リス、丸め込む!
前回の〜・・・あらすじ!
可哀想な勇者来たのは黒フクロウの差し金でした。
犯人はヤツ!
・・・
最近ずっと大人しいと思ってたんですけど、ついにやりやがりましたね・・・黒フクロウのヤツ。
《史上最強の勇者を送り込みやがりました。》
しかし、この勇者。いい奴っぽいです。全力で丸め込みましょう♪
『貴方の思惑で送り込んだんですから、少し能力は使わせて貰いますよ?』
私は黒フクロウにメッセージを送ります。
『・・・・・』
返答は無しですか。つまりは、この人の場合オッケーと見なしてよしです!
・・・
「さて、可哀想な勇者さん。とりあえずお名前をお聞きしても?」
「え?あぁ、そういえばまだ名乗ってなかったね。『ノエル』と言います」
ノエルですかぁ。どこかで聞いた事がある様な無い様な・・・。
まぁ、それはさて置き、
「貴方を元の世界に帰す事が出来る可能性があるのはこの世界では私だけです」
事実です。
「それも踏まえた上で討伐は諦めて欲しいのですが・・・」
「別にもう、討伐する気なんてありませんよ?元々、ダメ元で投げ槍に訪問しただけですし」
可哀想過ぎます。自分が最強だとは自覚していない様ですね。記憶も混濁している様です。別に前の世界にも執着はない様でしたが・・・並行世界から個体を複製した可能性が高いです。
つまり転移ではなくコピー・・・。それは禁忌なんですけどねぇ。
「貴方は実は既に一度、転生をしていて、しかもその転生先の世界では貴方は健在です」
私は黒フクロウが得ていた知識を少し拝借して彼の過去を知りました。
「ちょっとなにを言っているかわからないです」
どうやら転生先の記憶は失っている様ですね。色々な矛盾を消す為にシステムによって制限を受けた様です。
「なので、貴方は転生先の世界に戻る事は出来ません」
しちゃうとノエルさんが二人いる世界になってしまいます。
つまり彼は複製されたドッペルゲンガーの様な存在であり、彼はもうこの世界で新たに個として成り立ってしまっておりました。
「一度目の転生前の世界。つまり貴方が最初に生まれた世界には、戻してあげられるのですが・・・」
「あの世界には未練はないかなぁ・・・。気がかりなのは姉さんだけだけど・・・」
『私は普通にいるわよ?』
そっちも当時の状態で複製されているんですよねぇ・・・。
彼は頭の中に、もう一つの人格、と言うか超常の存在を内包していました。
「更に言うとこの世界に置いて、ノエルさんは超チート級のマナステータスを持っているのでぶっちゃけ、生きていくのにはなんの苦労もありません」
人参はぶら下げる必要があるので、多少はバラして置きましょう。実は彼の能力はそれどころではないんですけどね・・・。
『なんか胡散臭いリスね』
彼の頭の中の存在、彼女の名前は『セフィ』。こっちも記憶は失っていますし転生先の世界『アイテール』には存在しているドッペルさんです。
「貴方も大概ですよ?」
と私は適当に皮肉を言って置きます。現状は嘘は言ってませんよ?意図的に隠している事は山ほどありますけど。
『腹の立つリスね』
「仲良くしたいと思っているんですけど、結構口が悪いですねぇ。貴方のお姉さん」
「確かに姉さんは少し口が悪い事はあるね」
とノエルは笑っていました。
さて、黒フクロウはなんで私にコヤツを差し向けたのか・・・。
まぁ『どうせ面白そう』とかの理由なんでしょうけどね!
ここで私は一つの筋書きを考えます。
このノエルさんにニューグラストでチートな建国ムーブをさせてみては?性格も能力もとてもチート主人公向きです。好感が持てます。三百人のハイエルフと悠々自適なスローライフを送りながらも楽しく開拓して貰えばいいのです!実は彼の複製スキルのレベルは人類の未知の領域であるカンストLV30!!最強魔王クラスでもせいぜいLV10ちょっとくらいです。もうぶっちぎりなのです。なにが出来るかなんて想像も出来ません。多分ですけど、自分を複製しちゃうくらいの事はやってのけそうです。
あとマナの数値は生命の根源。おそらくノエルさんを殺すのは魔王を殺すより、難しいと言うレベルで最強です。ほっといてもチート主人公よろしくでニューグラストをいい感じにしてくれるだろうと言う魂胆なのです!!
「ノエルさん、よかったらニューグラストに住みませんか?好きに使ってくれていいですよ♪」
頑張れ主人公!私には荷が重いです♪
「え、さっき大変な事になってるって言ってませんでしたっけ?」
ちぃ。聞こえてましたか。
『あんた、エルくんを便利に使ったら許さないからね!』
こっちは察しがいいですねぇ。ちくせう。
「メカーニとかアラウとかイフリーの事はみんなでなんとかしましょう♪そして、上手くいけばそこに住めばいいのでは?」
そう、彼は森の切り離しにとても都合が良い。別に彼にとっても悪い話ではないはず!Win-Winなのです!!彼はこの世界で普通の人として生きていくのはしんどいかもですし。なぜならここは命が軽い世界。価値観も少し、彼のいた世界とは違います。彼主体で新しい社会を構築する方が都合が良いのでは?と思うのですよ。
それに彼の力は、きっと沢山の人を救う。その基盤として、あの森はあまりにも都合が良い。
しかしノエルさんはともかくお姉さんのセフィを納得させるのは難しそうですね・・・。仕方ないので少し情報を明かす必要がありそうです。
「無尽蔵に物資を生み出せるノエルさんの能力はすぐに目をつけられます。しかし、森の中であれば森の民は森から出ませんし、広い土地を好き放題に使って楽しく過ごして頂くにはあそこ程、都合の良い場所はありませんよ?」
空いた土地は基本的にギルドが管理しているか魔王が支配しています。
『どうせ魔王と戦わないと行けないなら他の魔王からぶん取るのと変わらないじゃない』
ちぃ。察しの良い人は苦手ですよぉ!
「他の土地ならギルドと上手くやる上で色々と面倒ですが、ここなら既にこの有様ですしむしろ英雄ですよ?」
上手くいけばギルドにも放置して貰えます。
『・・・』
もうひと押しでは?
「相手は最強クラスの魔王ですが、逆にいえばそれを退けられればこの世界でこの土地を攻めようと言う奴はいません。他だと最強クラスの魔王が攻めてくる可能性は残りますし、どの道通る道ならば、私と三百人のハイエルフ、そしてメルフィも手伝ってくれますし、メルフィを通してギルドの助力も受けやすいです。あとついでにあのポンコツ勇者も手伝わせましょう。アイツは強い相手と戦いたいだけですし、最強クラスの魔王と戦えるって言ったら喜んで挑みますよ」
使えるものはなんでも使います。ついでに問題事も一つ解決です♪
『・・・勝算はあるんでしょうね?』
よし、丸め込み成功です♪




