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魔王最弱なリスは平穏に暮らしたい  作者: フィガレット
第一章 瓦解する日常
4/12

おまけ『魔王城の日常』

 これは、メルフィやキーフが来る前の魔王城の日常の話。


「マスター、キャベツともやし飽きましたぁ・・・」

「我儘を言うんじゃありません!」


 我が魔王城は日夜、金欠です。


 怠惰の森の膨大な魔力は、とても変換効率が悪い。

 私とサポちゃん、そしてケルベロスちゃんのご飯代を賄うのがやっとです。

 結果、コスパの良い野菜を厳選して魔力から変換しているのです。

 キャベツは比較的、日持ちがしますしお手頃価格で色々な料理に使えますし、もやしは更にコスパが良いです。後は米とかパンを主食にしつつ豚肉や鶏肉をメインにしております。


「そろそろ焼肉が食べたいですぅ・・・マスター稼いでくださいよぉ」


 たまの贅沢はします。趣味の小説で少しだけ稼ぎがあった時は焼肉に行ったのですがあれはいつでしたっけ?もう結構前な気がします。他にも配信をした際の投げ銭とか、イラストを描いたお礼とかの臨時収入があった時くらいなんですよねぇ。


「というか働けばいいじゃないですかぁ!」

「働いたら税金を払わないといけなくなるのです!収入源があると思われるわけにはいかないのですよ。働ける事をギルドにバレる訳にはいかないのです!」


 ダメ人間の最たる発言な気もしますが、別に迷惑はかけていませんし。

 むしろ益獣です♪まぁ、マッチポンプな訳ですが・・・ゲフンゲフン。

 そう、この怠惰な魔王リスは贅沢と引き換えに質素に生きながらも自由を手に入れたいのです。まぁ、他人事の様に言っていますが私なんですけどね。


「さて、今日も配信でもしますかねぇ」


 この世界にはマナネットワークが存在します。待機中に満たされたマナを介して情報を送り合える便利なシステム。おかげで私は退屈をしません。

 更に、ここに私の唯一の特殊能力『異界渡航ワールドリンク』を合わせる事で別世界とも繋がれるのです。


 『異界渡航』自体は実は、誰しもが持っている能力なんですけどね。想像力と創造力とその使い方、変換方法の違いだったりもするのですが、これは内緒です♪


 配信を始めるとすぐに一人、来てくれました。


「今日も来てくれてありがとう♪元気してる?」

「まぁ、生きてるかな♪」


 いつも配信を見に来てくれる一人。実は異界の者である。

 もちろん、この世界の人も来てくれる訳だけど、今日は彼女が来てくれた様だ。


「そっちはどう?プレゼントした木の実は上手く育ったって言ってたけど・・・」

「こっちでは怠惰の森と言われているけどね。おかげで助かってるよ♪」


 怠惰の森を制御しているのは、実はこの『異界渡航ワールドリンク』の応用だったりします。怠惰の森は一つの集合思念体が漏れ出したモノ。その根は異界に根ざしている。


「それはよかった♪こないだのイラストは可愛かったよ!ありがとうだよ!」

「このくらいのお礼はしないとねぇ」


 などと雑談をしていると別の人も来たので今日も、のんびりと雑談をして過ごす。


「今日は午後からゲームでもするかぁ♪」


 仮想空間で技を競ったり、協力して敵を倒したり、運を楽しんだり。

 娯楽とはなんと素敵なものか。楽しいは数少ない無から有を生み出す機関だと私は思っている。小説や漫画を読み、ゲームをして、他の人の配信を見たり、最高です♪


 今日も今日とて怠惰な最弱魔王は電子のリスとして世界を巡る。


 サポちゃんは、サポちゃんで好き勝手にやっている。

 私の能力を兼用できるのである意味、私よりハイスペックだ。

 妖精は色々と妖精同士のリンクもあるし、魔法も使えるので魔王城を魔改造したり仮想空間を作って好き放題やっている。


 かれこれ、そんな日々を100年以上、過ごしている。


「あれ?そういえば配信で150歳って名乗ってませんでしたっけぇ?」

「嘘は言ってないよ?そもそも今の私と昔の私が同一かと聞かれると誰も断言出来ないし」


 何を持って個するか。例えば人は死ねば加齢は止まる。しかし、意思が継続すれば加齢するか?記憶を全て失って、体を全て入れ替えて、それでもそれは連続した個といえるのか?私はこの世界に渡ってきた時に、新しい私としてカウントを数え始めた。

 

「150歳から数えてないからニャー。それに誰も認識していないなら嘘だとバレる事もないし」

「なら私が認識してますよぉ♪」


 だから150歳なのだ。私がサポちゃんに出会ってからもうこの世界で言うところの150年が経過した。そう言う事だった。


「配信で話してる人の中には、私と出会う前の人もいませんでしたっけ?あれはノーカンなんですぅ?」


 私に似て屁理屈の上手い妖精である。


「時間軸も概念も違うやつばっかりだからなぁ。私より適当で大雑把なのもいるし」


 と私は少し懐かしみながら笑みを溢す。彼らとは友人だ。天敵もいるけどね。

 まぁ、でも元気にしてるかねぇ。あのフクロウ・・・。

 おかげで今があるので、おそらく彼も友なのだろう。怖いけどね。

 そもそも人じゃない者ばかりなんですよねぇ。

 木の実をくれたあの者は神様らしいしニャー。


「マスターは本当に屁理屈が上手ですねぇ♪」


 貴方にだけは言われたくない、けど似た者同士だしなぁ・・・。


「屁理屈も理屈。所詮は都合の問題ですヨォ♪」


 こんな生活もいつかは飽きてしまうのだろうか?

 もしくは、環境がそれを許さなくなる事があるのだろうか?

 変化を望むのも、生物の本質なのかもしれない。

 私も停滞している様で変化はしている。昨日の私を覚えているのだから。

 その変化がいつか、今を許さなくなる日が来るのかもしれない。


 この時は、この日常があんな風にして瓦解するとは思ってもいませんでした。


 それでも、私はきっと変化を受け入れて前へ進む事でしょう。


 なぜなら私は生きる事に貪欲な、怠惰で自分勝手な『魔王』なのだから・・・。

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