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第二幕: 〜神の呪い、地獄の歌〜

やあ、君。来たんだね。

ボクらはいま、ジュリイことジュリエットの母の部屋にいる。

二人の見た目麗しい女性のいる部屋で天国のような気持ちだ。

話の内容は、ほんのちょっと現実的なんだけどね。

やあ、君。来たんだね。

ボクらはいま、ジュリイことジュリエットの母の部屋にいる。

二人の見た目麗しい女性のいる部屋で天国のような気持ちだ。

話の内容は、ほんのちょっと現実的なんだけどね。


「ねえ、母様。私たちの家は、収入と支出のバランスはしっかりとしてるかしら?」と母に甘えるように聞く。

「わたしのジュリイ。あなたの言うこと、分からないわ。家のお金は女が気にする事ではないわ。」

「だって、母様。連日の宴。私だって、不安になるわ」

「それよりも、パリスさまに気に入られるよう振る舞いなさい。さっきの話題、ぜったいにしちゃダメ。」

そういうと、彼女の母は部屋に戻るように言った。


ジュリイがカプレット家の奥深く、上階の自室に向かいながら、一人つぶやく。

「蝶よ、花よと言われても、

ムリヤリ嫁に行かされる。

まるで市場のブタみたい。

イヤになるわ。」

彼女の部屋の扉を開けようとすると、

扉は一人でに開かれた。

乳母が太った顔を見せてくる。

「お嬢様、お早いお戻りで」とニヤニヤしながらジュリイを見つめてくる。

上から下まで品定めをされた気がして、ジュリイは睨みつけた。

「勝手に部屋に入って、どういうつもりなの?」と問いただす。

「今夜はお嬢様にとって素敵な鳥が舞い込むと思いまして、少し仕掛けを」と乳母は含み笑いをする。

普段から気持ちの悪い乳母が、ジュリイにとっては、今日は悪魔に思えた。

彼女は部屋に入って、周りを見渡す。

彼女の室内は中世の宮殿風、赤い絨毯が床を覆い、四柱の天蓋付きベッドが中央に鎮座。窓が一つ壁にある。ドレッサーなどもある。


いつもと変わっていたのは、

窓の下に縄梯子が置いてあった。

部屋の外にいる乳母を見た。

「これが、あなたの言う仕掛け?」と聞く。

「ええ、ええ、お嬢様。夜に素敵な殿方様がやってらっしゃるでしょう」

乳母の懐が膨らんでおり、彼女は嘲笑を浮かべてる。醜い。


乳母が去った後、ジュリイは寝台にうつ伏せになる。

両親に乳母の事を告げ口しても、ムダだと彼女にはわかっていた。

縄梯子を用意したのは彼女のせい。

夜中に男が来ると言っても、妄想扱いだ。彼女の鋭すぎる知性は、少女の現状を冷静に判断してた。


“女よ!今宵、お前は処女ではなくなるのだ...”


貴族の嫁にはならねばならぬ。

乳母には知らぬ男をあてがわれる。

逃げるには彼女は幼すぎた。


彼女は洋裁ハサミを持ち出して、枕に仕込む。せめて、一太刀あびせるのさ。

彼女の読んだ恋愛物語が、

彼女に道を示した。


そして、彼女はつぶやく。

「神さま。私はあなたを許さない。」


怒りと嘆きは地獄のファンファーレ。


悪魔を呼ぶには、ちょうどいい。


さあ、聞こえてこないか。


君たちの足元から哄笑と地響きが。


聞こえるだろう...。


きっと...。


きっとさ...。


部屋に不思議な歌が聞こえる。


神を呪うかバカものめ。

お前は彼の愛そのものなのに

自ら祝福に唾をはく


天に唾吐きし呪いは

お前に更に苦痛を与えるぞ


まあ、いいさ。

空からは呪いは戻らぬが

大地の底から応えよう

硫黄と闇をまとうのは


ルシフェルにすら

いちもく置かれる

このオレさ

メフィストフェレスが現れた。


一代目、二代目、三代目だと?

本家はオレさ。オレのみさ。

地獄の同胞よ、

天使のように歌って讃えよ

オレが地上に現れる。


歌が部屋中を揺るがせた。

寝台やドレッサーが、自ら意思を持ったかのように、大地からわきあがる旅人を出迎えた。彼女は怯えて寝台から落ちないようにシーツをつかむ。

部屋の形はかわり、彼女の前には、別の男がいた。

黒のタキシードの上から黒い外衣をひっかけた、端正だが小狡そうな金褐色の短髪をした金色の目を持った青年が現れたのだ。


彼はとびきりの礼儀ただしさを、ジュリイにむけた。その瞳には慈悲を感じさせる何かがあった。


「オレはメフィストフェレス。君たちの言うところの悪魔さ。


悪魔と気軽にいってもいいが、

親しい者にはルシフェルの影とか呼ばれた事もある。

ねぇ、カプレット家の令嬢ジュリエット。

君にはオレをメフィストと呼んでほしい。いいかな?」


いいかな?

そう声は部屋中に響き渡り、虚空へと飲み込まれるんだ。


この出会いは、永遠だ。

また誰かがファウストを受け継ぐ者を語るのなら、

この出会いは、永遠でなければならない。


こうして第ニ幕は悪魔の哄笑と共に閉じる。


この出会いは、永遠だ。

また誰かがファウストを受け継ぐ者を語るのなら、

この出会いは、永遠でなければならない。

こうして第ニ幕は悪魔の哄笑と共に閉じる。

メフィストの金色の目が、ジュリエットの運命を照らす。第三幕で、契約の代償が明らかになる……君の予想は当たるかな?

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