第3話 やりたいことは出来るときにやったほうがよいというけど、それって、この世の数少ない真理の一つだからね
毎日、東は自宅のある江東区から西は職場のある世田谷区まで往復する生活を10年以上、引越しせずに続けてきたことにそれなりの訳はある。
鉄筋アパートの大家さんが僕を気に入ってくれて、2年に1度の更新料を免除してくれていたのが大きかった。
けれど、朝から夕方のサービスを行う為に早朝に起床し深夜に就寝する生活は30代の頃は辛うじてこなしていたが、大人の階段を一段昇る毎に色々なものが削られていた。
夜はなかなか寝付けず、スマホをいじりながら気付けば寝落ち朝はシャワーのおかげで目は覚ませるが
昼休みに昼寝をしないと身体がもたない。
会話のネタは繰り返し同じ内容を話してしまうし、固有名詞が思い出せず、あれとかそれとかが増えるばかり。
それが、40代ラストイヤーに変わった劇的に
ゆで卵生活3日目の朝、すっと目覚める。
普段ならそこから5〜10分ぐだぐだしてスマホのスヌーズに催促されて、渋々起きていた自分が、さっと起き身支度を始めていた。
頭の中も妙に、すっきりして思考から行動までのタイムラグがない。
例えば食器洗い
今まで、食後に台所シンクに洗い物→あとでやろう→やらなきゃなあ→やるor翌日へ→食器洗う→ああ、食器カゴがいっぱいだ、いいや重ねちゃえ
だったのが
食後に台所シンクに洗い物→食器カゴから食器棚へ
→食器洗い→食器カゴへ→三角コーナーネット交換時に新しいネットに洗剤つけてシンク、三角コーナー掃除を何の感情もなく最速で行えた。
やらなきゃと思いながらも、面倒と感じて後回しにしてきた雑事の数々が片っ端から片付いていく。
銀英伝に例えるなら、自分はヤン・ウェンリータイプで、うちにもユリアン来ないかなと思っていたところ、朝起きたら自分がユリアンになっていて家の中が整備されていくようなものだ。
そして、ふとあることに気づいた。
なんでも後回しにする性格だと思ってたけど、
自分って、単純に元気がなかったんだ…
微かに視界がぼやけ、滲んだそれを拭っている自分がいた。




