Rain~つつゐづつ~
短歌50首です。
雨音が怖いと君が袖を引く 小心者は六月生まれ
君はよく雨と一緒に熱を出し ママのお迎え手を振る車窓
お揃いのレインブーツで水たまり走り回って 落ちるゲンコツ
何台もおもちゃの車並べては長いうんちく 舟を漕ぐキミ
水玉のスカートのすそ鳥のフン つられてぼくもつい泣きじゃくり
にわか雨入学式の晴れ姿 相合傘を嫌がる二人
放課後の優先順位ランク外 カエルも鳴かない帰り道
遠足で初めて知った流星群 濡れなくていいプラネタリウム
夏登山小雨決行発表後 雨天中止に君と目が合う
新しいユニフォーム着て予選会 君の打順にまた天気雨
おんぶして運んでくれてありがとう 「誰にも言うな」なぜキレられた
柔らかいまだ柔らかいけしからん 汗も匂いも背中に残る
お兄ちゃんカレーは鼻で食べちゃダメ ママのつぶやく「ししゅんき」って何?
スコールで透けるTシャツ体育祭 拡声器よりうるさい鼓動
黒板を背伸びしないで掃除する 君の背中を見つめるあの子
厳粛な黒い人垣 紫陽花に 涙雨降る制服の君
心まで凍てつくような長雨に てるてる坊主五つじゃ足りぬ
台風と共に遠くにお引っ越し 渡しそびれた薄い便箋
君が去りひとつ気づいた事がある 私だけでは雲は呼べない
好きですと言われたらほらなんとなく 好きになるのは気のせいかしら
値踏みから始まる恋も運命と 言い張っていた恋の白帯
ドアの開く音で何度も振り返り ゆるむ髪留め 二十歳の集い
わがままも恋のスパイス鵜吞みした 黒歴史また酒のおつまみ
通勤の人波に酔う月曜日 まだバスに乗る新しい部署
片頭痛隣りのビルのコンビニも レジの渋滞したい早退
社員証どこのドジっ子拾い上げ 裏返したら止まる心音
お互いに初めて会ったかのように硬い挨拶 やはり夕立ち
注文後アイドリングに出す話題 考え過ぎて運ばれた珈琲
近況と噂話で雨宿り 連絡先をそろそろ聞いて
あのキミが爪の綺麗なお姉さん ビルの隙間に薄っすらと虹
連絡を待ちくたびれて待ち伏せす 折り畳み傘標準装備
いぶされた暖簾をくぐり赤提灯 どこでもいいを真に受けたけど
恋人と思われたかな大将に 鳥のつくねがやけに肉厚
「じゃあ、またね」手を振るキミに 「ああ、またね」次があるなら店も決めねば
ほろ酔いで同じ話を繰り返す 友のコップに氷だけ足す
晴天に君を見かけた交差点 日傘を差した彼女登場
色褪せた車のおもちゃ車輪だけ無いのに気づく 今更気づく
明け方のネガティブな夢迎え梅雨 どんよりとした寝返りを打つ
1ミリも面影のない妹に 力も抜けて沈む助手席
ワイパーの音だけ響く鳥かごで 貪るように君がついばむ
帰り道まだ乾かないアスファルト 常夜灯にも微笑みかける
引っ越しの手伝いにきた恋人の 手には見知らぬピアスの化石
キミの背が一天にわかに搔き曇り 笑顔の頭上まぼろしのツノ
先代の過去の遺物と知りながら ここぞとばかりにまくし立てる
キミが去り静まり返る部屋の隅 外れた車輪おもちゃの車
土砂降りのような激しい自己嫌悪 友の家にてタオルを借りる
朝露が波紋をつくる軒下で 言葉足らずの君の抱擁
鞄から指輪がポロリ テイク2 傘をたたむ前からスタート!
ハレの日の雲のカーテン吹き飛ばす 親友の名は超・晴れ女
雨音を怖がらぬ子ら手をつなぎ パパの帰りを待つ停留所
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