表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/100

(5)

「あいつ、ガキの頃からそんなだったのかよ?」

大地が呆れたように言った。

「さぞかし親や教師泣かせだったろうな」

「親はもう完全に受け入れてるよ。担任は泣いてたけどね」


大学出たばっかりの、若い女の先生だったからなぁ。さすがにあれはちょっと気の毒だった。

花梨ちゃんを扱うには年季とスキルが足りなすぎたんだよねぇ。

あの先生、どうしてるかな? トラウマになってなきゃいいけど。


「そういう性格なら、あいつに反対されるのは分かりきってた事だろ?」

「うん。分かりきってた」

「ならわざわざ宣言しなくても良かったんじゃね?」

「すぐにバレるもん。もう、確実に間違いなく」

「女ってすげえよな。浮気に勘づくのは決まって女だからな」

「変な例えしないでよ」


あたしと花梨ちゃんはちょっと特殊なんだよ。なにしろ分身みたいな関係だから。


分身に絶交されちゃった。

こりゃかなり精神的にキツい日々が始まるなぁ。

あたしにとって、花梨ちゃんが隣に居るのは当たり前だから。


当たり前の状態が、そうでなくなるってのは、なかなかにダメージが大きい。

このダメージ抱えながらあたしはチャレンジしなきゃならないんだ。

でもしかたない。

それが、当たり前で無い事をしようとしている代償なんだろうから。


その自覚だけはしとかないとね。

バカな事しようとしてるのかもしれないけど。


「お前ひとりじゃないからな」

「大地・・・」

「バカもふたり揃えばどうにかなるだろ」

「・・・うん」

「決めたんだから、やるしかない。お互いにな」


そうだよね。決めたんだから。心細いけどやるしかないよ。お互いに。

笑ってる大地の顔が、妙に頼もしく見える。

うん。なんたって同士だもんね。こいつとあたしは仲間なんだ。戦友だ!


「頼りにしてるよ! 戦友!」

「おぉ!」

あたしと大地は、顔を見合わせて笑う。

そしてお互いの握りこぶしをコツンと合わせた。


「でさ、戦友。さっそくなんだけどさ・・・」

「ん?」

「あたしっていったい、これから何をどーすりゃいいの? 教えて」

「お―ま―え―なぁ―・・・」


大地の握りこぶしが、あたしのオデコをぐりぐりした。


「痛いっいたいっ」

「そこまで甘ったれんなよ。自分で考えろっ」

「そんなぁっ」

「他力本願で戦利品が手に入ると思うなよ」

「無理だって~」


自慢じゃないけどあたし、善良な小市民なんだもん!

略奪行為なんて未経験なんだから!


「小技を伝授してよ。あんたそーゆー腹黒いこと得意なんでしょ?」

「なんでだよ!?」

「お願いっ。あたしって圧倒的に不利なんだよぉ」


出会いは10年も前だけど。再会したのは、ほんのつい最近。

この10年の柿崎さんのデータなんて皆無なんだから。

10年分の想いばかりが空回りして、手持ちの武器がまったく無いのよ。


「ねぇ、情報を持つ者は常に勝者でしょ?」

「・・・・・」

「お姉ちゃんの極秘情報、あんたに横流しするからさぁ~」

「どこが善良な小市民だよ、どこが」


大地がそう言って溜め息をつく。

でも横流しのフレーズが功を奏したのか、柿崎さんの情報を暴露してくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ