包丁に宿る剣の女神
~永遠を誓う神の選択~
世界樹の聖域、祭壇に静かに置かれていた神の包丁。
見た目はシンプルで飾り気のない、ただの料理用の包丁にしか見えません。
けれど仁が手に取った瞬間、刃全体が黄金の光に包まれ、空間がゆっくりと震え上がりました!
「――ようやく、私の主が現れたようですね」
透き通るような凛とした声が聖域いっぱいに響き渡り、光の粒子が集まって一人の気高い姿が現れました。
長い銀糸のような髪、星を宿した碧い瞳、優しくも威厳に満ちた気配――まごうことなき女神です!
仁は思わず声を上げます。
「えっ…!?この包丁に宿っていたのは、女神様だったんですか!?」
すると女神はくすりと微笑みながら、少し厳しくも温かい口調で告げました。
「そうです。これは剣の神が宿る神器。…でも仁、あまり他の女性を過剰に褒めてはいけませんよ。
貴方には心から愛し、守るべき大切な女性が隣にいるのですから」
仁ははっとして頬を赤らめ、リリスの方を向きます。
「す、すみません…!そうですね、僕にはリリスさんがいますから…」
女神は柔らかく頷き、真剣な眼差しを向けました。
「それと、一つ現実をお話ししておきましょう。
貴方はヒューマン…寿命は限られています。
でも彼女はダークエルフ…その命は数百年、いや千年を超えるほど長いのです」
仁の胸に、ずしりと重い思いが押し寄せます。
(そうだった…考えもしなかった…。
もし僕が先に年老いて逝ってしまったら…リリスはたった一人、長い時を悲しみながら生きていくのか…)
握りしめた手が震え、リリスも瞳を潤ませて彼を見つめます。
そんな二人を見つめ、女神はにっこりと悪戯っぽく笑いました。
「だからこそ提案です。仁…貴方、神になりませんか?」
「えっ!?僕が…神にですか!?」
四人は一斉に驚きの声を上げます。
「ええ。貴方は獣人の村を救い、魔族の女王の心を癒し、種族を超えて多くの絆と愛を育んできた。
その優しさと真っ直ぐな心こそ、次代の神にふさわしいのです」
女神は肩をすくめて楽しげに続けます。
「実は私も、そろそろ神様の役目を辞めてのんびり隠居生活を送りたいと思っていたの
世界を見て回ったり、美味しいものを食べ歩いたり、気楽に過ごすのが夢だったのよ~」
そして優しく二人を包み込むように告げます。
「仁が神となれば、永遠の命が授けられます。
そうすればダークエルフのリリスとも、時間に隔てられることなく、末永く寄り添って生きていけるわ。
どうです?この神器と共に、新しい神として世界を見守ってくれますか?」
仁は隣のリリスを見つめ、彼女の手を固く握りしめました。
彼女の瞳に宿る愛と未来を確かめ、力強く頷きます。
「はい!やらせてください!
神となって、これからもずっと…リリスと共に、世界中に幸せと美味しい料理を届け続けます!」
リリスの頬には喜びの涙が輝き、柔らかな笑顔が咲きました。
「ええ…仁、永遠に一緒よ」
こうして、料理人の青年は神器の剣の女神から力を受け継ぎ、最愛の人と永遠に結ばれる道を選んだのでした――




