運命と決断の時(1)
・・・・・。
来た・・・・・。
ついに来てしまった。
あたし達の目の前には、割と小さめな、でも日本家屋風で趣きのある建物。
そして看板には『癒しの山神』の文字。
ここが目的地だ。ついに来てしまった。
もちろん、来るために来たんだけれど。
いざ目の前にすると緊張感で体が固くなる。
ノリと勢いでここまで来たけれど、さすがに心臓がバクバクだ。
うぅ、不安だよぉ。怖いよぉ。全然癒されないよぉ・・・。
「ほら、いつまで突っ立っててもしかたない。行くぞ」
大地がポンポンとあたしの肩を叩いた。
心細く見上げると、大地の笑顔があった。
あたしの肩をつかんで軽く揺すり、勇気付けるように話しかけてくる。
「オレさ、昨日の七海の演説、感動したぜ。お前すげえよ」
「・・・演説?」
「戦うべきだ、貫き通せってやつだよ」
「・・・・・」
「こう見えてオレも辛くてさ、結構へこたれてたんだ。でもあれで勇気が持てた」
「大地・・・」
「オレもオレなりに戦う。お前が一緒に戦ってくれると嬉しい」
「・・・うん」
「こんな状況になったけど、オレ達今でも同士だよな?」
「うんっ」
「さあ、戦いに行こうぜ!」
「うん!」
そうだよ! 大地の言う通り! あたし達は今でも同士なんだよね!?
旗振りしたあたしが、こんな弱気でどうする!? しっかりしなきゃ!
さあ行くぞ! いざ合戦の時!!
と、一歩踏み出した途端にあたしのスマホが振動した。
・・・あ、花梨ちゃんだ。
いけね、着いたらすぐ連絡するって約束してたの忘れてたっ。
「もしもし花梨ちゃん、連絡遅れてごめ・・・」
『七海ちゃん!! バレたっ!!』
花梨ちゃんの叫び声がキ―――ンと耳に響く。
「・・・・・へ?」
『おばさん達にバレちゃったのよ! 全部!』
「な・・・っ!!?」
なんでえぇぇっ!!?
なんでバレたの!? なにが原因!?
『あんた達、学校に何て言って休んだの!?』
「何って、急性カタル性喉頭炎だから休みますって」
「オレは急性カタル性胃腸炎だから休みますって」
『あんた達ってバカなのっ!?』
ますます花梨ちゃんの声がキ―――ンと高くなる。
『なんでもっと無難な嘘にしなかったの!? それでモロに怪しまれて親に確認の連絡が行ったのよ!』
げっ!?
そんな先生、わざわざ電話なんかしなくてもいいって! よっぽどヒマなの!?
『駆け落ちでナーバスになってた親達が、学校に飛び込んで来たのよ』
「うわ・・・」
『おばさん、七海の様子が明らかに不自然だった。きっと何かあったんだ!って取り乱しちゃって』
あ・・・明らかに不自然? そんなぁ。
「あんなに懸命に頑張って自然にしてたのに!」
『懸命に頑張ってる時点で、すでに自然じゃないでしょうが』
「う゛・・・そ、それで?」
『先生達がさ、実はお子さん達に不純異性交遊の疑いがあるって・・・』
「言ったのっ!?」
だから先生って!
それは本当に誤解なんだって、あんなに大地が力説したじゃんか!
本当に不純異性交遊なんかじゃないんだってば! まだそこは、あたし個人の願望止まりなのよ!
『その話を聞いて衝撃を受けた親達の頭の中で・・・』
「な、中で・・・?」
『不純異性交遊+消息不明=また駆け落ちって図式が成立しちゃったの』
「駆・・・」
お、お母さ・・・。
そりゃ、こんな時だし気持ちも分からないでもないけど・・・。
それじゃあ、なに?
千代ちゃん七ヶ条の根強く残る学校内で・・・
あたしと大地って、駆け落ちカップルって烙印押されちゃったの!?
あたしはもう、その見事な展開に唖然とするばかり。
停学? 退学?って単語が頭の中をぐるぐるする。
手に持ってるスマホを落っことさないようにするので精一杯。
大地も片手で顔を覆い、首を振っている。
『もう完全にヒスを起こした親達が、今度こそ警察に届け出るって騒ぎ出したの』
「警察っ!?」
ど、どうしようっ!? 国家権力があたし達を探してるの!?
パトカーで連行されちゃう!? いっそ今すぐ自首して事情を説明・・・
『だから、そうなる前にあたしが全部事情を説明したのよ』
「へ?」
『最初に言ったでしょ? 全部バレたって』
「それってバレたんじゃなくて、花梨ちゃんがバラしたんじゃん!」
『そもそもバレるきっかけ作ったのは、誰っ!?』
「う・・・」
『警察沙汰になるよりマシでしょ!?』
「は、はい。おっしゃるとおりです・・・」




