***初めての異世界***
前世で虚しく死亡した田畑 耕
女神様と祖父母に励まされ異世界転生をする事になり新たな生活が始まる
気がつくと僕は湖畔の大樹の洞に横たわっていた
身体は少し気だるい感じではあるが引き締まって妙に軽く感じる
見慣れない服装…
傍らには大きめの背負い袋が置かれていた
とりあえず荷物を手に取り水辺に歩を進めた
飲めるだろうか?…
そう考えながら水面を見た
ふと頭の中に言葉がよぎる
[湖畔の水
水質 優良
飲用 可]
えっ?
何だ?今の…
試しに足元の花は…
[タラクサ
和名 タンポポ
食用 可]
鑑定できるのか?
これは便利な能力だな…
どれ、とりあえず水を…
ええっ⁉
これが僕の顔?
まるで10代?しかも結構イケメン?
もしかしてずっと夢見続けてるのか?
首まである金髪で風になびくサラサラヘアー
ちょっと童顔だけど鼻筋が通って顎もシュンってしてる
その輪郭を一際イケメンにする碧く澄んだ瞳
全身は見えないがお腹の出っ張りも弛んだ肉もない引き締まった体型で微妙に視線も前より高くなったような気もする…
これが…新しい僕?…
試しに顔をつねってみた
イテテッ!
やっぱり本当に転生してたんだ…
鑑定って自分にもできるのかな?
[名前 コウ タバタ
年齢 18歳
種族 ヒト
状態 軽い脱水状態]
うわっ、頭の中に自分の状況までわかるのか…
とりあえず水飲まなきゃ…
僕は掌で水をすくって飲んでみた
ゴクッ、ゴクッ
パアーッ
飲んだ途端、身体が光って何か力が湧いてくるような気がした
と同時にキコン♪という小さな音が頭の中に響いた
この水はなんだ?
僕はもう一度湖の水を鑑定してみた
[湖畔の水
水質 優良
飲用 可]
一瞬先ほどと同じ言葉が浮かんだがグニャリと歪むと新しい言葉が浮かんできた
[精霊の泉の水
水質 優良魔素水
運用 飲料として回復効果有り
錬金術に使用する事で様々な追加効果を得られる]
んん?
何か変わった?さっきのは鑑定の能力が上がったのか?
試しにタンポポは…
[タラクサ
日本名 たんぽぽ
運用 花と茎は食用にできる
根は乾燥させ粉末にすると軽度の毒消し効果
更に煮だす事で少し苦めのコーヒーとなるため嗜好品として利用可能
利尿作用があるが飲み過ぎると腹を下すこともあるので注意]
すごく詳しくなってる
じゃあ自分の鑑定も?
[名前 コウ タバタ
年齢 18歳
種族 ヒト
職業 旅人
状態 良好
創造神の加護
愛の女神の加護
スキル
鑑定レベル2 算術レベル5 柔術スキル1 剣術レベル1 弓術レベル1 採集レベル0 農耕レベル0 畜産レベル0 飼育レベル0 狩りレベル0 釣りレベル0 伐採レベル0 薬作成レベル0 毒作成レベル0 治療レベル0 医学レベル0 草木育成レベル0 開拓レベル0 建築レベル0 陶芸レベル0 工芸レベル0 鍛冶レベル0 料理レベル0 解体レベル0 醸造レベル0 魔力操作レベル1 生活魔法レベル1 治癒魔法レベル1 能力判定レベル2 亜空間収納レベル1]
何だか加護が見えるようになってるし職業とスキルの項目が増えてる
採集は採集可能な物を調べたけど採集はしてないからレベル0って事かな?
経験のある技術はスキル0で組み込まれてるんだろうな
亜空間収納は気になるが日本人にはお馴染みのよくあるナントカポケットみたいなものだろう
とりあえず背負い袋の中身でも鑑定してみるか
[背負い袋
名称 個人用マジックバックレベル1
機能 異空間コンテナに繋がっており命ある生き物以外は種別分けをしての収納も可能
レベル1では5m四方の5つのボックス分け
空間魔法によりレベルアップする事で収納能力を上げる事ができる]
亜空間収納のバックバージョンみたいなもんかな?
ボックスは旅道具用、武器防具用、生活用具用、木箱木樽収納用、収得物用に別れてる
旅道具のボックスは火口箱やランタン、ロープや小型ナイフ、小銭入れやポーチや外套などが
武器防具ボックスにはとりあえず程度の質素なレザー装備と鉄の短刀とショートソード、簡素な弓矢が入っているだけだった
まあ兎狩り程度ならできるだろうか…
一応の罠セットらしき道具も入ってるし…
生活用具は簡単な調理器具と木でできた食器類と斧、鎌、鍬、鉈、鋤、中世に使ってたっぽい工具箱の中には田舎のじいちゃんが使ってたような大工道具や鍛冶の道具が入ってるし、着替えはタンスの中にはいっていた物がほとんど…合成繊維の物以外だろうか?ファスナーや金属部分は無く木のボタンや紐で止めるようになってて異世界風のデザインになってる
木箱と木樽は10ずつあるが全部空だし収得物用ボックスも空だからこれから収納しろってことだろうな?
色々鑑定している間に鑑定レベル3、能力判定レベル3、出し入れしていただけで亜空間収納レベルは2に、マジックバックレベルは3に上がったところでMAXになったようだ
背負い袋はあくまでマジックアイテムだから10m四方10ボックスでも貰い物としては大きすぎるくらいなんだろうな
まあ出したり入れたりしてるだけで亜空間収納レベルは上がってるからすぐにMAXの無限状態になりそうだけど…
とりあえず周囲の状況がわからない以上すぐに移動する事もできないな…
シュンッ!
ん?
マップのモニター?
今のところわかるのは自分の動いたところと湖周辺の見える範囲だけだし、ヘタに動いて夜になるくらいならこの辺の木を切って簡単な寝床を作って散策は明日からにしよう
寝床さえ何とかなれば良い水はあるしバックの中の保存食と野草だけでも一週間くらいはもつだろうし
僕はそう考えてバックから斧を出すと手近な木に斧を振ってみた
カコーン!
スパーン!
キコン♪
驚いた事にひと振りで木が切れて、その上何かレベルアップ音がした
“斧スキルレベル1、伐採スキルレベル1、職業 木こり が選択可能になりました”
誰の声だ⁉
僕の周りを囲むように目映いばかりにキラキラ輝くたくさんの光の粒が現れたかと思うと、その光は僕の前に集まって人の形を形成していった
“私はセレナ様よりコウ様の異世界生活をサポートするよう遣わされたR.I.M(Remote Imagination Manager = 遠隔問題解決能力管理者)、リムと申します
到着が送れまして申し訳ございません”
人の形をした光はそう断ってから話を続けた
“コウ様はこちらに来て間がない為私の身体を形成する為の魔力がありません
これから色々な経験を積む事で魔力が増え私の身体が実体化するまではコウ様の身体の中からアドバイスをさせて頂きますので質問がありましたらいつでもお聞きください
緊急時や新しい能力を得た時、レベルアップの時はご報告致しますのでご迷惑な時はお申し付けくださいね?”
頭の中にAIが入ってるような感じかな?
いや…どっちかって言うとお風呂の自動給湯器?
“お風呂のお湯が溜まりました”とか言うやつ…
それはあまりに失礼かな?
“コウ様…考えてる事…駄々漏れです…”
しまった、どうやら考えるだけで筒抜けのようでリムを悲しませてしまったらしい…
と言うか…これってプライバシーが何も無いんじゃないか?
素直にリムに聞くのが一番だろう
「リム…これってプライバシーの設定とかって出来ないのか?」
“設定というのはわかりませんが…
でわレベルアップ等の報告以外は呼ばれた時に反応するように致しますね?”
でもそれ以外も反応しないだけで読まれているんだよなぁ~
“大丈夫です
私も一応女性という識別をされておりますので、男性であるコウ様のあんな事やこんな事に関しては…恥じらいもありますので…”
ポッ♡
「おいおい!
そういうとこはデリケートな話だろう⁉」
“私はコウ様の身体も精神も体調管理も全てセレナ様より一任されておりますので…
身長175センチ、体重64キロ、胸囲89センチ、胴囲68センチ、あそこの長さ…、生前は48歳まで童貞で亡くなった事も…”
「うわーーっ‼
そこまで言うなー‼
ってかこの身体になってからまだ確認してないしー!
って…そんなにおっきくなったの⁉…」
BOMB!
なんか頭が噴火しそうなくらい恥ずかしくて顔が熱くなってきた
「わかった!
わかったからこの話はここまで!」
余計な事で時間を使ってたらいつの間にか夕方になってしまった…
とりあえず今日はマジックバックの中に入ってる一人用の簡易テントを出して一夜を過ごす事にして枯れ枝を集めて火を起こした
テントを出しただけなのに職業 大工選択可能になるし、火口箱を使って火を起こしただけで火魔法が使えるようになったし、干し肉が固くて湖の水と食べられる野草を摘んで肉と煮込んだだけなのに調理と錬金術のスキルと水魔法まで覚えた…
この調子だと何かする度にスキルが発生してチートな人間になってしまいそうだ…
とわ言え、元々じいちゃんばあちゃんとの生活やそれまでの暮らしで得ていた能力からしたら野草知識や料理の知識、DIYの技術なんかは最初から持ってた物だからなのかもしれないな?
魔法とかは別にしてね…
腹もいっぱいになったし、明日からやる事も山ほどあるから今日は早く寝ておくか…
じいちゃん、ばあちゃん、セレナ…
それとリム…
おやすみ…
“おやすみなさい…コウ様…”
リムの返事を聞いたら、なんだか一人じゃないんだな…って気がして、僕は穏やかな気持ちで眠りについた…