第24章 — 絶望の警察署(そして史上最速の逮捕劇)
カイは通りを走っていた。
まるで処刑台から逃げる囚人──
ただし彼の「運命」は、ウロコをまとい、過剰に笑い、致命的な愛情で名前を呼んでくるタイプだった。
リュウナはすぐ後ろで輝きながら走っていた。
魚の天ぷらを永遠の愛のトロフィーのように抱えて。
「カーーーイ!! なんで逃げるの? 嬉しくないの? 私は嬉しいよ!」
「お前の“嬉しい”は俺の“地獄”なんだよ!!」
その時、カイの視界に建物が入った。
ライトで照らされ、警官が立っていて、パトカーが停まっている──
警察署。
カイは泣きそうな笑顔になった。
「これだ!! 助け!! 社会!! 文明!! 法律ゥゥ!!」
彼は人間ミサイルのようにドアに突っ込み、
「うわあああああ助けてぇぇええ!!」
警官たちは振り返った。
「おい、少年、何が──」
「巨大な女が! 俺を追いかけて!! 噛もうとして!!!」
「……は?」
カイは指を震えながら入口を指した。
「彼女!! 今にも!! 来る……!」
──バンッ。
警察署の扉がとんでもない勢いで押し開けられ、
壁のポスターが落下した。
リュウナが入ってきた。
濡れて。
粉まみれで。
光りながら。
魚を持って。
静寂。
警官、全員フリーズ。
受付の女性はコーヒーを落とした。
刑事はビスケットを喉につまらせた。
リュウナは優しく微笑んだ。
「こんにちは。リュウナです。カイを迎えに来ました。」
カイは巨大な警官の後ろに隠れた。
「俺はお前のもんじゃない!!」
「ううん、私のだよ。」
「違う!!」と警官が叫んだ。「この子は君の“パートナー”じゃない! それにここは立ち入り禁止だ、帰りなさい!」
リュウナは首を傾けた。
「……あなた。カイを守ってるの?」
「そうだ。彼は君のパートナーじゃない!」
「ちょっとだけ連れて行っていい?」
「ダメに決まってる!!」
リュウナは悲しそうにため息をついた。
そして手のひらを返す。
青い光が一瞬きらめいた。
気温が下がる。
急激に、凍りつくほどに。
警察署全体が
5秒で氷の世界になった。
窓。
壁。
机。
銃。
コーヒー。
マグカップ。
全員の魂すら。
全部、氷。
カイ以外。
なぜなら、リュウナが凍らせる前にそっと彼の肩に触れたから。
「カイ……あなたには凍ってほしくない。
ただ、逃げるのをやめてほしいだけ。」
「警察を凍らせたぞおおおお!!」
「あとで溶かすよ。」
「そんな簡単じゃねぇえええ!!」
リュウナは近づいてきて、凍った床を歩きながら優しく微笑んだ。
「カイ……今はもう、ここには私たちしかいないよ。」
「いやだああああ! その流れの会話はダメだああ!!」
「じゃあ“例のこと”していい?」
「例のこと禁止!!」
「マーキング。」
「ダメって言ってるだろ!!」
カイは氷で足を滑らせ、
凍った警官を倒し、
凍った机の上に落ち、
机はガラスのように粉々に砕けた。
彼はヨロヨロ立ち上がり、出口へ走った。
リュウナは後ろから静かに追いかける。
まるでデート気分の巨大海竜のように。
カイは警察署から飛び出し、
凍った歩道で滑りかけながら走った。
リュウナは後ろからついてきて、
魚の天ぷらが凍った警官の足にぶつかり、
奇妙にリズミカルな音を立てていた。




