第四幕: 〜名を捨てよ、魂の略奪〜
やあ、君。いま、ものすごく、有名なシーンを観ることになる。しかも、ジュリエットことジュリイの横で。
彼女、もうすぐしたら14歳になる女の子で、ストレートの金髪を腰まで伸ばし、端正な顔立ちに鋭い目を持つんだ。プロポーションは、曲線は強調されてない、控えめな体つきをしてる。
おや、彼女が今世紀以降、『バカの代名詞』として語られるだろう男の名を呼んだ。
「おお、ロミオ!あなたは、なぜロミオなの? あなたの父を捨て、あなたの名さえ捨ててください…」
彼女は一呼吸ととのえる。
「その名さえなければ、あなたは手に入れられるのに。ロミオよ。
名を捨ててくだされたならーー」
きまったね!
やあ、君。いま、ものすごく、有名なシーンを観ることになる。しかも、ジュリエットことジュリイの横で。
彼女、もうすぐしたら14歳になる女の子で、ストレートの金髪を腰まで伸ばし、端正な顔立ちに鋭い目を持つんだ。プロポーションは、曲線は強調されてない、控えめな体つきをしてる。
おや、彼女が今世紀以降、『バカの代名詞』として語られるだろう男の名を呼んだ。
「おお、ロミオ!あなたは、なぜロミオなの? あなたの父を捨て、あなたの名さえ捨ててください...」
彼女は一呼吸ととのえる。
「その名さえなければ、あなたは手に入れられるのに。ロミオよ。
名を捨ててくだされたならーー」
きまったね!
彼女の台詞は効果があった。
窓の下のすぐ近くの草むらに隠れていた彼が、ゆらりと、そこから蛇のように這い出てきた。
ジュリイの顔は嫌悪感で一瞬歪む。
その男が月明かりに照らされた。
ウェーブがかった金髪を肩まで伸ばした屈強な体つきをしてる男だ。
年は21ぐらい。高貴な顔立ちをしてた。だが、知性なんてない。
当たり前さ!
13歳の女の子に熱をあげる奴に、
知性なんてあってたまるか。
「好きなように呼ぶといい、ジュリエット。君が囁く名が、本当の僕の名前だ。ロミオという名は、もはや仮!
君が呼ぶ名前こそ、まことだ!」
彼の名が『バカの代名詞』と本格的に命名された瞬間だった。
時を少し遡ろう。
ジュリイの部屋で彼女が悪魔と対峙しているところだ。
彼女は寝台から降りて、立っていた。
まるで仁王立ちだ。
悪魔を恐れず、見つめていた。
そんな彼女の気迫におされて、悪魔は二歩下がる。
「なぜ、絶望をしていない?」と悪魔は優しく問いかけた。
「する必要がないから。」
「ほう?」と興味深そうに彼女を見つめた。
「魂がほしいんでしょ?」
「もちろん。特に君のが」
「私のは渡せない。私は誰からも奪わせない。」
二人の雰囲気は甘くはなかった。
悪魔は彼女が何を言いたいのか、見えなかった。
「羊皮紙は持っている?」と彼女は聞く。
「もちろん。大事に持っている」と悪魔は答えた。
「それには、名前さえ書けば”誰でもいいの”?」
「同意さえあればーー」
「充分だわ。私は彼と結婚をする」
しばらく考えて、彼女は宣言した。
「ロミオからすべてを奪う!」
悪魔は彼女から目が離せない。
「魂さえも!」
叫びような声は虚空へと消えた。
「ロミオからすべてを奪う!
魂さえも!」
叫びような声は虚空へと消えた。
バルコニーの甘い囁きが、略奪の宣言に変わるこの幕。ファウストの魂がロミオの知性を嘲笑う。第五幕で、神の前での結婚が業火を燃やす……君の心も、奪われそうかい?