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(6)

お姉ちゃんたちが教室から出て行くのを見送った。

・・・よし、片付け再開!


大地が重い物を運び、あたしが黒板を綺麗にする。ふたりでゴミをまとめた。

けっこうな量ね。よいしょっと。


「ねぇ大地。大成功だったよね」

「あぁ」

「これでお店にもお客さん来てくれるかなぁ」

「来てくれるといいな」

「きっと来てくれるよ。あたしの祈祷って効果あるらしいし」

「祈祷~??」

「そ。『必殺 まねき猫!』って念ずるのよ」

「必殺って、客殺してどーすんだよ」


明るい気分で、ふたりで顔を見合わせて笑った。

へへ、楽しい。気分いいなぁ。これからいろんな事が良い方向に進みそうな気がする。

今回の成功がきっかけになってさ。


人生、何がきっかけでどんな風に転ぶか分かんないからね。

幸先いいし、とにかく明るい前向きな気持ちでいれば、道は開けるってもんよ。

笑顔でね。


「また何かで落ち込んだら、お願いしちゃおうかなぁ?」

「なにを?」

「メイク」

「え?」

「だって、笑顔になれるんだもん。大地のメイクって」


ちょっと照れくさい気持ちでそう言うあたしに、大地はすごく嬉しそうな顔で頷いてくれた。

えへへへ・・・。


やだ、なんかちょっと本気で照れくさいわよっ。

もう、困っちゃう。

照れ隠しに、力任せでゴミを突っ込むあたしに背後から声が掛けられた。


「桜井さん」


・・・はい?


ゴミ袋を引っ張りつつ振り向くと、あたしの担任の先生が立っていた。

あ、せんせー。


「片付けの途中? 今日はずいぶん頑張ってたのね」

「はいっ。疲れましたぁっ」


とっても元気に「疲れました」宣言するあたしに、先生は少し笑った。

そして、なんだか真面目な顔になる。


「片付けの途中で悪いけど、ちょっと来なさい。話があるの」

「・・・はい?」

「柿崎君も一緒に来なさい」

「え? オレもですか?」


あたしと大地は顔を見合わせた。


「・・・何の話ですか?」

「とにかく来なさい。一緒に」


・・・・・。

なんだろう。急に呼び出されるなんて。

なんか・・・不穏な空気。嫌な予感がしてきた。胸がざわざわと慌ただしく波打ち始める。


だからといって。

先生に「来い」と言われて「嫌だ」と正直に言うわけにもいかず。

あたし達は無言で先生の後について行った。


歩いてる間、先生も何も言わない。それがますます嫌な予感を増幅させる。

だいたい、なんで大地と一緒に呼び出されるわけ? クラスだって違うのに。

大地とあたしの接点といえば・・・


カフェ?


そう思い立って、あたしの胸は瞬時に不安が湧き上がった。

まさか・・・!

まさかなにか今日の出張カフェで問題が!?


食中毒とかっ!?

いいやそんな! だってちゃんと加熱したし衛生面にも気を使ったし!


じゃ、なにか金銭面でトラブル!? お金が紛失したとか!?

いいや、してない! お金は柿崎さんがキッチリ管理してたし!


食事がマズイとかコーヒー薄いとかクレームが来た!?

・・・いいや!

んなこと言うヤツがいたら、あたしがそいつをぶっ飛ばす!!


あーだこーだと、様々な憶測が頭の中を飛び交う。

もんもんとしているうちに進路指導室についた。


「今はこの教室しか空きがなくて。ここで話しましょう」

先生が扉をガラリと開ける。


あ・・・・・。


「よお、柿崎。お疲れさん」

「先生・・・」

「忙しいとこ悪りぃな。ちょっと座れ」


中では、大地のクラス担任が座ってあたし達を待っていた。

大地の担任まで登場? ますます、なんか不穏な空気・・・。


「桜井さんも座りなさい」

「・・・はい」

あたし達は大学や企業のパンフレットが詰め込まれたキャビネットを背に、並んで座った。

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