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スカルド

 自分を引き受けてくれた家庭を離れてからは、住めそうな場所を渡り歩き、少し過ごしてはまた移動する生活をしていた。食料や道具は余裕で持ちこたえている。しかし五日が経ったことだ。僕はすごく恋しくなった。泣きじゃくっているところを優しく包み込むように慰めてくれた母。楽しい時は共に笑い、悲しい時は共に泣いた二人の兄。血は繋がっていないはずなのに、何故か家族かのような温かさがあった。


 「あぁ。ママ、お兄ちゃん……」


 僕は泣きそうになった。戻れないのは承知だが、それでも帰りたい。

 その時、


 「ん?どうした。そこの坊や?」


 誰かに声をかけられた。僕は声のした方向へ顔を向けた。長身の濃い黒髭を生やしたおじさんだった。


 「まあ、とりあえず私について来なさい」


 僕はおじさんの後ろを付いて行った。


 「着いたぞ。さあ入れ」


 そうして目的の地に着いた。一軒家だった。恐らくおじさんの家だろう。


 「お邪魔します」

 

 そう言って、僕はドアを開け、中に入った。部屋の中は暖房が効いており、すごく暖かかった。


 「ささ、座りなさい」


 おじさんにそう言われたので、僕は右側の椅子に座った。その後、おじさんも僕の向かい側の椅子に座った。


 「ところで、どうしたんだ?」

 「……家を出て行ったんです」


 僕は少しぐずぐずしながらも答えた。


 「出て行った? まあ家族と何らかの揉めごとがあったんだろうけど…とは言え、戻らないとまずいんじゃないか?」


 確かにそうだ。しかし家族が僕のために言ったなら、その通りにしなければならない。


 「あなたの言いたいことは分かります。でも…どうしても出て行かなければならなかったんです」

 「どーして?」

 「僕があの時住んでいたヴラデロ。後に深刻な状況になるらしいですから」


 その時。何かを察したかのように、おじさんの眉間にしわが寄った。


 「ヴラデロ……誰から聞いたんだ?」

 「次兄からです。彼は予言の能力に優れています。彼が言うには間違いないんです」

 「そうかぁ……」


 少しの沈黙の後、おじさんは何かを思いついたかのようにハッとした。


 「そうだ。良い場所がある」

 

 おじさんがそう言って、僕の肩を掴んだ。


 「スカルドってのはどうだ?知ってるか?」

 「スカルド?」


 スカルドとは何だろう。初めて聞いた名前だ。僕は首を傾げた。


 「そうか。知らないのか。じゃあスカルドがどんな場所か教えてやる」


 僕は真剣に聞こうと耳を傾けた。


 「まず、スカルドはここよりずっと西だ。ちなみに、ここはセパンだ。ここや君が住んでいたヴラデロよりもずっと警備が頑丈だから治安が良い。そして、スカルドは全世界で唯一魔法学校がある。」

 「魔法学校?」


 僕は『魔法学校』という言葉につまずいた。


 (魔法学校って?まさか名の通り、魔法を学べると言うことなのか。いやそんな夢みたいなことある訳ないね)


 僕が半信半疑でいる中でも、おじさんは話を続けた。


 「ああ、信じられないかもしれないが、本当に魔法学校があるんだ。スカルド魔法学校ってのがね。実際スカルドに行ってみたら分かるさ」

 「そうなんですねー」

 「行ってみたいか?」


 おじさんはそう僕に提案してきた。


 (魔法学校なぁー。絶対魔法使えたら強いし、何よりカッコいいに決まってる!しかもヴラデロとかよりも安全なんでしょ?)


 そして僕は深くうなずいた後、口を開いた。


 「もちろんですっ!」


 僕は目を輝かせた。


 「よし! 目標がスカルドに決まったな!」


 おじさんは笑みを浮かべながら言った。


 ♢


 すっかり夜になった。後におじさんは自分の名前が『ベット』であることを明かした。僕はベットおじさんの家に泊まらせてもらった。

 明日からスカルドを目指して旅が始まる。今度は僕だけでなく、ベットおじさんも同行する。僕は独りではないことに安堵した。


 「明日からスカルドに向けての旅かぁ……でも今度こそは大丈夫だ!僕が挫けそうになった時、ベットおじさんがいる。僕は孤独じゃないんだ!」


 こうして僕には新たな旅が始まった感覚がした。

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