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第2章 — 砂浜で一番必死な逃走劇

カイは、歯でできた津波に追われているかのような勢いで砂浜を駆け抜けた。


その後ろでは、リュウナが人間の姿のまま追ってきていた──本来なら、それでスピードが落ちるはずだった。

だが違う。

違う。

違う。

彼女は、制御不能なロケットのように前へ突き進み、あらゆるものに躓きながらも、一度たりとも完全に転んで止まることはなかった。


「カーーーイ!」

状況にまったく合っていないテンションで彼女が叫ぶ。

「戻ってきて! “印”はそんなに痛くないから!」


「“そんなに”!?!?」

カイは叫び返し、放置された砂の城を飛び越えるときに砂を飲み込みそうになった。

「それは《耐える》ってことか、《死ぬ》ってことかどっちだ!?」


「伝統よ!」

リュウナは、可愛いからという理由だけで砂の城を避けながら言った。

「名誉に思いなさい!」


カイは名誉どころではなかった。

彼はまさに、恋に狂った巨大な青い蛇に狩られるネズミの気分だった。


彼は砂浜の上の方──ココナッツ水の屋台が並ぶ区域──へと走った。

テントの下へ身を滑り込ませ、必死で隠れようとする。


リュウナはテントの前で立ち止まり、身をかがめて中を覗き込んだ。


「カイ……」

目を輝かせながら腰を下ろす。


「あなたの足……見えてるわよ……」


カイは心の中で全力の悪態をついた。

足を隠すべきだった。


絶望的な反射で、彼は転がるようにテントの外へ飛び出し、駐車場へ向かって全速力で走った。

車に辿り着ければ、まだ望みはある。


小さな望み。

1%くらい。

でも0%よりはマシだ。


リュウナは再び走り出したが、今度は両腕を前に伸ばして、高速で抱きつくつもりのようなフォームだった。


「ちょっとした“引っかき傷”だけよー!」

「それか小さな“カプッ”! 大したことないから!」


カイは絶叫した。


「どう聞いてもヤバいだろそれぇぇぇ!?」


「早めのプロポーズみたいなものよ!」

彼女は満面の笑みで言った。


カイは自分の運命につまずきかけたが、ギリギリで体勢を立て直す。


車が近い。

鍵を掴む。

リモートのボタンを押す。


ピッピ。


ドアが開く。


カイはドアを引いた。


その瞬間、巨大な影が彼の上に落ちてきた。


リュウナだ。

跳んでいた。

二メートルの高さから。

完全に制御不能のまま。


「つかまえたぁぁぁぁ!」

彼女が叫んだ。


カイは瞬時に横へ飛び退いた。


リュウナは地面に落ち、爆発のように砂を巻き上げた。


海竜の娘はむくりと起き上がり、咳き込みながら濡れたスカートを払った。


「っくし……人間って、思ってたより速いのね……」


その隙を逃さず、カイは車に飛び込み、ドアをバタンと閉めた。


鍵を回す。


エンジンをかける。


車は咳き込んだ。


もう一度咳き込んだ。


そして死んだ。


「ダメだあぁぁぁ今じゃないだろぉぉぉ!!」

カイはハンドルを叩いた。


リュウナはゆっくり近づいてきた。

とてもゆっくり。

まるで頑固で逃げ足の速い獲物を捕らえる直前の捕食者のように。


彼女は窓の横にしゃがみこんだ。

優しさと狂気を同時に含んだまばたきをしながら。


「カイ……」

「な、なんだよ……?」カイは冷や汗を垂らしながら答えた。


「ドア……開いてるわよ。」


カイはゆっくり視線を落とした。

ロック解除のまま。


反応するより早く、海竜はドアを引き開け、純粋さと狂気を混ぜた笑顔を向けた。


「ありがと♡」

「アアアアアア触るなあああああ!!」


追いかけっこは、再び始まった――。

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