(7)
あたしは、その宣言を聞いてポカンとしてしまった。
奪う? 奪い取る??
えーっと・・・・・。
・・・・・・え???
えっと、それってつまり・・・
「つまりそれって・・・」
「ん?」
つまり・・・
二人のジャマを
柿崎さんの恋のジャマを
お姉ちゃんの恋のジャマを・・・
こいつ、するって宣言してるわけっ!??
しかも堂々と悪びれも無く!
「ちょっとあんたっ!!」
「なんだよいきなり元気になって」
「あんたホントに柿崎さんの弟!?」
「そうだ」
「信じらんないっ! 彼の弟にしちゃ性格悪すぎっ!!」
ひょっとして、血、繋がってないんじゃないのっ!?
だってやっぱり全然似てないしっ!!
「お前、異常に失礼なヤツだなぁ」
「あんたには言われたくない!」
性格に問題あるヤツにそんなこと言われたら、自分の人格に疑問を持っちゃうじゃないっ!
ん?
異常なヤツに、「お前は異常だ」って言われたんだから・・・
逆に、あたしは正常って事か? なんだ、良かった。やれやれ。
・・・って、そんな事が問題なんじゃなくって!!!
「そんな事させないからねっ!」
「なんでだよ」
「お姉ちゃんの幸せのジャマしないで!」
やっとなんだよっ。やっと・・・やっとつかんだ幸せなんだから!
なんのためにあたしが諦める決心したと思う!? 毎日、こんなに苦しんでまでも!
生まれた時からずっと大変な思いをし続けてきたお姉ちゃん。
人生最大最高の勇気を振り絞ったんだ。
そして、やっとつかんだ幸せ。やっとやっと訪れた希望の光。
だからこそ、あたしは涙を呑んで・・・。
それをあんたは・・・!
お姉ちゃんの恋は、あんたごときがジャマしていいものじゃないんだ!!
「お姉ちゃんの最後の奇跡の恋なんだから!」
「やっぱりお前、失礼だな」
「な、なんだとぉ―――――っ!!」
自分の性格の悪さを棚に上げてあたしを非難する気!?
どーゆー根性してんだこいつ!!
こんなヤツお姉ちゃんに近づけさせられないっ。お姉ちゃん、影響されやすいトコあるんだもんっ。
あの真っ直ぐな性格が、煮溶けたはるさめみたいにグチャベタになっちゃう!
「最後だなんて誰が決めたよ?」
「はぁっ!?」
「一海さんが、この先一生恋愛できないなんて誰が決めたよ?」
「・・・それはっ!」
「お前が自分で、さっき言ったろ?」
いや、それは、だって・・・っ!
「一海さんは、もう一生、男に相手にもされないってか? そりゃ、あんまりじゃないか?」
そ・・・
「そーゆー意味じゃないもんっ!」
「じゃあ、どういう意味だよ」
な、なにこいつっ! ミョーに余裕のある、この態度っ。
「この恋は、特別なんだって意味だもん!」
「特別じゃない恋なんてあるのか?」
「え・・・・・」
「あのなあ・・・」
教え諭すみたいな口調で、ゆっくりとこいつは言った。
「全ての恋は、特別なんだよ。それ以上、それ以下の恋なんて存在しねえよ」
・・・・・。
・・・・・・・。
ハッ!
い、いけない!
つい、ちょっと感動しちゃったかも・・・。




