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「よかったね、お姉ちゃんっ」

「七海」


今、あたしの笑顔って大丈夫かな? 引き攣ってないかな?


「あたし、怒ってなんかいないよ」

「七海・・・」

「お姉ちゃんって気にしすぎだよー」


しかたないんだ。

これはしかたのない事なんだ。

諦めるしかないんだ。


あたしは確かに柿崎さんの事が好きだった。十年もの間。

それは・・・今でも変わらない。


でも・・・じゃあ、どうする? 二人に話す?

十年前に、あーだこーだで、あたしは柿崎さんが十年間も好きだったんだから!って?


それで?

どうなるの? どうにかなる?


どうにもならない。

あぁ、そうだったんですか。で終わってしまう。

そんなこと言われても・・・で終わってしまう。


だってもう、柿崎さんはお姉ちゃんが好きなんだから。お姉ちゃんを選んでるんだから。

その事実はなにも変わらないんだから。


どっちにしろ、なんにしろ

どーしたってこーしたって

あたしは黙って諦めるしかないんだ。


「お姉ちゃん、あたし応援するからっ」


そうだよ、夢だったんだ。

ただの夢。

十年っていう長い月日をかけた夢だったけど・・・。


でも夢は夢。いつか醒める。そのいつかが今日だったんだ。


「お姉ちゃんの奇跡の恋を応援するからね!」


せめて、これ以上ミジメにならないように。

もうこれ以上傷つかないように。

十年の恋を忘れたふりをしながら、応援しよう。

そして少しずつ少しずつ時間をかけて・・・


いつか本当に忘れよう。


「ありがとう七海」

頬を赤く染めたお姉ちゃんの笑顔。

お姉ちゃんは幸せなんだ。柿崎さんも幸せなんだ。だから二人を祝福して応援すべきなんだ。

あたしの恋なんてジャマになるだけなんだから。


そうするべきなんだ。

そうするのが正しい道なんだ。

そうしなきゃいけないんだ。


そうだ そうだ そうだ


絶対そうなんだ。


キリキリと絞られるような痛みを胸に感じる。

柿崎さんの笑顔が浮かぶ。十年前の笑顔と一緒に・・・。

あたしは振り払うように頭を振った。


全部ぜんぶ忘れよう。それがいい。それでいいんだ。

忘れよう。忘れてしまおう・・・・・。


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