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お別れ

僕はサノロイドのヴラデロに住む家庭に養子として引き取られ、義理の母と二人の義理の兄と幸せに暮らしていた。しかし一年後の1946年、僕に予期せぬ出来事が起こった。

 1946年、ヴラデロ。

 

 「ちょっといきなりで申し訳ないんだけどさ……」


 ママが申し訳なさそうに僕に尋ねてきた。


 「……どうしたの、ママ?」


 僕は母がこれほど悲しげな表情をしてるのを初めて見て、いつにも増して不安が脳裏をよぎった。僕は何か母に余計なお節介でもしてしまったのだろうか。


 「えと、その……近いうちにこの家から出て行った方が良いわ」


 僕はこの家から退去するように命じられた。僕は突然の出来事に愕然とした。あのすごく優しい母がこんなことを言うなんて、全くもって思いもしなかったからだ。


 「やっ、ヤダよ! 出ていくなんてっ!」


 僕は涙をこらえながら言った。僕はずっとここにいたい、出ていくなんて以ての外だ。


 「あのさ、僕……何か悪いことしたの?」

 「そう言うと思ってた。でも、仕方がないことなんだ。安心しろ、決してお前のことが嫌いになった訳じゃないぜ?」


 長兄が僕を慰めようとした。


 「あっぁ、し、仕方がないって……」

 「……ここがもうすぐ奴らの傀儡国家になるってことだよ」

 「奴らって……?」

 「あと数か月で出来上がる国だ……俺の予言だ」


 次兄が少し自信満々に言った。彼は予言の能力が著しく高く、僕が見てた限り外したところは一度もない。彼が言うなら本当にあり得るのだろう。


 「すぐではないわ。一週間後で構わないからその間、出ていく準備をするんだよ。良いね?」


 母は僕の涙をそっと拭った。


 「……うん」

 

 僕はか弱い声で返事した。


 ♢


 一週間後、ついにその時が来た。


 「さあ、準備は万端か?」


 長兄が、今にも泣き出しそうな表情で聞いた。


 「うん、問題ないよ」

 「そっか、じゃあ元気でな。ここがマシになったらいつでも帰ってきな」


 そして僕は玄関のドアを開け、外に出た。外に出た瞬間、僕の足は急に軽やかになった。振り向くと、僕を大事に育ててくれた義理の家族たちが笑顔で大きく手を振っていた。


 「それじゃあ、行ってくるね」


 僕は前を向いて歩きだした。新たな人生の転換点を感じた。


 「――僕の名はカノフ。本当のパパ、ママ。僕は元気にしているよ。絶対に戻って来るからね」

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