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その日、私は湧き上がる鳥肌を抑えられずに震えた。
ゴキブリ、ゴキブリ、ゴキブリ、クモ、クモ、クモ、妹、妹、妹。
また湧き上がる鳥肌を両手で治めるようになぞっても、何も変わらない。
母親は妹の事を私の想像よりもよく知っていた。
「虫…が…好きなのよ」と言った母親の言葉では"妹が虫を好き"なのか"虫が妹を好き"なのかよくわからなかった。両方だろうか。
「えっ、いや、なんで殺さないの?キモすぎない?」、若干怒気をはらんだ私の声を母親は「しっ」となだめた。
「伽耶は、好きなの、だからだめ」、そう言いながら、母親さえも鳥肌を治めるように肌を撫でていた。
母親は「わかってあげて」と言いながら、私の肩を撫でた。自分に言い聞かせているんだろう。
しばらく、私は食欲がなかったし、家に帰りたくなかった。友達にも言えないし、母親や父親にも、何故か何も言えなかった。
妹だけはいつも通りに、無機質で異質な雰囲気のまま、日々を生きていた。