05 イタダキ
「おやすみの日も頑張ってるんですね、フォリスさん」
こんにちは、サイリさん。
魔素干しって、結構好きなんですよ、僕。
「すごく良く分かります」
「なんだか魔導具たちがひなたぼっこのお昼寝してるって感じですよね」
「待てよ、魔素干し用のハンモックとか、あったら良いかも……」
ハンモッカーなサイリさんらしいアイデアですね。
天気が崩れてきたら、自動的に屋内に取り込んでくれたりするとうれしいかも。
「なるほどっ、それイタダキです」
「試作品が出来ましたら、試用試験の方、ご協力願いますね」
了解です。
あまり根を詰めず、楽しんで開発してくださいね。
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お庭に諸々用意して、のんびりお茶会。
サイリさんは、まさに、良き茶飲み友達なのです。
今日はうちの女性陣はお出かけしておりますので、
いつも以上に、のんびりしてくださいね。
「お言葉に甘えて」
同い歳の男同士、茶飲み話しの方も、いろいろと盛り上がっちゃうのです。
特に興味を引いたのは、美男美女による素敵なパーティーがアレしちゃったというお話し。
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以前から計画されていた、サイリさん発案のイベント。
白狼隊の騎士さまたちと、『七人の戦乙女』さんたちの、懇親会的なお食事会。
ストーカーちっくなファンに追い回されて、日々お疲れさまな白狼隊の皆さんと、
某女王様の可愛らしいわがままに振り回されて、日々お疲れさまな戦乙女さんたちを、
素敵なお食事会で癒してあげようという、優しいサイリさんならではの好企画。
発案者にしてイベント責任者のサイリさん、
企画立ち上げから綿密なスケジューリング、細やかなセッティングまで大奮闘、
開催されたお食事会は、豪華さよりもくつろぎ感溢れる、とても素敵なパーティーに。
両騎士団とも、職務熱心が鎧を着ているような真面目一辺倒な方々ばかり。
美男美女揃いの、華やかにして洒脱、おしゃれな雰囲気たっぷりの、
まさに理想のロマンチックパーティー、だったそうです。
途中までは。
デザートタイムに訪れたソレが、全てをブチ壊したそうです。
周到に用意されていた諸々に突然割り込んできたソレは、まさにサプライズイベント。
それまでの場の雰囲気には明らかにそぐわない、
いかにも手作り感に溢れたクッキーが全員の前に並んだ途端、
『七人の戦乙女』全員、顔面蒼白。
そしてなぜか現れた、笑顔のツァイシャ女王様、
白狼隊の皆さんに、お皿に丁寧に盛り付けられた8枚のクッキーの食べ比べをお勧めになられたのです。
この8種類のクッキー、一番美味しいのはどれかしら、と。
明らかにアレな空気をものともせず、
真面目一途な白狼隊の皆さん、
がっつりランキングしちゃったそうですよ。
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ランキング確定後、サプライズの種明かしをしたツァイシャ女王様、逃げるように退出。
戦乙女さんたち、自作のクッキーへのあまりの仕打ちに、無言の抗議。
事情を理解した白狼隊の騎士さまたち、
何も知らされていなかったとはいえ、その行いは無かったことにはならず、
つまりは、針のむしろ。
騒ぎの大元、ツァイシャ女王様が場を収めずに去ったこと、
それが、争いの火種となりました。
ちなみに、誠に遺憾ながら、クッキーランキング最下位は、
白狼隊全員一致でツァイシャ女王様のクッキーだったとか……




