(3)
「当然だろ。オレも行く」
「そうね。あんたには、その場にいながら七海ちゃんを阻止できなかった責任があるものねぇ」
「いちいち突っかかるなよ。お前こそ何でついて来るんだよ?」
「あたしと七海ちゃんはね、へその緒よりも固い絆で・・・」
「あーわかったわかったハイハイ」
「ちょっと! 質問したなら最後まで聞きなさいよ!」
二人のやり取りを聞いてるうちに、少しだけ頬が緩んでくる。
唇が、ふわりと柔らかく笑った。
うん。花梨ちゃんにもついて来て欲しい。あたしの大切な親友だもの。
花梨ちゃんの応援はね、あたしの強力なアイテムなんだ。
ここ一番、頼らせて下さい。お願いします。
そして、大地・・・。
側に居て、支えて欲しい。大地が隣に居るだけで、勇気と元気が湧いてくるんだ。
こんな情け無いあたしが、それでも頑張ろう!って思えるの。
まるで魔法みたいに。
大地の存在って本当にすごいなぁ・・・。
こんな状況でも、大地を見ると胸がドキドキしてしまう。
その事に少しの罪悪感と大きな切なさを感じる。
大地は・・・お姉ちゃんの事が好き。
好きな女の人が、自分の兄の子どもを妊娠してる。
それが衝撃でないはずが無い。
大地は今、どんな思いでこの騒動の成り行きを見守っているんだろうか。
悲しんでいるのか、怒っているのか。
心配とか、気遣いとか、苦悩とか・・・。
大きな物を抱えて、それでも大地は泣きもしないしわめきもしない。
じっと黙って微笑み、あたしを慰めてくれる。
様々な感情のせいで、あたしの胸はキリキリと痛む。あたしはますます大地に恋してしまう。
だから、大地の傷付いている心を悲しく思う。
そして、彼に届かない自分の気持ちを切なく思う・・・。
あたしは軽く頭を振った。
ダメダメ! 今はそんなこと考えないの!
柿崎さんに謝って、そして、お姉ちゃんのお腹の赤ちゃんの事を考えなきゃ!
自分の恋心はこの際、後回しだ! 優先順位を間違えちゃダメでしょ!
抱え込んでいたヒザを、景気付けにパアンと手の平で叩く。
気合一発っ!
ヒザってのはね、抱えるもんじゃないの! 歩いて先に進むためのもんなんだよね!
さあ、行こう!!
あたしは勢いをつけて立ち上がる。
花梨ちゃんが背中をなでてくれる。大地が頭をなでてくれた。
へへ・・・・・。
そしてあたし達は、揃ってカフェに向かって進みだした。




