第23章 — 電動カート王国(そして報われない愛のショック)
カイは乳製品コーナーをよろめきながら抜け出し、
叫び、転び、滑り──
完全に敗北の味に染まりきっていた。
リュウナはいつも通り後ろから追ってくる。
幸せそうに、輝きながら、恋に落ちて、そして危険。
「カーーーイ!!」
彼女は割れたジュースの瓶の間をぴょんぴょん跳ねながら呼んだ。
「もっと遊びたいの? 私ならいくらでも遊べるよ!」
「遊びたくねぇ!! 生きたいんだよ俺は!!」
カイが曲がり角を飛び込むと──
そこにあったのは、予想外の光景。
高齢者用の
電動カート。
あの小さくて、遅くて、うるさくて……
でも 電気で動く カート。
カイは笑った。
完全に正気を捨てた人間の笑顔で。
「あぁ……うん…… sanity は第11章で終わったんだな……」
彼はそのカートに飛び乗った。
緑のボタンを押した。
カートはこう言った:
ビイイイイイ……カチッ……
そして動き始めた。
遅い。
遅い。
信じられないほど遅い。
カイは周りを見回した。
「……嘘でしょ。」
カートは
8秒で半メートル 進んだ。
そこへリュウナが曲がり角から現れた。
瞳が星のように輝く。
「カイーーー! 動く玉座を選んだのね!」
「玉座じゃねぇ!! 緊急脱出用の乗り物だ!!」
「膝の上に座っていい?」
「絶対ダメ!!!」
カイはすべてのボタンを押しまくった。
全部。
全部。
するとカートは──
カチッ、ウィウィウィ、ピッピッピ、ガガガガ……
そしてついに──
加速した。
遅い。
けど加速した。
カイは感動した。
「動いた! 動いたぞ!!」
リュウナはカートの横を楽に走っていた。
「カイ、遅いよ……押してあげよっか?」
「押すな!!」
「ちょっとだけ。」
「触るなこの聖なる乗り物!!!」
リュウナは──
軽く押した。
ほんの少し。
彼女にとっては。
しかし物理法則にとっては
大災害。
電動カートはロケットのように暴走。
カイは叫んだ。
「ぎゃあああああああああああ!!!」
彼は恐怖速度で通路を突っ走り、
レジを突き抜け、
パンを倒し、
そして店の外へ飛び出した。
警備員はもう諦めて見ているだけだった。
カートは道路へ出た。
カイはしがみつきながら叫ぶ。
「も、もう操縦不能だぁぁぁぁ!!」
「私がいるから大丈夫!」
リュウナは自動ドアを押し広げて出てきた。
カートは消火栓を轢きそうになり、
右に曲がり、
電柱に当たり──
バフッ。
横倒し。
カイは宙を舞い、
また地面に叩きつけられた。
「……自分の人生に有給取りたい……」
リュウナはそっと近づき、
濡れた子猫みたいにカイの襟首をつまんで持ち上げた。
「カイ……危なかったよ……」
「おまえがいると全部危ないんだよ!!!」
「でも勇敢だった……」
「勇敢じゃねぇ!! ただの絶望だよ!!」
「海竜はね、綺麗に走る子をパートナーに選ぶの。」
「文化の話すんなぁぁぁ!!!」
リュウナが顔を近づける。
髪の水滴が星みたいに光る。
「カイ……ついに来たね……この瞬間……」
「ど、どの瞬間だよ……!?」
リュウナがゆっくりと爪を上げる。
青い光。
静かな夜。
迫りくる破滅。
「……あなたを、今……やっとマーキングできる瞬間……♡」
カイは跳ね起きた。
「やめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
彼は全力で走り出し、
転びまくり、
方向を2回間違え、
犬にぶつかりかけた。
リュウナは追いかける。
魚の天ぷらも追いかける。
夜は更ける。
街は壊れる。
そして──
この星で一番カオスな恋物語は、まだ続く。




