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濃い恋来い

作者: もさ&ラッキっき!(挿絵)

 私は古河唯月(こが いつき)

 運のない高校2年生。 何故運がないのかと言うと、私の能力について説明しなきゃいけない。

 私の能力は【恋の連続選択(ラブセレクト)】と言うのだけど、人前で言うのはとっても恥ずかしい。 何故恥ずかしいのか、それは名前だけではない、こんな能力があるにも関わらず、私には恋人がいない、いた事もないのだ。 名前負けにも程がある。

 ガチャでいい結果が出ても不運によって悉くが潰えていく。


「ああ、恋人が欲しいな〜」


 自室の窓から暮れる夕日を眺めて、願いを溢す。


(よし、もしかしたら今日こそ上手くいくかもしれないし、ガチャしてみよう)


「【恋の連続選択(ラブセレクト)】発動!」


 一般的なスーパーや薬局の入口辺りに置いてあるようなガチャが横に3つ並んだ状態で出現する。

 表紙絵には左から順に「誰と(Who)」「いつ(When)」「どこで(Where)」と書かれている。 これを順番に引いていくと、誰といつどんな状況で出会うかが確定する。 今まで何度も使ってみたが、出会わなかったことはない、必ずこのガチャの結果になる。 しかし、そこから恋に繋げるのは私の力のみ。


 最初に回したのは中学1年生の時、「松田 隆(まつだ たかし)、13歳」「4月15日」「学校の図書館で」という結果になり、放課後に図書室で本を借りようとしたら、隆さん(らしき人)と指がぶつかったが、「ご、ご、ごめんなさい!」と恥ずかしさが勝ってしまい逃げ出してしまった。


 6回目の時は、「勝又 雄大(かつまた ゆうだい)、13歳」「6月26日」「学校の下駄箱で」という結果になった。 放課後下校するときに雨が降っていたので傘をさして帰ろうとしていた所、雨の中を走って帰ろうとする雄大くん(?)を見つけ、勇気をもって話しかけて自宅が近いので、途中まで一緒に帰ったのだが、車が(わだち)を通り、雨水が跳ねた。 彼は避けられたが私は避けられずずぶ濡れになり、下着が透けてしまい、恥ずかしさのあまり傘を彼に渡して走って家に帰ってしまったのだ。

 そんな感じで自分の責任もあるが、運が悪いことも確かだと感じている。


「今回こそは、素敵な人と、素敵な出会いができますように!」


 ご都合主義かもしれないが、神様にお祈りをして、引いていく。


 「嶌崎 邦光(しまざき くにみつ)、24歳」

 「4月16日」

 「自宅で」


「ええっと、おお今回はすっごい年上だな〜。

 今日が4月10日だから、6日後か。

 ええ、自宅で! 家に入ってくるのか、緊張するな」


 自宅で出会う邦光さん、一体どんな人物なのかドキドキしてソワソワして唯一の取り柄の勉強が手に付かない6日間を過ごした。



 *



 6日後、4月16日、午後6時00分。


「う〜ん、まだ来ないみたい。 どんな人なんだろう? いつ来るのかな?」


 学校も終わり早々帰宅して私服(自分で思う可愛い服)を選び自室に机で時計とにらめっこ中。 まだ見ぬ恋との出会いにドキドキと不安を隠せずにいると


――ピンポーン


 インターホンが鳴った。

 両親は共働きなので、自宅には私1人。 玄関に行き名前を尋ねると「宅急便です!」と言っていたので、印鑑を手に取り玄関の扉を開ける。


「古河唯月さんのお宅でお間違い無いでしょうか?」

「は、は、はい、間違いありません」

「はい、ではこちらに受け取りサインをお願いします」


 何かネットで買い物とかしてたっけ? と思いながら印鑑でサインをする。


「あ、ありがとうございました」


 私が荷物を受け取り、一度玄関に置いて鍵を閉めようと振り返ると、配達員が目の前にいた。


――ガチャ


 家の鍵を掛ける音がした。

 私の頭は「???」とクエスチョンマークで一杯になっていた。


「………手を上げろ」


 配達員が何処からか取り出した銃を私に付き出す。


「金目の物を出せ、自分の家だある程度しっているだろ」

「は、は、は、は」


 どうやら彼は強盗のようだった。 私はあまりの出来事に吃音全開でフリーズしてしまった。


(ど、ど、どうしてこうなるの。 私は、ただ恋がしたいだけなのに)


 動けなくなり、目を瞑って泣いてしまった。

 強盗は泣いている私を見て苛々して、天井に向かって弾丸を放った。


「何泣いてんだよ、うるせぇんだよ! 早く金目のモンもってこいや、このクソガキが!」

「わ、わわ、わかりました!」


 私は必死で自宅の中を探し回った。

 両親の部屋に私の部屋、何が価値あるものかとかはわからないけど、何となく価値がありそうな物をかき集めた。

 そうして10分が経った頃。


「もしもし、古河さん? いらっしゃいますか? 何やら大きな物音があったとのことで通報がありました。 お話聞かせて下さい」


 警察が来たのだ。

 丁度運良く、私が玄関に近い部屋にいて、強盗は別の部屋にいる。

 私は玄関に行き扉を開けようと、手をかける。


「おっと、残念。 ちょっとでも声を上げれば頭が吹っ飛ぶぞ」

「……………」

「いい子だ。

 あ〜いやすみませんね、娘が能力を暴発させてしまったみたいでして、ご近所さんにはご迷惑をお掛けしてしまいました、今は部屋の中を片付けているので出られないんです、申し訳ありません」


 強盗犯が優しそうな声を出して警察官を追い払おうとする。


「あ、そうなんですね、わかりました。 以後気をつけるようにお伝え下さい」


 うまく事が運んでしまったようだった。

 私は「もう駄目だ、殺される」と内心で底知れない絶望を味わっていると、玄関の扉から人が透けて通って来た。


「なんてな、お巡さん舐めるなよ! 巷で流行っている成りすまし強盗だな! 逮捕する!」


 なんと、お巡りさんが玄関の扉を何らかの能力で透き通って来た。


「なに!? クソが! ぐっ!!」


 強盗が反対方向に走って逃げようとするも、お巡りさんに押さえつけられた。


「怖かったね、もう大丈夫だからね。 よく頑張ったね」

「離れろ! 俺は何もしてねーよ!」


 お巡りさんの言葉で緊張の糸が途切れ、ぺたんと座り込んしまい、何処からか溢れて出てくる涙がを止められずにいた。


「こ、怖かった、怖かったです……!!」

「そうだね、もう、大丈夫だから」


 強盗犯に手錠を掛けて、別の警察官に身柄を受け渡し、私の頭をそっと撫でて優しい言葉を掛けてくれる。


「困ったことがあったら、いつでも派出所においで、私達が相談に乗ってあげるから、だからもう泣かないで、ね?」

「は、はい、ありがどうござびます」


 泣きながら答えたので変な回答になってしまったが、笑わずに「うん、うん」と聞いてくれた。


「私、古河唯月といいます」

「私は嵐山 弦(あらしやま けん)です。 何かあったら110番まで電話して」


 にこっと笑い敬礼するお巡りさん。


(この人が嶌崎 邦光(しまざき くにみつ)じゃないの? てっきりお巡りさんかと思ってた)


――緊急、緊急、嶌崎 邦光(しまざき くにみつ)が車内で暴れだし、市内に逃走中、繰り返す。 嶌崎 邦光(しまざき くにみつ)が車内で暴れだし、市内に逃走中。



「なに?! 逃走だと! ごめんね、お嬢ちゃん、君を脅した犯人が今逃走しているみたいなんだ、私も確保の応援に行ってくるよ。 少ししたら女性の警察官が1人向かってくるからその人に、今日あったことを話すんだよ! 戸締まりはしっかりね!」


 お巡りさんは走って街路へ消えていった。

 さっきちらっと、お巡りさんの無線が聞こえたけど、嶌崎 邦光(しまざき くにみつ)って言ってたよね? つまり、今回のガチャの結果はあの犯人だったってこと?


「あ、ありえないでしょ〜。 今回の相手はどうやって恋に発展させればよかったのよ〜!!」


 いくらなんでも無理ゲー過ぎる。

 意識の問題とかそんなんじゃくて、強盗犯を運命の人だとは思いたくない。今回のガチャの相手が強盗犯という事実に、涙なんて一瞬で枯れてしまった。

 あの状況からどうやって進展しろというのか、神様がいるのなら、今回は難易度高すぎでしょと苦言の一つでも言いたくなる。


「私は普通の恋がしたいだけなのに………。

 こんな濃い恋はノーサンキューです」


 肩から力が抜けてその場に座り込む。

 女性の警察官がやってきて、私に駆け寄り、肩を抱いて優しく介補してくれた。


(違うんです、怖かったのもあるけど、怖くて涙が出ているわけじゃないんです)


 優しい警察官に申し訳ない気持ちになった。

 涙で夕日がいつも以上に輝いていた。



 *



 後日学校の帰り道、人目のつかないところで、また能力を使い、私はガチャを回す。


「今度こそ!」


 ガチャガチャのカプセルを握りしめ、不安を胸に中を確認していく。


「あ〜、恋がしたいな〜」



挿絵(By みてみん)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


今回はラッキっき!さんが可愛い挿絵を描いて下さりました!

ありがとうございました!


短編初めて、協力作品も初めてなのでいろいろ大変でしたが個人的には大満足です!

読んでいただいた方にも、楽しんでもらえたら嬉しいです!

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