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その反面。

やっぱりこの胸は罪悪感にひどく痛む。

花梨ちゃんが言ってたあの言葉が胸に甦る。


「ねぇ大地」

「なんだよ?」

「略奪行為は犯罪行為って、やっぱり思う?」

「・・・・・」

「正直なとこ聞かせてよ」


あんたはどう思う?

あたしは・・・もっともだと思う。

人の恋を、しかも自分の実の姉の恋人を奪おうとするなんてさ。


普通の感覚でいって、あたしはひどい人間だ。

ひどい事をしようとしている。その罪悪感が心のブレーキを踏もうとしてる。

待て。ここで踏みとどまれって。


「あのふたりが結婚してんならな」

「・・・・・」

「法的に保障されてるもんを略奪するなら、そりゃ犯罪行為だろ」

「・・・うん」

「でも、まだだ」

「・・・うん」

「だからさ、今が最後のチャンスなんだよ」


うん。

あのふたりが結婚しちゃったら。

それこそ、あたしがしようとしてる事は犯罪行為だ。

だから今しかない。手に入れるチャンスも、諦めるチャンスも。


もしもあの二人が結婚して。

その後もあたしが、ずーっとこんな感情を柿崎さんに対して持っていたら。

それは最悪だ。あたし達全員にとって。

だから、今が最後のチャンスなんだ。


「七海、犯罪行為とかじゃなくてさ」

「なに?」

「試練って考えろよ」

「試練?」

「あぁ、運命の恋につきものの、試練ってやつだよ」

「・・・・・」

「これは試練なんだ。オレ達全員に与えられた、運命の恋を確かめるための試練」



試練の先に答えがあるんだ。


誰が結ばれるべき相手なのか。


運命の恋の、真実の相手は誰なのか。


それを知るために、試練を超えなければならないんだ。


・・・言い訳がましいと思う。

しょせん、正当化して罪悪感を減らそうとしてるだけだって。

でも止められない。

このままだと、いつか爆発するのは目に見えているから。

どっちにしろ破裂するなら、せめて最悪の状況下でだけは避けたい。


大好きなお姉ちゃん。

よりによって何でお姉ちゃんなんだろう。なんで他の人じゃなくてお姉ちゃんなんだろう。

それこそが試練なのかもしれないけれど。


試練を試す時は、今しか無いから。

この気持ちが暴発してしまう前に。大好きなお姉ちゃんを、本気で憎んでしまう前に。

あたしは・・・恋を叶える試練の道を進むんだ。


あたしと大地は見つめ合う。


そして無言で、ガッチリと握手を交わした・・・。


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