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魔王最弱なリスは平穏に暮らしたい  作者: フィガレット
第一章 瓦解する日常
10/12

出来ない事は出来ない事だから出来ない

前回の〜・・・あらすじ!!


 ギルドに助けを求めようと思ったけど私、魔王でした!

 でも魔王は辞めないんだからねっ!


・・・


「もう、魔王なんてやめればいいじゃないですかぁ〜」


 サポちゃんが呆れていました。

 嫌なものは嫌なのです。

 私は全力で自給自足のスローライフなアウトローにこだわります。


 しかし、どうしたものか・・・。


『なんだか大変そうですね・・・。忙しい時に来ちゃってごめんね」


 可哀想な勇者が申し訳なさそうに呟きました。そういえば魔導インターホンをつなぎっぱなしでした。


「誰ですぅ?」


 サポちゃんが首を傾げていたので説明してあげました。


「へぇ・・・。どれどれぇ・・・ん?ピピピピィ・・・!!ボンっ!ぎゃーーーース!!?」


 突如としてサポちゃんが爆発音を口で叫んだかと思うと断末魔と共に悲鳴を上げて頭から煙を上げながら白目をむいてフリーズしました。


「なにやってるんですか?この忙しい時に・・・」


 まぁ、サポちゃんだしほっとけばそのうち治るでしょう。

 それよりも、今はなんとかして魔王達の侵攻からニューグラストを守る方法を考えないとですね。


 そもそも、今まで不可侵だったのだからその状態を取り戻したいです。

 そこで思い出したのが・・・『森の民』です!

 ニューが森の民300人を保護していると言っていたはずです。


「なんで森の民がいた時は不可侵だったのです?」


 領民がいる事がバレるのはそれはそれで困るのですが・・・税金増えちゃうし。


 ん?


 でも、よく考えたら私は魔王なので別にそこの税金を払う必要はないのでは?

 ニューは彼らの自立は可能と言っていたので、最終的にニューグラストを切り離した時は恐らく納税も可能だと思われます。もう、いっそバラしちゃうにもありでは?


「泥欲の腐敗が広がるまでは、あの土地は強力な350人程のハイエルフ達によって守られていました。その力は森の中に置いては魔王を凌駕していた為、魔王達は攻め込む事が出来なかったのです」


 へぇ。森の民ってハイエルフだったんですねぇ・・・へ?ハイエルフ!!?


『ちょっ!?領民の『森の民』ってハイエルフなんですか!!?』


 私はニューに内緒話ウィスパーを送信しました。


『へ?言ってませんでしたっけ?』


 聞いてませんよ!!

 ハイエルフはとても強く集団戦闘が得意で森では無類の強さを誇ります。

 それが300人!?当然ながら一対一でも私は秒殺されます。

 指先一つでダウンです!


 あれ?


『彼ら自身でなんとか出来るのでは?』


 なんとかして欲しいです。


『以前の森程は全力を出せない様です。エルフの精霊魔法は森の加護に大きく左右されますし・・・』


 それでも300人のハイエルフがいれば勝てそうな気がするのですが・・・


「機械の魔王メカーニと豊穣の魔王さんは強いのです?」


 私は素朴な疑問をメルフィに投げかけます。


「メカーニは魔王ランキングのトップテンに入っていますね。トップテンの魔王は相性次第のところもありますのでほぼ同列。つまり最強の部類です」


 オワタ。


「豊穣の魔王『アラウ』はメカーニには及びませんが、アラウは煉獄の魔王『イフリー』と同盟関係にあり、結果的に戦力は均衡していました」


 あ、お隣さんのお名前がようやく判明しました。要約すると絶望ですね♪

 そんなのに板挟みになってるのです?詰んでるじゃないですかぁ・・・。


「森の民とニューはとりあえず、ギルドの庇護下に入ればいいかぁ」


 ニューグラストは破棄して、もう勝手にやり合って貰いましょうかねぇ。

 などと私は尻尾を丸めて逃げる準備を始めようかと考えておりました。リスだけにね!


 別に森自体に興味はなさそうですし、全部焼き払ったりはしないでしょう。

 ならニューも大丈夫だし、森の管理も丸投げ出来るから、もうそれでいいや。

 森のリンクは言わなきゃバレないだろうし、黙っておけばいいのでは?


『酷いですぅ!見捨てるんですか!?』


 ニューが騒いでおります。でも仕方ないじゃないですか。無理ですよ?


『森の民はあの土地を離れようとはしません。ハイエルフとはそう言う種族です。死ぬまで戦いますよ?』


 なにそれ。命を大事にしなさいよ。私は生きる事に貪欲なリスです。だから、その考え方が理解できません。使命のため、習慣のため、信念のため、命を捨てるその行為を・・・私は理解できないのです。生きていてこそでしょう?死んでしまっては世界は終わる。あらゆる屁理屈と自分勝手と納得を持ってして最大限の延命を選択する。


 時に他人の犠牲をも厭わない。それを人は不誠実だと言うのでしょう。

 自分勝手で悪だと言う事でしょう。だから私は魔王です。魔王でいいのです。

 そりゃ、犠牲はないに越した事はありませんし、救えるならば救いたいですけど・・・。


 私は自分の中に内包する矛盾の中でも、飲み込んだ根源を見る。


「え?今、森の民って言いました!?」


 ん?メルフィがなにやら驚いていました。なんで?

 あ、そっか。そういえば領民がいる事は隠していたのでした。


「言うのを忘れていましたが森の民300人は今、あの森で暮らしているらしいですよ?


 税金の問題もない事を思い出しましたし、もうメルフィにはバラしていいでしょう。

 肥沃な土地についてもどうしてもバレるからバラしました。すると・・・


「生きていたんですね・・・っ!」


 メルフィは涙を流しておりました。なんでぇ??


「ハイエルフは泥欲の腐敗で滅んだと思われていたのです・・・私を残して全員・・・」


 へ?えぇ・・・。


 メルフィは実は森の民だった。

 そして、一人ギルド庇護下に出された。その血を絶やさない為に。

 泥欲の腐敗に飲まれた大地。

 ハイエルフは死滅し、怠惰の森が泥欲の腐敗を食い止めた。

 これが全ての人の認識だったのです。

 なぜ森の民は、メルフィにも内緒にして、その絶滅を偽装したのか・・・?


 私はニューに問いかけます。


『先ほども言いましたが、森の民の力は以前ほどではないのです。存在がバレれば蹂躙される未来がありました』


 そして、怠惰の森となってしまった今でもあの土地に縛られているから離れる事が出来ない。結果、私の庇護下に入り助力を願った。


・・・


 完全に頼る相手を間違えてますよぉ!!?


 私は魔王最弱です!


 戦力外です!無力です!!


『出来ない事は、出来ない事だから出来ないのです。出来るならそれは出来る事です。出来る奴がやって下さいよ』


 そう。私は無力です。


・・・


 その時、サポちゃんが目を覚ましました。


「誰ですかぁ!?あの人はぁ!!」


 その視線の先にいるのは・・・可哀想勇者。


「その人の戦闘力は測定不能ぅ!!歴代勇者の中でもぶっちぎりのナンバーワンですよぉ!!」


 

 うそん・・・?

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