08 当たり
ご家族から呼び出しを受けたサイリさんは大急ぎでご帰宅、
魔素干ししていた魔導具を片付け終わった頃、
我が家の乙女たちがお買い物から戻ってきました。
「ただいま、フォリスさん」
「ただいまです、ご主人様」
はい、おかえりなさい。
なんだかうれしそうですが、何か良いことありました?
「今日の戦果だ」
シュレディーケさんが得意げに見せてくれた虹色のチケットは、
『王都商店街 大福引会 特賞引換券』
おっと、凄いですね、特賞ですか。
「奥様が福引箱から特賞の虹色の玉を引き当てたときには、びっくりして買い物かごを落っことしそうになりましたよっ」
「特賞を引き当てたのは嬉しかったが、セレモニーは勘弁して欲しかった……」
おめでとうございます、
ところで特賞って、商品は何ですか?
手渡されたのは、分厚いパンフレット。
「その商品カタログから、好きなモノを3つ選べるそうだ」
それは楽しそうですね。
「フォリスさんも、何か欲しいモノは無いか、じっくり確認してみて欲しい」
ほう、どれどれ……
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夜の家族会議の時間は、
商品カタログを前に大盛り上がり。
「フォリスさんには、この弓はどうだ」
「『ジグルッヘの魔導弓』、エルシニア王家御用達の名工"ジグルッヘ"による見事な細工が施された魔導弓で、各種補正付与による命中精度は狩りを愛する王族たちのお墨付き、だそうだぞ」
あー、ジグルッヘですか。
残念ながら狩人向きの弓ではないのです。
エルシニアの王族貴族が競い合うように発注したという、豪華な意匠が施されたほぼ必中の魔導弓、なのですが。
「なるほど、フォリスさんが愛用している弓とは真逆だな」
もちろんジグルッヘ作の魔導弓が素晴らしい逸品なのは承知しております。
モノによっては国宝クラスでしょうし。
ただ、森の狩人としてはいろいろと過剰かな、と。
おっと、シュレディーケさんには、こういうのはどうですか。
『幻のブランド『ハルネル』のオーダーメイドランジェリー優待権』
ツァイシャ女王様も御愛用の逸品で、天使に抱擁されているかのような着け心地、ですって。
「うむ、『ハルネル』か」
「ネルコさんの手作りランジェリー、だな」
「確かルルナさんも愛用していたはず」
へえ、愛用……(ゴクリ)
ゴツリ
いてぇっ
「服の上から凝視してどうする」
「それで、愛用しているルルナさんのご感想は」
「はい、素晴らしいの一言に尽きますっ」
「奥様もお気に召すこと請けあいですっ」
「ただ、採寸には、相応の覚悟が必要ですねっ」
覚悟?
「えーと、"完璧なフィット感は完璧な採寸から"というのがネルコさんのポリシーだそうで、それはもう念入りな採寸を……」
念入りな……(ゴクリ)
ゴッツリ
痛ってえ!
てな感じで、フォリス家、今日も和気あいあい。
夜の語らいの時間は、いつも以上に賑やかに更けていくのです。




