11 妙案
「うーん……」
あらら、本当に唸ってますね、サイリさん。
もしもし、職務中の所長さんがそんなんで良いのですか?
「おっと、フォリスさん、こんにちは」
「どうしたんです、こんなところで」
いえいえ、所長さんがこんなところなんて言っちゃダメでしょ。
ってか、どうしたんです?
事務所のお仕事そっちのけで。
「あー、例の"魔素干しハンモック"の件なんですけど、どうにも上手くいかなくて」
はて? そんなに難しい案件でしたっけ。
ハンモックに魔素干ししたい魔導具を並べておいて、
天気が崩れてきたら屋内に取り込む、でしたよね。
「そうなんですけど、問題はお天気判定をどうするか、なのです」
?
「予定では、簡易型の魔導人工知性体を搭載、だったのですが」
「アリシエラさんの方からNGが出ちゃいまして」
ほう。
「簡易型とはいえ知性体ですので、あまりほいほい生み出すのは問題であろう、と」
なるほど。
「つまりは、僕達にとってエリスさんのような存在となるわけですから、安易に魔導ハンモックを知性化するのはいかがなものか、と」
確かに、いかにサイリさんといえど、お利口な魔導ハンモックを家族に迎え入れるのは……
「で、魔素干しハンモック計画は頓挫して、僕も煮詰まっちゃってるわけなのです」
なんだか思ってたよりも大ごとになっちゃってますね。
まあ、魔導人工知性体っていう生命にまつわる問題ですので、安易な答えに飛び付いちゃいけないですし。
……おっと、安易じゃない答えがあるじゃないですか。
「何か妙案でも?」
サイリさんのお宅限定のアイデアなのですが。
魔導ハンモックは、基本的にはお庭で魔素干しするんですよね。
「そうですね、お庭の外に出ちゃうことはないはずです」
サイリさんのお庭には、ちっちゃな常駐管理人さんがおりますよね。
「はい、チュースさんは最近出張が多いですが、エリスさんはほぼ常駐管理人さんですね」
つまり、天候うんぬんに対応してくれるオペレーターにもなりうる、と。
「なるほど、魔導ハンモックに操作用コクピットを搭載すれば、エリスさんやチュースさんにお任せも可能」
いかがでしょ。
「うはっ、さすがはフォリスさんっ」
「まさに"精霊乙女ハンター"にして"精霊王のマブダチ"!」
「"立っているものは人外でも使え"を日々実践しているのですねっ」
ちょっと、サイリさんっ。
風評被害、ダメ。ゼッタイ。
特に精霊さん関係の噂は、拡散禁止でお願いしますっ。
「了解ですともっ、それと、新型魔導ハンモックの特許によるアレコレに関しては、僕とフォリスさんで五分五分ってことでよろしいですねっ」
「それでは、アリシエラさんのところへ行ってきまーすっ」
あー、行っちゃったよ。
すみません、皆さん。
サイリさんのハンモック魂に火がついちゃったみたいで。
って、その山盛りの……