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素直に感謝の言葉が出てくる。

大地の優しさ、心の大きさ。それを感じるたびにどんどん惹かれていく。


『なんだよ、やたら素直だな』

「あたしは生まれつき素直よっ」

『駆け落ちのショックで毒気抜けたか?』

「毒なんか持ってないってば。フグじゃあるまいし」

『そういやお前、フグに似てるなあ!』

「なんだと――っ?」


笑い合う。

そしてあたしは、どんどん大地を好きになる。

好き。好き。好き。好きだよ大地。


「ねぇ、大地・・・」

『なんだ?』


好きだよ・・・。


「・・・電話ありがとう。もう休むね」

『おう。また明日学校でな』

「うん。また明日ね。おやすみなさい」


あたしはスマホをギュッと胸に抱きしめる。大地の名残を、温もりを感じ取るように。

そしてそのままベットに倒れこんだ。熱い溜め息が、繰り返し吐き出される。


いっそ好きって言ってしまいたい。

でも、言えない。

お姉ちゃんに恋してる大地には。


また明日。大地にまた明日会える。その湧き上がる喜びと幸福感!

そして・・・

叶わない想いの、締め付けられるような苦しい切なさ。悲しみ。

お姉ちゃんの件の心配事も混じり合って、あたしの心はパンク寸前。

もう胸が破裂してしまいそう・・・。


不意に再びスマホが振動する。あたしは慌てて電話に出た。


『もしもし七海ちゃん?』

「花梨ちゃん?」

『七海ちゃん、お元気?』

「・・・・・」


つい、噴き出してしまった。

急に改まって「お元気?」って聞かれてもなぁ。

ふふ。これも心配して電話してきたクチね。・・・ありがと花梨ちゃん。

あたしの心は、大地の時とは違う温かさで満たされる。


「んー。大部分は元気っぽいけど・・・」

『なによ。どうかしたの?』

「色々と複雑でさ。もうグチャグチャ」

『へえ?』

「絵筆を洗い終えたバケツみたい。結構すごい事になってる」

『大地の事も絡んでるね?』

「・・・鋭い」

『いいよ。話してスッキリしなさいよ』

「付き合ってくれる? 長丁場になりそう」

『恋愛話にはお付き合いするのが、女子同士のルールとマナーなんでしょ?』


へへ・・・そうでした。ではお言葉に甘えて。

本当にありがとう花梨ちゃん。


あたしはベットに寝そべったまま、胸の内のぐちゃぐちゃを吐き出し始める。

花梨ちゃんは何を指摘するでもなく、ただフンフンと聞いてくれる。

その声を聞いて、あたしは癒されていく。


女の子同士の夜が更けていく。


お姉ちゃんのいない部屋で。


弱音吐いたり、唇を尖らせたり、笑ったり。


後悔とか反省とか、やるせなさとか心配とか。

感謝だとか、ありがたさとか。


様々なものが心に生まれて育っていくのを感じながら・・・


あたしは、穏やかな眠気を感じ始めていた・・・。


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