僕の仕事
何とか僕が見つけ出したのは、夜の街を徘徊する運転手。
いわゆる営業許可なしの運転手だ。
営業許可なしで働いている夜の女の子たちをお金持ちの元まで運ぶ。
一晩中走りっぱなしで、昼間は魂が抜けたように眠る生活を、僕は案外気に入っていた。
何も考えずに生きていけるから。
このご時世、昼夜働く同業者おじさんが多い中で
僕は毎日決まった時間に真面目に出勤し
また、夜の蝶たちを誘うような度胸もなかったから
店側としては使いやすいらしく、そこそこ仕事をもらえた。
僕も人生の底辺に堕ちたと自負していたが
夜の蝶たちは本当に奈落の底だった。
車内で少しばかり話をすることもあるが、何だか僕が元気をもらえるような
ひどい話ばかりだった。
そして、みんなあきらめていた。
僕たちが生きているこの世界は、どうしてこうもうまく回らないのだろう。
自業自得という言葉で方をつけるというには、あまりにも切ない気がする。
騙し騙され、そしてまた騙し、こんな繰り返しが
綿々と続いていることに愕然とする。
僕はある夜、るうという蝶に出会った。
るうは、とてもおとなしい女の子だった。
というより、とても警戒している女の子だった。
僕もべらべら喋る方ではないので、初めは挨拶程度しか交わさなかったが
ある夜るうは、「どうぞ」と僕にチョコレートを差し出した。
「お客さんの海外土産」と手渡された僕は、御礼を言って受け取った。
チョコレートが嫌いなのか、くれた客が嫌いなのかは聞かなかった。
るうはそれから黙って、窓の外に流れてく夜の街をじっと見ていたが
突然「ねえ、私を可哀相だと思う?」と聞いてきた。
僕は、自分を可哀相と思うことすら考えつかなかったので、面食らって「全然」と答えてしまった。
るうはにっこり笑って「でもイマドキのコみたいに、買い物するお金のためにやってるんじゃないの」
と、ぼそっと呟いた。
僕は何も言えなかった。
るうに何があったかなんて、るうの口から話させるのもいやだったし
何より僕が聞かれたとしたら、その相手とは一生仲良くなれそうにもない。
るうは何もなかったように、また窓の外を見つめていた。




