリレスに変なことを言わないよう言ったあとイルが狩りをおこなっている場所に急ぐ。


しかし俺はこのときよく前世を思い出していればよかったのだ。同級生の女子に自分のことが好きかと聞いたとして、聞かれた女子は本当は好きだとしても好きだと言わないだろう。告白されたならともかく。つまりはそういうことである。


SIDE リレス


エドと別れたあとジュラと一緒に観客席に戻る。


私はエドと幼馴染らしいこの女の人が苦手だ。理由は表情が読めないからだ。いつもニコニコしていて何を考えているのかわからない。もちろん私が人のこと言えないのはわかっている。


私の表情が普段動かないのは特に理由があるわけではない。うまれつきである。だけどさっきはこのうまれつきの体質に感謝した。


最初に考えていたことからどんどん横に逸れていくことに気付きながらも考えることはやめない。


たぶん気付かれてないて思う。だけど顔にでないようにするのは大変だった。


いつのまにか観客席についていたので急いで座る。すると隣に座ったジュラが話掛けてきて驚いた。この人はエドといるときはエド以外に興味を向けてないように感じるし、エドがいないときには会ったことはないので普段どんな人か知らない。


「一つ聞いてもいいですか?」


「なに?」


次いでジュラの口から出た疑問に私は少なからぬ驚いた。


「さっきのエドさんの質問に嘘をつきましたね?」


エドにしか興味を向けてないように感じたが他の人にもちゃんと注意を向けていたらしい。


「一つ目と二つ目の質問に対しては嘘というわけではないんでしょう。ですけど三つ目の質問に対して貴方はあきらかに嘘をつきました。たぶんエドさんは気付いてないでしょうけど。」


最後の部分を聞いてほっとする。それと同時に自分の心中を大雑把にとはいえ完全に当てたジュラに驚愕した。


「・・・なんでそう思うの?」


もしかしたら鎌をかけただけかもしれない。それなのにわざわざ言ったりしたらマヌケ過ぎるので聞いてみる。


「何故と言われると困るのですが。これでも私は人間観察には自信がありまして。その自信が言っているというのが一番しっくりきますかね。」


それだけでは本当だとはとても思えないがジュラの声には何故か説得力があった。


「だとしてもあなたには関係ない。」


私がそういうとジュラはため息をついた。


「では私の質問に答えてください。答えによってはあの人・・・エドさんの芯とも言うべきことを教えて差し上げます。」


この発言には反応せざるをえなかった。


「エドの芯?」


「ええ。まあ簡単に言えば彼の行動原理ですかね。」


私の理性が本人がいないところでこんなことを聞くのはよくないと言っている。しかし感情は聞きたいと言っている。結果私は・・・取引に応じた。


「わかった。」


「それはよかったです。私としても見極めておきたかったので。」


なにをとは聞けなかった。




「あなたは・・・・エドさんのことが好きですか?」


聞かれることは大体予想していた。ここまで直球だとは思わなかったけど。だけどその質問にたいする私の答えはもう決まっている。


「好き。」


私が言った短いその言葉には人生で一番心がこもっていた。


ジュラはしばらく私のことをじっと見ていた。きっとさっき言っていたとおり見極めているのだろう。私の言葉と気持ちを。


しばらくしてジュラが口を開いた。


「わかりました。貴方は本気のようですね。ならいいです。教えてあげます。彼の行動原理、彼の心の芯を。」


彼女から聞いたエドの話。私はそれを聞いてとある決心をした。そしてそれが私の芯になる。








リレスの気持ちを確定させるか迷いましたが今後の展開を考えて確定することにしました。


感想待ってます。

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