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魔王最弱なリスは平穏に暮らしたい  作者: フィガレット
第一章 瓦解する日常
5/12

その場しのぎの画策

前回までの〜・・・あらすじ!


 とある小さい領土に住む悪魔とリスのハーフの魔王は最弱でした。

 怠惰の森『グラスト』を統べる魔王リスは平穏に暮らしたかったのですが、税金を支払わないといけなくなり、徴税に来た眼鏡エルフの『メルフィ』と調査団の元気ドワーフの『キーフ』が訪れて怠惰な平穏が脅かされる事に。調査を始めようとしたら怠惰の森が漏れ出していて領土が二十倍になっていた事が発覚。増えた森、新怠惰の森『ニューグラスト』は荒廃する土地を食い止めたらしいです。でも責任が増えるのはノーサンキュー!

 どうにか穏便に元の怠惰な生活を取り戻したいリスは、その夜にたった二人の領民である『サポちゃん』と『ケルベロスちゃん』を集めて会議を始めたのだったが、ケルベロスちゃんを尋問した結果、その影から謎の妖精が現れてリスの事をパパと呼んだのでした。


・・・


「まぁ、普通に考えてニューグラストの化身ですよねぇ・・・」


「さすが、マスターは無駄なところで察しがいいですね♪」


 無駄ではないでしょうに!

 サポちゃんにソックリな妖精。となればそう考えるのが自然でした。

 そしてサポちゃんは色々と気配を察知している様なので間違いなさそうです。

 しかし、パパですかぁ・・・。


 マナネットワーク上の仮想空間に置いて、そのビジュアルを作画した相手をママと呼び、加えて技術的に仮想空間での動きをつけたり3D化をした相手をパパと呼ぶのです。


 その考え方でいくと・・・私は確かにパパですねぇ・・・。


 バイパスを使って、サポちゃんを生み出した時の処理を行なったと思われます。

 ただ、勝手に使っておいてパパ呼ばわりはちょっとねぇ。


「いきなり現れてパパと言われても責任は取れませんよ?」


 責任とは怖い言葉です。それは怠惰と相性が悪すぎます。


「認知しないなんてマスターはサイテーですねぇ♪」


 いや、そもそもに私の子供ではありませんしぃ。


「私は怠惰の森の秘密を知っています」


 ぐふぅっ!


 偽サポちゃんからの会心の一撃の一言が私に刺さりました。


「お・・・脅すつもりですか?」


 私は必死で平静を保とうとしながらも、動揺を隠しきれませんでした。今まさにギルドの職員や調査団が来ているタイミングで、その脅し文句は強烈過ぎます!


 新怠惰の森の化身であるこの子は、当然の様に色々な秘密を知ってしまっている事でしょう・・・パスも繋がっているので情報もダダ漏れですし・・・。

 しかし、この子を受け入れたらいよいよもって新しい領土の責任も漏れなく付いてくる事でしょう。私の平穏は遠のく事間違いなしです。


「脅すなんて人聞きの悪い♪私はただ、そちらの妖精さん同様に仲良くしたいだけですよ?」


 野放しに出来ない秘密を握っている存在。抱え込むのが良作かもですが・・・不穏過ぎるんですよねぇ。地雷の香りがぷんぷんします!


「我が魔王城は常に金欠です。食事は質素ですし豪華な装飾など一切なく、贅沢なんて敵ですが大丈夫ですか?」


 大丈夫じゃないと言って欲しい。自立を促しましょう♪


「大丈夫ですよ?というかあの森の魔力を使えるんですから食べ物なんてなんとでもなるでしょうに」


 へ?そんなこと出来るの?私はスッとサポちゃんに視線を移します。

 すると、すすす〜っと視線を逸らすサポちゃん。おい・・・。


「サポちゃん、なにか言う事はありませんか?」


 食べ物を生み出すの、あれ結構疲れるんですけど?


「出来なくもないですね!」


 開き直りよったぁ!!ふんぞりかえってサポちゃんは言い放ちました。


 よく考えれば怠惰の森の化身で私の能力も使えるサポちゃんなら私より上手く森の魔力を使えるはずです!でもサポちゃんは無理だと言っていた訳ですが・・・


「サポちゃんが頑張ればもっと楽に美味しいものが食べれるんじゃないですか!」

「嫌ですよ!面倒く臭いですぅ!!」

「私だって面倒くさいですよ!これからは当番制にしますからね!」

「料理なんて出来ませんよぉ!」

「覚えればいいでしょうが!」

「嫌ですぅ。そんな暇があったら新しいソシャゲをやりますぅ〜」

「まだ増やすつもりですか!?もうアプリがソシャゲだらけでデイリーボーナスの回収だけで数時間かかってるのに!」

「ガチャを引くあの快感をタダで楽しめるんですよ?最高効率を目指してログインボーナスのみを回収しつつ無課金でいかに楽しむかを極めるあの楽しさがわからないんですかぁ!」

「いや、その楽しさはわかるけど!!」


 と私とサポちゃんは不毛なやり取りをしていると・・・


「何をどう間違ったら、そんな怠惰な妖精が生まれるんですか・・・?」


ニューグラストの妖精は呆れておりました。あれ、凄くまともな子なのでは?


 しかも、詳しく話を聞くとニューグラストが今まで問題なく安定していたのは彼女のおかげの様でした。正直言って今後も管理をお任せするしかない状態です。

 既に自立してらっしゃいます。

 そもそも、今まで上手くいっていたのに、わざわざ今更なぜに現れたのでしょう?

 しかも仲良くしたいと言っている訳で断る理由もなくない?


「なにかして欲しい事でもあるのです?」


 直接に聞くのが手っ取り早いですね。


「調査されればすぐに私の存在には気付くでしょうし、敵対の意思はないのに排除されたり切り離されたら困るので挨拶に来たのですよ!」


 あ、さてはいい子だな。


 そもそも、この領地の二十倍もの土地。私には管理出来ません。しかし彼女にはそれが可能。既に行なっている訳です。今後も頑張って頂きたい。問題はギルドに私の領地として登録されている事でしょうか。未登録の妖精は危険視される可能性が高いですし。

 だからこそ、私の庇護化であると称するのが手っ取り早いと言う事でした。

 

 もう、任せてしまいましょう♪


「オッケー♪じゃぁ、今まで通り頑張って貰いつつもこれからも宜しくね」


 問題の大半が解決したのでは?私は、ほっと安心しておりました。

 

「では私の名前を頂けますか?あと扶養の書類にサインを♪」


 それでニューグラストの管理を丸投げ出来るなら万々歳です♪

 食費も税金も自分達の分は問題なく稼げる様ですし、ノーリスク!


 名前はいつもの様に適当に『ニュー』と名付けました。


・・・


「これでニューグラストの木々と森の民、三百人は貴方の庇護化に入ります♪」


 へ?


「ご安心下さい。森の民は自給自足を既に行なっています」

「ん・・・?怠惰の森は不毛の地では・・・?」

「泥欲の腐敗と混ざった怠惰の森は肥沃な大地ですよ?」


 初耳ですが?


 我が領土に価値はあってはいけないのです・・・。

 それが肥沃な大地が球場二十面分?大丈夫じゃない、問題だ。

 そんなの調査されたらすぐにバレてしまいます。

 そしたら税金が更にかかってしまいますし、他国からの侵攻もあり得ます。

 いっそ侵略されて奪われたいけど、繋がったバイパスを切れないので隷属を要求されてしまいます・・・。丁寧に飼われるならそれもありですけど、優遇されるとはとても思えませんねぇ・・・。どうしよう、詰んでまふ・・・。しかも領民がいる・・・だと!?


 絶対に問題事の予感しかしません。領土の運用?他国との交流?

 絶対に嫌です!気軽なネットライフにしか興味がありません。

 そこで私は全力で最善手を搾り出したのです。

 

「ニュー、貴方を我が領土の宰相に任命します!」


 役職を与えて責任を押し付けます!!


「え・・・?宰相?」


 宰相とは、簡単に言うと総理大臣の事である。

 国政を丸投げするのです♪


「貴方は実に優秀です。加えて我が魔王城はぶっちゃけほぼ無価値です。つまり我が領土の価値はニューグラストに集約しています。そして、そのニューグラストの実質的管理者はニューなのですから、ニューが適任です!私は全面的に貴方を信頼しますので頑張って下さいね♪」


 適度に褒めつつ事実も交えて都合よく事を運ぶのは、交渉ごとの常套手段です♪

 これにより私は何もせずに平穏な生活が送れるはず!

 そもそも、今まで通りなのですからニューも不満はありませんでした。

 役職を与えた事でそれを明確に互いに認め合った結果となっただけなのです。


「思惑が透けて見えるのが不快ですが・・・私にとっても都合が良いので容認しますよ・・・」


 ニューは少し疑念を持ちながらも納得した様でした。


 ちなみにケルベロスちゃんが、ニューグラストの存在を隠していたのは単純に餌付けをされていたのに加えて、ニューと森の民の事を想っての事でした。

 私が面倒に思ってニューグラストを切り離す可能性を恐れていた様です。

 そんな人でなしに見えますか?見えますね。リスですし。


 タイミングを見計らわれていた様ですね。完璧なタイミングでしたよ!ちくせう・・・。このタイミングで秘密を盾にされれば受け入れざるを得ませんでした。


・・・


「当面の問題はメルフィとキーフの調査をどう欺くかですね」


 私は切り替えてニューも交えて会議を再開します。

 肥沃な大地の件も初耳でしたし、森の民の件もバレると色々と厄介です。

 怠惰の森の秘密もバレるとなお、アウトですし・・・。

 

 今更、言えないんですよねぇ・・・。


《怠惰の森は無限増殖なんてしない。なんて・・・》

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