表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/100

(2)

運命の王子様が、十年の時を経て、いま

あたしの目の前に立っている・・・。


「・・・はあ???」


花梨ちゃんが顔を歪めながらあたしに聞き返した。

あんた何バカなこと言ってんの?って表情。

無理もない。

そんな、あたしだってそんな・・・まさか王子様が、ここに・・・。


なんで? なんで??

なんでここにいるの??

だってだって、十年間も会えなかったのに!


「な、七海ちゃん?」

必死な表情で、口をパクパクさせてるあたしの様子を見て、さすがに花梨ちゃんが心配しだした。


「大丈夫?」

「お、王子様、おうじさま」

「勘違いじゃない? 人違いでしょ?」

「ちがうぅっ。間違いないぃっ」

「ね、七海ちゃん。とりあえずちゃんと呼吸しようね」


あたしはブンブン首を横に振った。

いや、呼吸したくありませんって意味じゃなくって!


間違いないよ!

勘違いじゃ・・・

勘違いじゃないんだよっ!!!


王子様だよっ! 彼なんだよっ! 彼なんだよ―――っ!!!


絶対、絶対! 王子様だっ!!

忘れない。あの顔。十年、夢に見続けたあの顔。

あの顔が、十年分成長して・・・


今、ここにいるっ!!


全財産、ううん、そんなチンケなものじゃない。あたしの命賭けたって、いい。

彼は王子様だ―――!!


「七海、ちゃん・・・?」


ぴくん・・・。

あたしの体が反応した。

だって・・・

今、あたしの名前を呼んだのは・・・


「七海ちゃん、だよね?」

「・・・・・」


あたしは、ゆっくりゆっくり後ろを振り返った。まるで怖いものでも見るみたいに。


「やっぱり七海ちゃんだ」


ニコリと微笑む優しい笑顔。あの時の笑顔とピッタリ重なった。


覚えてて、くれた、の?

あたしの、ことを・・・。

やっぱり覚えててくれたんだ!


スラリと伸びた背。あの時より肩幅が広くなってる。

少しだけ茶色な髪が素直そうに自然に流れている。

どちらかと言えば色白な肌。そして涼しげな、優しい声・・・。

あたしの名前を呼んでいる声・・・。


やっぱり間違いないんだね? そうなんだね?

一生会えないって思ってたのに・・・。


王子様、なんだよね。


ばくんばくんする心臓。素敵な笑顔を見つめたまま、まばたきもできない瞳。

相変わらず声がでない口。

固まったまま動かないあたしを見て、王子様が心配そうに話しかけてきた。


「あの、七海ちゃん?」

「・・・」

「あの、ひょっとして・・・」

「・・・」

「僕の事、知らないかな・・・?」

「・・・・・!」


ぐおおぉぉっ!

突然、あたしの全身に力が舞い戻った!!

し・・・知っ・・・


「知ってますうぅぅぅ――っ!!!」


当然でしょう!?

たとえ・・・

たとえ親の顔を忘れる日が来ようとも、あなたの姿だけは記憶から消え去る事はありません!

その点だけは譲れません!!


「そ、そう? 良かった」

噛み付くような勢いで復活したあたしに、王子様は少々ビビる。


「七海ちゃん、なんだか不思議そうに僕の事を見つめてたから」

「それは確かに、不思議は不思議なんですけど!」

「不審者だと思われたかと・・・」

「そんな事、夢にも思ってません!」


王子様が不審者なわけないじゃん!! だって王子様なんだから!!


「そう?安心したよ」

「はいっ! どうぞ思いっきり御安心を!」

「よかったら座らない? お友達も。ここね、カフェなんだよ」

「知ってます! 看板、見ましたっ」

「へえ、良く見つけたねえ」

「はいーっ! 我ながら本当にそう思います!」


ほんっっっとに、そう思う。よくぞ見つけたぁっ! 偉いぞあたし!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ