去りゆきし人の幻
あの人は私の前から去って行った。
あの人は一言「僕にはやるべきことが残っている。だから、行くしかないんだ。」
私はあの人の背中を見守ることしか出来なかった。
あの人のやるべきこととは一体何だったのだろう。
私には計り知れないことなのかもしれない。
あの人は1度だって私にその話をしてくれたことはない。
ただ、別れ際に呟いていただけ。
あの人の幻を最近見てしまう。
あの人の背中が、面影が・・・。
私にはあの人がどこにいるのかも分からない。
探そうと思えば探せるのにあえて私はそれをせずにいる。
あの人が帰ってくるのを期待して待っているわけじゃない。
あの人には、あの人の人生がある。
だけど、私は今でもあの人を愛している。
愛しているからこそ、探すのが怖くて幻を見るの。
あの人の大きな背中、悲しんで泣いていた時に抱きしめてくれた優しさ。
あの人を思い出す度に私は涙が溢れてくる。
あの人を待っていたい。
そして、やるべきことは何だったのか、それを果たしたのか、やりおえったのか。
少しでもいいから教えてほしい。
私はいつまでもあの人の幻を見続ける。
あの人が私の元に帰ってくるまで。
流華です。第2作目です。
今回は、ある人を待つ女性の気持ちを描いています。