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魔王最弱なリスは平穏に暮らしたい  作者: フィガレット
第一章 瓦解する日常
6/12

表向きとは違う方針と本当の目標。裏の裏は表ではない。

 メルフィとキーフには悪いですが、『ニューグラストが肥沃な大地である事』『森の民が住んでいる事』『怠惰の森が実は増殖なんてしない事』を調査によって知られる訳にはいきません。


 これを隠し通す・・・無理ゲーじゃない?


 相手は優秀な調査団です。ポンコツだって見ればわかるレベルの嘘です。

 ここは私の能力をフル活用するしかないのかもしれません・・・。


 実は私の能力は、たった一つしかないのです。

 それは誰しもが持っている能力。そして体質として、魔力を無限に浪費出来ると言う事。これは能力というよりはむしろ呪いですねぇ・・・。


《私の能力は、感覚を共有する能力。このただ一つなのです。》


 そこには制約が存在します。


 相手に対して敵意、害意、悪意を持っては使えない。

 

 こいつが厄介過ぎるのです。

 そもそもに感覚を共有する能力は誰しもが持っています。

 それは言語や身振り手振り、表情、様々な方法で具体化してきた文明の歴史。


 そこに異界の神の気紛きまぐれと、賢者の黒フクロウの知恵が混じった。

 悪魔とリスのハーフである、ただ長生きなリスにとっては随分と大それた能力が備わっていた。それが『異界渡航ワールドリンク』。しかし、リスはそれを活用する気もなかった。


《人は皆、その身の中に異界を内包している。》


領土把握クロウアイ』の能力は、私を監視している黒フクロウの視覚をちょっと借りてるだけなんですよねぇ。


「メルフィとキーフ達には幻覚でも見せて、上手く勘違いして貰うしかないかもですねぇ」


 でも、この幻術の効果範囲はせいぜい怠惰の森の周辺までです。何故なら怠惰の森の魔力を使っているから。


 その幻術を使って、怠惰の森は破壊できず誰かが制御しないと増殖し続ける、と錯覚させたのです。それは、怠惰の森を守る為という大義名分がありました。


 あの時もわりとメチャクチャではありましたが・・・。


「具体的にはどうするのですぅ?」


 サポちゃんはわりと興味なさそうに言いました。


「ニューグラストを調査していると錯覚させて、魔王城周辺のグラストを調査させますかねぇ・・・」


 嘘をつくのは心苦しいですが、ニューグラストを調査させる訳にはいかないのです。

 ただ、それだと・・・


「グラストを調査されても都合の悪い事が一杯では??」


 サポちゃんは実は結構、賢いので的確に問題点を突いてきます。

 しかも私の都合です。制約に引っ掛かりそうですねぇ・・・。


 しかし、これは怠惰の森の存続にも関わります。ニューやニューグラスト、森の民達にも影響します。いっそ、肥沃な土壌についてはバラしてしまってギルドに引き取って貰えないかなぁ。リンクは実は切ろうと思えば切れます。一応、主体は私ですし。


 ニューは怒るだろうなぁ・・・。


 今の状態でリンクを切れば、恐らくニューグラストは制御を失い枯渇する事でしょう。

 それは・・・寝覚めが悪そうです。

 私に良心なるものがあるかは分かりませんが、出来ればしたくないと思うのです。

 そうなれば、恐らく制約はクリアされます。


 怠惰の森。まさに自分が撒いた種なのです。


 責任が・・・嫌、否、でも・・・。

 私の納得の落ち着き場所を何としても手繰り寄せなければいけません。

 だからこそ・・・私はメルフィとキーフを騙します。


 うん、いつも通りですね♪


「グラストの増殖プログラムは以前に使った偽シミュレーターを今回も使って再度、誤魔化しましょう。そこだけ押さえておけば、真面目な調査団相手なら他の都合の悪い事はバレても知らぬ存ぜぬで通しますので」


 これは、サポちゃんやケルベロスちゃん、そしてニューにとっても共通の『都合の良い』立ち回りだと思われました。なので、私達は共犯者になれるのです。


 黒フクロウも・・・ギリギリ納得してくれるでしょう。たぶん。


・・・


 私は心の中の奥底。誰にも気付かれない領域で密かに一つの決意をしていました。

 ニューグラストは切り離す。

 ニューは絶対に怒るだろうけどね。必要なのです。

 私が私である為に。


 その為の条件を整えるのは・・・とても難しそうですねぇ。

 今のままではリンクを切れば森は消滅。泥欲の腐敗、でしたっけ?

 アレは再度、猛威を振るう事でしょう。

 独立した森の制御システムの構築と、それを可能にする潤沢な魔力の確保。そして、泥欲の腐敗の根本的な解決が必須です。

 

 それをクリアした上で、ニューグラストを切り離す。

 ニューなら、後の事は上手くやるでしょう♪


 これは絶対に誰にも知られてはいけません。

  

「マスターは相変わらず、自分勝手ですねぇ♪」


 サポちゃんを除いては・・・。

 彼女だけは一蓮托生いちれんたくしょう、どこまでも切り離せない私の半身。

 既に、私の描いている未来を察知した様です。

 


 私の目指すのは、アクマでも怠惰な平穏。

 黒フクロウもそうでなければ納得しませんし、

何よりも、誰よりも、私がそうである事でしか、納得出来ないのです。


 

 他でもない、私自身が望んでいるのです。


「他人の都合も考えてますよ?ただ自分の都合を主体に欲張っているだけです♪」

「マスターはやっぱり屁理屈の天才ですねぇ」


 だから、あなたにだけは言われたくないのですよ!


《貴方は私の屁理屈なんですから・・・。》

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