表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/35

第25章 — 絶望者たちの公園(そして混沌のシーソー)

カイは凍りついた警察署から走り続け、

息も、理性も、残っていた希望の半分も失っていた。

通りはほとんど無人だった。

月が輝いていた。

そして彼は震えていた。


「もうムリだぁぁぁ!!!」

彼は虚空に向かって叫んだ。


しかし、その“虚空”が答えた。


「かぁーーい!!」

すぐ後ろでリュウナが歌うように呼んだ。

「スピード落ちてきてるよ! 押してあげようか?」

「押すなぁぁぁぁぁ!!!」


カイは角を曲がり──

そこで公園と正面衝突した。


滑り台。

ブランコ。

砂場。

シーソー。


全部、無人。


カイはふらつきながら公園に入り、どこへ向かうべきかもわからず歩いた。


「計画が…いる…なんでもいい…なんでも…!」


彼は周囲を見渡し──シーソーを見つけた。


大きな木製。

古い土台。

巨大で頼りなさそう。


カイは笑った。


悲劇的な笑い。

狂気混じりの希望の笑い。


「これだ。子供向け工学の最高傑作。」


リュウナが公園に入ってきた。

砂の上をすべるように歩き、

“プライバシー侵害”という概念を一切理解していない動きで。


「カイ〜〜! ロマンチックな場所を選んだね!」

「ロマンチックじゃない!! 目についた最初の場所なんだよ!!」


リュウナはシーソーを見て、目を輝かせた。


「わあぁ……二人用の仕組み! カップルにぴったり!」

「カップルじゃない!! 子供用!!」


カイは片側に乗った。

シーソーは彼の重みで地面まで沈み込む。


「今だ…」

彼は小声でつぶやいた。

「彼女が反対側に座れば…」


リュウナが巨大な笑顔で近づく。


「カイ…一緒に遊ぼ?」

「罠だ!!」

「愛の罠は大好き。」

「そんな罠存在しない!!」


リュウナはそっと反対側に座った。


シーソーは──


動かなかった。


まったく。

びくりとも。

微動だにせず。


カイは彼女側を見た。

次に自分側を見た。


「……マジかよ。」


リュウナは瞬きをした。


「なんで動かないの?」

「お前が“全長300メートル級の海竜”だからだよ!!!」

「そっか〜……今日は軽いと思ってたんだけど。」


カイは尻もちをつき、魂が抜けた顔になった。


「もう何も…効かない…全部やったのに…」


リュウナが体を傾ける。

地面がズズッと沈む。


「カイ…大丈夫。もう逃げなくていいよ。」

「逃げる必要あるわ!!!」

「ないよ。」


彼女が手を軽くシーソーの中央に置いた。


──バキィッ。


シーソーは真っ二つに割れた。


カイは飛び上がった。


「公園のシーソー壊したぁぁぁ!?」

「だって役に立ってくれなかったし……」

「役に立たせたかったんじゃない! お前を遠くに飛ばしたかったんだよ!!」


リュウナは折れた板を持ち上げ、じっと眺めた。


「カイ……」

「なんだよ!!?」

「あなた、木材の使い方が独創的だね。」

「それ褒め言葉じゃないから!!」


リュウナが近づく。

やさしい笑顔。

闇でも光る瞳。

混沌と平和を同時に撒き散らすオーラ。


「カイ……今日はいっぱい遊んだよね。

もう……そろそろ、マーキングさせて?」


カイは絶叫した。


「やだ!! やだ!! 絶対やだ!!」


彼は滑り台へ走った。


登る。

滑る。

砂まみれ。

足をひねる。

着地失敗。

顔面から転倒。


だが即座に立ち上がり、また走った。


何事もなかったかのように。


リュウナはのんびり追いかけてきた。

魚の天ぷらをぷらんぷらん揺らしながら。


そして公園には、

人類史上もっとも奇妙な追いかけっこの跡だけが残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ