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水面の月  作者: Blood orange
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家の中が滅茶苦茶になって来た。

そう言えば、昔何かの本で家族に笑顔が耐えるようになったら、お終いって書いてあったっけ。

今の私の家はそんな状態。


折角のキャンパスライフだもん。やっぱり楽しまなきゃ損よね。

美桜は新入生歓迎のビラを受け取ると、友達の方へと走って行く。


「美桜、どうしたの今日も遅れて来てたよね。オリエンテーションは遅れちゃダメっしょ」

「おはようー。ともちゃん。そうだよね、分かってるんだけどさ、これがなかなか起きれないんだよね〜。今までいつも真桜が起こしてくれてたからさ〜」

「そう言えば、真桜はどうしたの? ここの大学に進むんじゃなかったの? 真桜は本当は外部進学するはずだったんでしょ? やっぱ学年主席は凄いわ〜」

「え?真桜なら就職するって進学を蹴っちゃったよ」

「何で? それ嘘でしょ?」

「ほんと。それで家出て行ったの」

「え?」


マジかよ〜とうとう温厚な真桜もキレちゃったんだな。そう呟いたともちゃんの言葉につい腹を立てた。

全部私たちが悪いみたいに聞こえてくる。


「何で真桜がキレるの?キレたいのは私達よ。家の中最悪!もうパパもママも喧嘩ばっかりになってさ。これもそれも、み〜んな真桜が我儘言い出して家を出て行ったからよ」


ともちゃんはさっきから呆れたようにハァ〜とため息をついてる。

ため息つきたいのは私なの!


「美桜、あんたさ。もう自立しなよ。大学生なんだよ。 そんで一人暮らしして見たら絶対に何が悪いのかが見えてくるもんだよ」

「家から出るの?」

「そう。あんたも自分のことは自分でやんなよ」


ともちゃんの言葉が重く私の胸に突き刺さった。

家に帰ってからも、ずっと心の奥にともちゃんの言葉が引っかかる。


夕飯の時間だって言うのに、ママは何も作ってくれなくなった。パパも仕事だって行って、あんまり家に帰って来なくなった。それじゃあご飯は誰が作るの?そう聞いたら、ママはパパじゃない男の人に縋り付いて眉を顰めてる。


「そんなにご飯ご飯と言うんなら、美桜が作ってみればいいんじゃない?今までだって真桜がずっとやってたんだから、同じ双子なんだし美桜なら出来るでしょ?」

「ママ?どうしてそんな事言うの?」

「ああ〜序でにバイトもしなさいよ。真桜だってやってたんだし。双子の美桜だってできるわよ。そうよ、そうしなさい。そうね、手っ取り早くお金にするんだったら、彼に買ってもらえば良いんじゃない?」

「え?」


信じられなかった。呆然とする私の手を引くママは、知らない人みたい。


男の人の美桜の全身を舐めるようにじっとりとした眼差しが厭らしくて鳥肌が立った。


「そうだね〜。じゃあ脱いでそこでポーズ取ってもらおうか」

「うふふ。真桜はダメだったけど。美桜ならやってくれるわよね?」

「ま、ママ? 何言ってるの?」


あれよあれよと言う間にママは、私を今日連れて来た見知らぬ男の人の前で服を脱ぎなさいと言い出した。

体に触れる前に嫌だと叫んで逃げ出した。


もう、家に居たくない。ママと男の人が家を出たのを確認してから、家に入ると家の中は竜巻が来たみたいに荒らされていた。とりあえず、美桜はスーツケースに保険証とパスポート、身の回りの物に、大学の教科書を持って家を出た。


もしかして、真桜はずっとこんな思いをしてたの?

行くあてはないけど、ともちゃんに電話した。


『はーい。ともでーす。どうした美桜?』

「ども”ちゃん…ヒック…」

『あー、もういいから、ウチにおいで美桜』


この日はともちゃんの家に泊めてもらった。

ともちゃんは私に何が起こったのか、分かってるみたいで何も言わずに家にあげてくれた

その優しさに子供みたいに声を出して泣きじゃくった。泣きながらともちゃんに、あの後家で何があったのか嗚咽交じりに話した。


「美桜。真桜があの家を出て行ったのはね、真桜が小学生の頃にあんた達のお父さんに連れて来られた人に売られそうになったからだよ」

「え?何で?嘘!」

「あんたはあの頃、病気で入退院を繰り返してたから、被害はなかったみたいだけど。真桜は家で転寝も出来ないと言ってたからね。その頃から仕事を探してたから、ウチの親父様に頼んで仕事を回してもらってたんだよ」


そう言えば、ともちゃんのパパって大学教授で学会とかのレポートの締め切りにいつも追われてるって…

(ともちゃんは「借金取りに追われるよりは数倍マシ」とか言って笑ってたけど)


「もしかして…」


ともちゃんのパパが真桜を雇ってくれてたの?


「ともちゃん。私ね、何にも知らないの。真桜のこと何にも」


あんなにお姉ちゃんぶって文句言いたいだけ言ってた癖に。私は何も知らなかった。


「あのね、美桜。真桜から言うなって言われてたんだけど。もし美桜に何かあったら、手を差し伸べてほしいって言われるの。美桜は何も出来ないから、独り立ち出来るように助けてやってくれって。真桜ってさ、自分があの家から出て行ったら’、次に被害に遭うのは美桜だからって」


真桜…ごめんね…

知らなかったの…。


「美桜。知らなかった、わかりませんでしたで済むのは、幼稚園までだよ。まーこれはウチの親父様の持論ね。無知だったら、これから知れば良いじゃん」


この日、ともちゃんのパパに知恵を貸して貰って、美桜は両親との決別を決意した。

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