表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/100

(6)

「逃げ出したなんて大げさな。ちょっと後退しただけなんでしょ?」

「でもあたし、すごく傷ついたんですケド・・・」


王子様の事もだけど、あの時のお母さんの仕打ちも、あたし一生忘れないと思うっ。


「七海ちゃん、識別不能なくらいヘドロまみれだったんでしょ?」

「そうらしいけどさぁ」

「おばさんにしてみれば、ほとんどSF映画の世界だったろうなぁ」


そうみたい。

なんかもう、『これをいったい、どうしようか!』しか頭になかったって。

だからお礼を本人に言うのが精一杯で、名前を聞くどころじゃなかったって。


はあぁぁ・・・

お母さんがちゃんと対応していてくれたらなあ・・・。


あの後、バタバタとお母さんに病院に連れて行かれて。

胃洗浄とか、いろいろ処置されて。

でもやっぱりお腹こわしちゃったり熱出したりして。

なかなかに、あたし自身も大変だったんだけど・・・。


落ち着いてくるごとに彼の事が頭に浮かんで離れない。

名前も知らない王子様の事を、何度も何度も繰り返し思い出していた。

幼い胸を、きゅっと熱く締め付けながら。


どうしても彼に会いたくて、その後ずいぶん探した。

たぶん近所の中学生だろうと当たりをつけて。近くの中学に、放課後毎に通いつめた。


今日、会えなかった。

明日は会えるかも。


それとも別の学校に行ってみようか。

そしたら会えるかもしれない。


きっと・・・きっと明日こそ!


「ほとんどストーカーだったよね、七海ちゃんって危険人物」

「人を犯罪者みたいに言うなっ」


親友の切ない恋物語を、過去の未解決事件みたいに言わないでよ!


「あたしまで付き合わされて散々だったし」

「どうしても会いたかったの!」

「幼児がそこまで執着するのも、たいしたもんよね」

「だって運命の相手なんだもん」


ホゥ、と熱い溜め息をつくあたしに花梨ちゃんは冷静な態度。


「運命でもどーでもいいんだけどさ。何度も何度も繰り返し、同じ話はいい加減ヤメてよ」

「いいじゃんそれくらい。親友でしょ」


うんざりっぽい表情で花梨ちゃんが溜め息をついた。

だって、さー・・・。

やっぱり、特別なんだよ。どうしても忘れられないの。

いつも心の片隅に彼は存在してて。

あたしの恋心を独占し続けてきた。


儚い夢を、いまだに諦められない。

いつか、いつかどこかで彼と再会して、いつかきっと運命の恋がかなう夢を。


クラスの男の子や学校の先輩。

カッコイイ!って評判の、女子がさわぐ男の子たち。

そんな男の子たちと出会いながらも、あたしは同じ夢を見続ける。


ずっと・・・

彼を

彼だけを。


一生忘れない、忘れられない

でも、名前すら知らない

大切な大切な、彼だけを―――。


切なくて、儚くて


ちょっぴり悲しい・・・


あたしの恋・・・。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ