魔法
1943年、俺は5歳になった。
今日はミジェーおじさんに今までの練習の成果を見せる日だ。残念ながら父さんは商売に出ていて、その場にはいなかった。
俺はミジェーおじさんを呼びに行き、普段練習する場として使っている自宅からちょい離れた草原に連れて行った。
「今日は何の魔法の練習したいのかい?」
「違うよ、今日は練習の日じゃないよ。今日はね、おじさんに僕がこれまでに覚えた魔法を見せる日!」
「ははっ、そうか。では早速見せたまえ」
最初に全段階の炎属性攻撃魔法を見せた。ちなみに三段階まである。
「ファイヤ!」
一段目は「ファイヤ」。掌から一直線に炎の球を放つ。球の大きさは俺の頭くらい。
火力は木一本の半分を燃やせるほどで、射程は二十メートル行くか行かないかで、あまり期待できる魔法ではないが、魔法を使用するのにかかる体への負担は全ての魔法の中で一番軽い。
「バーニング!」
二段目は「バーニング」。「ファイヤ」の球の大きさが俺の体ぐらいになり、火力はほぼそのまま、射程がほぼ変わらないためこちらも相変わらず使いどころがない。
こんなの使うなら「ファイヤ」を使う方がマシだ。
「バーンドフィールド!」
三段目は「バーンドフィールド」。ここでやっとまともな炎属性の魔法がやってきた。
炎は扇状に広がり、直撃したものは一瞬で黒焦げになり、やがて灰と化す。名前の通り辺りを焼け野原にする。射程も百メートルとこれまでの炎属性の魔法とはケタ違いだが、その分、負担が一番ではないものの大きい部類に入る。
また、俺は魔法を使うごとに名前を読み上げているが別にいちいち読み上げなくてもいい。ただし、俺は上手く行くかどうか不安だ。読み上げた方が成功率が上がる。
ミジェーおじさんのような上級者は読み上げないことがほとんどだ。
「バーンドフィールドを5歳までに習得するなんて…アベル君はなかなかの者だね。俺でも7歳でやっとだったからなぁ」
「これだけじゃない、まだあるよ!」
そう言って次は全段階の氷属性攻撃魔法を見せた。こちらも三段階まである。
「アイス!」
一段目は「アイス」。人差し指で指した方向に向かって放射状に氷の破片が飛び散る。
射程は極めて短い上、対象物を氷漬けにはできないが、炎属性の一段目の「ファイヤ」と違い一段目とは思えない火力だ。燃費もそこまで悪くない。
「フローズン!」
二段目は「フローズン」。「アイス」よりも破片の大きさと放射範囲、火力が拡大する。それ以外は「アイス」と全く同じ。
「アイシクルアロー!」
三段目は「アイシクルアロー」。つららの矢の通り、指した方向に向かって弓矢のようにつららが一直線に飛ぶ。これでヘッドショットを決めれば一撃で倒すことができる。
この魔法だけでやり遂げられるだろうと思うかもしれないが、サノロイドのスカルドは極寒の地だ。氷耐性がすさまじく高い奴が多い。そのため「アイシクルアロー」の一撃必殺が無効になってしまい、意味がなくなってしまう。
まあどっちみち魔法学校で魔法全て習うんだから、全く習得する意味のない魔法というわけではないと思いたい。
「すごいな! さすがは俺のアベル君!」
「えへへへへ」
俺はミジェーおじさんに褒められたことでつい照れてしまった。
「ただいまー。ああ、アベル練習してたんだな。偉いな」
父さんが仕事からちょうど帰ってきた。
今いる草原からやや遠目にある時計塔を見るといつの間にか正午を過ぎていた。
「あ!父さんにも見せてあげる!」
俺は父さんにも同じように見せようとした。
しかし、何故かうまくいかない…。
「えー、何で。おじさんにはちゃんとできたのに……」
「ああえーっと、アベル君?」
「どうしたのおじさん?」
「多分、魔法のエネルギー切れだと思うんだ。それを回復するような魔法を使えたりできるかい?」
魔法のエネルギー、いわゆるマジックエネルギーを回復する魔法では「マジックヒール」という物がある。これは日光や植物の栄養を吸収してマジックエネルギーを回復するが、習得には百キロマラソンに慣れるようなぐらいの苦痛を伴うとされるほど習得が難しい。前にミジェーおじさんが言っていた。当然まだ俺には習得できていない。
「……ううん」
俺は首を横に振った。
「そっかあ。それなら仕方がない。今ちょうど昼だしアンタのママがもう昼食作ってるだろう。それを食べて回復しなさい。いいね」
俺はミジェーおじさんが言うがまま自宅に戻って昼食にした。
昼食後、再び草原に戻った。ミジェーおじさんが待っていた。
「おじさん、昼食は食べなかったの?」
「ああいや、俺には必要ない。俺にはマジックヒールとライフアップがあるからな!」
さすがはミジェーおじさんだ。
俺の後を追いかけるように父さんも来た。疲れ果てた父さんを見てちょっと申し訳ないと思ったが、父さんに魔法をミジェーおじさんに見せた通りに披露する準備をした。




