(2)
「これだから女同士ってのは、めんどくせえんだよなぁ」
「なんなのエラそうに!」
「オレは別に偉くはねえよ。お前が七海に命令する権利もねえのと同じだ」
「命令なんてしてない!!」
「七海自身が決めた事だ。口出しすんなよ」
「あんたこそ横からしゃしゃり出てこないで!!!」
あたしは、花梨ちゃんと大地の顔を交互に見比べた。
だ、大丈夫かな? なんか、どんどん花梨ちゃんのボルテージが上がってる。
花梨ちゃんってキレるとかなり大変な事になるんだけど。
「か、花梨ちゃんあの、ちょっと落ち着・・・」
「七海ちゃんは黙ってて!!」
「は、はい・・・」
ズバッと邪魔者扱いされて、あたしは素直に引っ込んだ。
てか、あたしがこのトラブルの原因なんですけど。
張本人がカヤの外、ですか・・・?
「あんたは七海ちゃんを利用してるだけでしょ!?」
「利用ねぇ・・・」
「あたしは七海ちゃんのためを思ってるの!」
「ほー?」
目を吊り上げる花梨ちゃんと対照的に、どこか冷めた目の大地。
「なら親友の恋を応援してやれよ」
「そんな事できないわよ!」
「なんでだよ」
「七海ちゃんが、苦悩の限界に達するのが分かりきってるからよ!」
「お前、バカか?」
「はあぁぁっ!?」
花梨ちゃんの頬がぴくぴくっと痙攣した。
だ、大地! お願いこれ以上刺激しないで! 花梨ちゃんが爆発する~!
「バカじゃないなら、お前の目はふし穴だな」
「あんた・・・あたしにケンカ売ってんの・・・?」
あぁ・・・花梨ちゃんの声が1オクターブ低くなった。
こりゃもう、いよいよもって猶予が無い。表面張力が崩れる寸前・・・。
大地っ! 大地ってば!!
もう花梨ちゃん限界だから! パンっパンに膨らんだ風船状態だから!
これ以上、針で突っつかないで―っ!!
花梨ちゃんの陰で、必死にジェスチャーして意思を伝えようとした。
でも大地はそれを完全に無視する。
ちょ・・・こら! 無視すんな! こっち見ろってば! 見てください―!
「七海はな、もうすでに苦悩の限界を超えてんだよ」
「・・・・・っ!!」
大地の言葉に花梨ちゃんが絶句した。
「わかってやれ。親友ならな」
「・・・・・」
花梨ちゃんは、口をパクパク動かした。
動かすけど・・・なにも言葉がでてこない。そして唇をかんで、視線を落としてしまった。
花梨ちゃん・・・大地・・・。
「お前は模範解答を見せて、丸写ししろって言ってるだけだ」
「・・・・・」
「それが本当に七海を救うのか?」
「・・・・・」
「今の七海に必要なのは、理解と絶対的な味方だろ?」
花梨ちゃんはキッと視線を上げ、大地を睨みつける。
でもその表情は、ものすごく複雑で・・・。
あたしは、悲しかった。
花梨ちゃんの今の気持ちが、あたしには良く分かったから。
花梨ちゃんはあたしの気持ちを理解してくれてる。そんなの大地に言われるまでも無い。
親よりも・・・ううん。
あたし自身よりもあたしの気持ちを理解してるのが、花梨ちゃんだ。
だからこそ忠告してくれてるんだよね。
あたしの気持ち、お姉ちゃんの気持ち。あたし達の関係。家族として過ごすこれからの日々。
苦しい事。悲しい事。
耐えられる事実。耐えられない事実。
押さえられるもの。
・・・押さえ切れないもの。
それら全部、ぜーんぶ理解したうえで、一番良いと信じる事を忠告してくれてる。
花梨ちゃんは賢い。
それに正義感も強い。
だからきっと、花梨ちゃんの忠告に従うのが一番良いと思う。
花梨ちゃんだって本当は、あたしを応援したいんだ。
素直な心に従って、あたしの絶対的な味方になりたいんだ。
でも、できない。
それが花梨ちゃんという人間だから。
どんなに辛くても、最良最善だと信じる道を選ぶ。決してそれを曲げたりしない。
感情に負けて、流されてしまう事を潔しとはしない。できない人なんだ。
分かるよ、花梨ちゃん。
あたし花梨ちゃんの気持ち、すごく良く分かってるから。
だってあたし達・・・
大親友だもんね。
だけど。
だけど・・・・・。




